第二十三話:平伏しなさい!
壇上の幼女
学園都市アルカディアの入学式。数百人の生徒と貴族、教師たちが集う大講堂。
新入生代表の挨拶として、ノア・ノストラヴァは、その幼い身体で壇上に上がった。
会場の全員が、その黒いドレスのような制服の幼女に注目する。期待と好奇の視線が集中する中、ノアはミスリル製の鉄扇を静かに広げ、口元を隠した。
ノアの放った言葉は、たった一言。
「平伏しなさい!」
その瞬間、ノアの小さな身体から、凄まじい吸血鬼としての圧力と、神々しいまでの威圧感が、大講堂全体へと波及した。
貴族たち、教師たち、そして生徒たちのほとんどは、その圧倒的な力と気品に、思わず背筋が凍りつき、目の前の壇上に君臨する幼女の姿は、まるで女王のようにだった。
そして、なぜかその言葉は、「我々を導く指導者」としての力強いメッセージとして受け取られた。
ザザザーとまるで波がひけるような音が聞こえそうだった。
前の列から順に皆が臣下の礼を取って行ったのだ、
ノアが壇上を降りると、大講堂は割れるような拍手喝采に包まれた。誰もが、あの幼女が王の器であることを確信した瞬間だった。
意外なクラスメイト
入学式を終え、ノアとロザリアはSクラスの教室へと向かった。
Sクラスは、数十人規模の生徒がいるが、その誰もが、ノアの纏うオーラと同様に、規格外の才能や異様な雰囲気を放っている。大陸各国から集まった将来の王侯貴族、天才魔法使い、稀代の冒険者の卵たちだ。
ノアは優雅に、指定された席に着いた。そして、周囲の顔ぶれを静かに観察した。
ロザリアがノアに囁く。「凄い面子ですわね、お姉様。やはりSクラスは違いますわ」
その時、ノアの視線が、教室の隅に座る意外な人物に留まった。
「……カエデさん?」
ノアは、思わずその名を口にした。
カエデ少年は、Aクラスに配属されたはずだった。彼は実戦試験では高評価を得たものの、「剣術(刀術)以外に得意なものはない」と自ら語り、魔法の基礎知識も皆無であったため、Aクラスに落ち着いたと聞かされていたのだ。
カエデはノアに気づくと、軽く頭を下げた。
「ノア様、ロザリア様。ご一緒になるとは思いませんでした」
ロザリアは目を丸くする。
「カエデ様!Aクラスではなかったのですか?どうしてSクラスに?」
カエデは、どこか居心地が悪そうに、しかし正直に答えた。
「剣術の項目で、常人には理解できない動きがあったため、とのことで……居合が認められたみたいです。」
(常人には理解できない…わたくしの武の記憶が、彼の才能を無理矢理引き上げた、ということでしょうか)
ノアは、その事態を面白く思った。彼女の退屈しのぎの相手は、より近くにいることになった。
ノアは、鉄扇を静かに閉じ、カエデに向かって冷たい笑みを向けた。
「ふふ、まあいいでしょう。退屈はさせられませんわね、カエデさん」
ノアの学園生活は、規格外の能力を持つ者たち、そして前世の記憶を持つ者たちが集う、新たな舞台で本格的に始まったのだった。




