第三十二話:大聖女現る、高まる勘違い
スルベニア王国から「ノアを入手せよ」という極秘命令を受けた神崎傑は、ノアの異次元の強さを目の当たりにし、武力による制圧は不可能だと判断していた。
「ノア様は、あまりにも強すぎる。武力で手に入れようとすれば、私たちこそ逆に排除されるだろう。ここは、勇者としての正義と使命を説き、協力を仰ぐしかない!」
神崎は、自らの盲目的な使命感と、王女への絶対的な忠誠心をノアに伝えることで、ノアの心を動かせると信じていた。彼は、ノアへの「説得を画策し、勇者パーティの他のメンバーに協力を求めていた。
(ノア様は、私の奥義を知っている。きっと、私の真の目的を見抜いてくれるはずだ!)
神崎は、ノアの言葉を自分の都合の良いように解釈し、まだノアへの接触を諦めていなかった。
その頃、大陸の情勢は、ノアの行動により、静かに、しかし大きく動き始めていた。
ノアがヤンキー連中を一掃したことで滅亡の危機を脱した聖王国に、新たな動きがあった。聖王国の教皇は、国を救った「謎の英雄」に対して感謝の意を伝えるため、接触を試みていた。
しかし、ノアは緘口令を敷き、トリトン軍の兵士たちは固く口を閉ざしていたため、英雄の素性は掴めない。
そこで立ち上がったのが、聖王国の次期教皇候補であり、絶大な魔力を持つとされる「大聖女」だった。彼女は、国を救った人物が、いまだに名乗り出ないことに、強い興味と憧れを抱いた。
「ああ、国を救ったというのに、自分から名乗らないなんて! きっと、名誉や地位に興味のない、素晴らしい人物なのですね!」
大聖女の心の中には、英雄への強烈な勘違いと美化が生じていた。彼女は、国を救った英雄が、最近話題となっている学園都市アルカディアにいるのではないかという根拠のない確信を抱き、周囲の制止を振り切って、勝手に大聖堂を離れ、学園都市へと向かったのだ。
ノアの「目立ちたくない」という行動原理が、またしても新たな騒動と勘違いを生み出していた。
学園都市アルカディア。
神崎傑は、ノアへの説得のタイミングを伺っていた。一方、ノアは、学園内の騒音(主に決闘の申し込み)を排除し、ロザリアやカエデとの優雅な日常を享受することに専念していた。
(本当に、この学園は雑音が多いですわね。そろそろ、新たな力を吸収するか、情報を整理したいのですが……)
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