第四十六話:最後の四天王
ノアが魔軍参謀レギオンを瞬殺し、魔王城へ近づいた頃、水晶の魔道具で、その様子を見ていた魔王は自分以外にもこのような者がいることに驚愕していた。
魔王は、その本質は純粋に魔力の塊であり、その魔力は神にも匹敵すると言われている存在であった。
魔王は、レギオンの残骸から、ノアの規格外の魔力と、その本質を感知していた。
「フム……」
魔王は、静かに、そして悦びを込めて呟いた。
「あの魔力、是非に私の伴侶になってもらわねば」
魔王は、決してどこかの残念な皇子と同類ではない。彼の関心は、ノアの容姿ではなく、ノアが持つ宇宙すら揺るがしかねない、純粋で圧倒的な魔力、そして吸血鬼としての進化の可能性に惹かれていたのだ。
しかし、それはあくまで魔王の心中でのこと。数千年もの孤独な時間を生きてきた魔王は、自分以外に内心を語ることはない。彼の表情は、常に無関心を装っている。
それに、魔王は退屈していた。魔王軍が大陸を支配し、勇者すら定期的な儀式でしかなくなった今の生活に飽きてきていた。ノアという「異端」は、彼の退屈を打ち破る新たな刺激となる予感がした。
魔王の玉座の間には、四天王最後の二人が控えていた。
「魔王さま。獣魔王ドライガーに続き、魔軍参謀レギオンまで倒されたことは、我々魔王軍の恥でございます」
そう進言したのは、魔王軍四天王の第一席にして、魔王軍最強の将軍と謳われる悪魔将軍アスタルトだった。
アスタルトは、インキュバスや獣魔王とは格が違う。理知的な判断力と圧倒的な戦闘力を兼ね備え、魔王からの信頼も厚い。彼は、ノアの力を正しく脅威として認識していた。
「あのような小娘に、これ以上魔王様の尊厳を傷つけさせるわけにはいきません。今度は自分に任せていただきましょう」
アスタルトの申し出に、魔王は興味深そうに、しかし無表情に頷いた。
「よかろう、アスタルト。存分に力を示すが良い」
魔王の許可を得たアスタルトは、魔国の誇りをかけて、ノアを討伐すべく出撃した。ノアの前に立ち塞がるのは、これまでの下品な雑音とは一線を画する、真の強敵だった。




