第三十四話:大聖女の探求と二つ目の血袋
学園都市アルカディアに到着した大聖女ミリアは、直ちに「黒い制服の、銀髪の幼女」の捜索に取り掛かった。
しかし、ノアはSクラスという最上位の特権階級であり、その圧倒的な存在感から、捜索はあっさり決着した。
「ミリア様、その特徴に完全に合致する人物がいます!ノア・ノストラヴァ様というSクラスの特待生です!」
ミリアは、情報提供者の言葉に興奮を抑えきれなかった。彼女は、すぐにノアを見つけ、学園のテラスでロザリアと共に優雅にお茶を嗜むノアの元へ、一目散に向かった。
「ノア様!やっとお会いできました!」
ミリアは、ノアのテーブルの前に立ち、その神々しいオーラと可愛らしい容姿に、感極まった表情を浮かべた。
ノアは、その神聖な魔力と熱烈な視線の主が、昨日助けた大聖女であることをすぐに察知した。
「あら、どちら様ですの? わたくしに、何か御用ですか」
ミリアは、ノアの冷たい態度にも怯むことなく、興奮気味に自己紹介した。
「わたくしは、聖王国の大聖女の役目をいただいております、ミリアと申します!昨日は命を救っていただき、本当にありがとうございます!そして、一目惚れいたしました!」
ミリアの熱烈すぎる告白に、ロザリアは驚き、すぐにノアの身体を抱きしめて独占欲を見せた。
「お姉様は、わたくしだけのものですわ!見ず知らずの方に差し上げられません!」
ミリアは、ノアの隣にいる白の制服の美少女、ロザリアにも、その魅力を認めざるを得なかった。
ミリアは、ロザリアの純粋な愛と美しさを見て、ニッコリと微笑んだ。
「貴女もノア様のお傍にふさわしい方ですわね。安心してください。わたくしは、ロザリア様すらも受け入れます!」
「白の美少女と、黒の幼女……ふふ、二兎を追うものは二兎を得るのです!」
ノアは、ミリアのユリの気質と強引なまでのポジティブさに、内心で驚きを隠せなかった。長年女性ばかりの聖なる環境で育った故か、その愛のベクトルは極めて偏っていた。
ミリアのあまりのしつこさに、ノアは、静かに、そして決定的な情報を明かした。
「ミリア様。貴女の熱意は理解いたしますが、わたくしは、貴女が奉ずる聖なる存在とは相容れない種族なのですわよ」
ノアは、あえて自らの真祖ヴァンパイアとしての本質を、ミリアに理解できる言葉で伝えた。
ミリアは、ノアの言葉を理解すると、一瞬だけ目を見開いたが、すぐに瞳に揺るぎない決意を宿した。
「え?それがどうかしたのですか? ノア様が、どれほど闇に属していようと、私の命の恩人で、ルナ様の神気を纏っている事実は変わりません!」
そして、ミリアは、自らの清らかな首筋をノアへと差し出した。
「そんなことで私の愛は揺らぎませんよ。むしろ、吸っていいですよ。ノア様の命の糧になるなら、わたくしの血を捧げます!」
ノアは、ミリアのロザリアとはベクトルが違うが、本質的には同じ、強烈な献身と愛に、思わず目を細めた。
(ベクトルは違いますが、本質はロザリアと一緒ですわね。愛の強さが、種の垣根をあっさり超えてしまった、ということですか)
ノアは、この純粋な聖女の血を試すことに、抗いがたい誘惑を感じた。
「ふふ……よろしい。その覚悟、買いますわ、ミリア」
「・・・だけど、獣のように首に食いつくのは、優雅ではありませんわ。」
ノアは、ミリアの手首に小さな傷をつけた、そして滴ってきた、血をカップに受けて、ゆっくりと味わうのだった。
ミリアの血の味は、純粋な光の魔力を帯びており、ロザリアの極上のワインにも負けず劣らずの、特別な悦楽をノアに与えた。
こうして、ノアは学園都市で、二人目の血袋(貴重な献血者)を確保したのだった。




