⑮ 帰って来たカグヤ
それは、西暦1991年10月31日の木曜日。
時刻は21時00分の事だった。
この日は、ハロウィン・ナイトという事で、いつもより夜更かし気味に、テレビ塔の亜空間レストランを開けていたサン・ジェルマンであった。
実際に日本で、ハロウィンのイベントが定着するきっかけになったのは、1997年の、ディズニーランドの企画だったのだが、オシャレな伯爵は、流行を少しばかり、先取りしたのである。
日頃、時空調査に勤しむメンバーを、労う意味も込めて、ちょっとした仮装パーティー兼ディナーの会をやっていたのだが、それもそろそろ終盤であった。
参加者は、平日という事もあり、忙しい現役小学校教諭の真田香子を除く、フルメンバー。つまり、真田雪村、由理子、雪子。それに杉浦鷹志、酒井弓子。そしてサン・ジェルマンと村田京子だった。
因みにジャンヌ・ダルクは、他の時空救出メンバーと同様に、自室で安んでいた。
「何だかイヤな予感がするわ。」
それまでずっと上機嫌だった酒井弓子が、急にそんな事を言い出したのだ。
「えっ、何?どうしたの?」
パートナーの真田雪村が尋ねる。
すると、突然、エレベーターの扉が開き、懐かしい人物が顔を出したのだった。
ただ、その服装が、まるで天女のような透明感の有るワンピースだったので、一瞬みんな、ソレが誰だか分からなかったのだ。
その人物は誰あろう、カグヤ・イシュタル、その人だったのだ。ついでに言うと、傍らに、猫王子のミケーネもついて来ていた。どうやら、今日は行儀良く、宇宙船を地下駐車場に停めて来たらしい。
「皆様、お久しぶりです。カグヤ・イシュタルです。先日は大変お世話になりました。」
彼女は、爽やかな声で皆に挨拶すると、直ぐにサン・ジェルマンを見つけ、こう言ったのだ。
「この度は、不詳この私めのために、骨を折って頂き、ありがとうございます。"お約束の真田雪村様"を頂きに参上しました。」
コレを聞いて、直ぐに顔色を変えたのは、雪村本人よりも、弓子だった。
彼女は雪村の前にズイと出ると、こう言ったのだ。
「雪村君を手に入れたければ、まず私を殺しなさい!…でも私だって、そう簡単にはヤラレないわよ?」
するとカグヤは、慌ててこう言ったのだ。
「ああ、誤解しないで…言葉が足りなかったわ。そういう事じゃないのよ…。」
「じゃあ一体、どういう事なのよ。説明して!」
弓子はいつになく、鼻息が荒い。
彼女にとって雪村は、唯一無二のパートナーなのだ。
必死になるのも、無理は無かった。




