⑩ ミケーネの助言
帰りの船内で、カグヤが随分と落ち込んで居るのを見かねて、ミケーネがこんな話をした。
「あの時代の惑星ガイア…つまり地球人の中でも…特に日本人たちは、与えられた寿命を全うして満足する事が、どうやら美徳だったらしいよ。例えば彼等が好きな花はサクラなんだけど、それは美しく咲いて、パッと散るんだ。」
「…そうらしいわね。何だか、私みたいにダラダラ300年も生きたら、美しくないみたい…。」
「ボクの寿命も150年くらいあるよ。因みにコレは、ガイアの猫族の10倍近いんだ。」
「あら、そうなの?」
「ところが、無念にも、寿命を全う出来なかった者の事を思う余り、後追い自殺をする事も、美徳だったらしい…なんだか、矛盾してるよね?」
「そうね。私たちなんか、周りで誰が亡くなろうが、例え1分でも1秒でも、長生きしたいのに…一体どちらがオカシイのかしら?」
「…じゃあ、キミは今、死にたくなったりは、していないんだね?」
「当たり前よ!武蔵様が亡くなろうが、伊織が亡くなろうが、私はもっと、もっと長生きして、絶対幸せになってやるんだから!」
そう言いながら、カグヤの目には、止めどもなく涙が溢れて来る。
「…それなのに、ナニよ、コレは!?もう、自分でも、コントロール出来ないのよ!」
「泣きたい時には、泣けばいいと思うよ。」
ミケーネは、優しい声でそう言った。
「私の手の中には、延命の手段があったのに…武蔵様も、伊織も、ソレを受け取ろうとしなかった。なぜなの!?なんで二人とも、私を置いて逝ってしまったの!?一体私は、どこで間違えたのかしら。どうすれば良かったのよ?」
そんな事を言いながら、暫くの間、カグヤは泣き崩れて居た。
しかし、船が彼女の故郷に到着する頃には、だいぶスッキリした顔をしていたのだった。
「もう、アレコレ悩むのは、辞めたわ。今日からまた私は、新しいカグヤ・イシュタルとして、前向きに生きて行く事にしたの。それが、武蔵様や伊織に対する一番の供養になる気がするしね?」
「うん、ボクもソレがイイと思うよ!」
ミケーネも力強く同意した。
それでもまた、事の顛末を両親に説明する時には、少しばかり涙ぐんでしまうカグヤであった。
些か情緒不安気味に見えるが、肉身が次々に亡くなったら、誰だってそうなるに決まっているのである。
ましてや彼女にとっては、初めてのパートナーと、その息子を立て続けに失ったのだ。
無理も無い事であろう。
残念ながら、彼女の初めての家族の物語は、彼女にとっては、アンハッピーエンドを迎えた。
しかしながら、武蔵と伊織の立場から考えてみれば、当時の日本人の寿命として、それ程悲しい、或いは悔しい、と思うような亡くなり方では無かった。
それに、武蔵も伊織も、当時の男性としては、誰もが羨むような、"功成り名を遂げた人生"だったという事を、最後に付け加えておくとしよう。
物語はまだまだ続きます。
斜め上の展開にごきたください(>ω<)




