第二十二話:黒と白の姉妹
幼女たちの降臨
学園都市アルカディア、入学式を終えた翌日の学園初日。
広大な敷地内の校舎前に、蝙蝠の意匠が施された真っ黒な馬車が、音もなく厳かに停車した。御者席から降りたアルベルトが恭しく扉を開ける。
そして、馬車から降り立った二人の少女は、瞬く間に全生徒の注目を浴びた。
一人は、白を基調とした制服に金色の見事な魔術刺繍を施した、少しウェーブだかった金髪の可憐な美少女、ロザリア・ポルックス。
もう一人は、夜の闇のような漆黒を基調とし、銀色のミスリル刺繍が施された制服を身につけた、白磁の肌と銀髪の美幼女、その可愛らしい容姿とは裏腹に、王の威厳を漂わせている、ノア・ノストラヴァ。
二人とも、その見事な美貌と完璧な着こなしで、衆人、特に男子生徒たちの熱い視線を一瞬で集めた。
(意外に目立っていますわね。ま、このわたくしの気品と、ロザリアの美貌、そしてこの特注の制服ならば、それも仕方ないことですわ)
ノアは内心でそう思いながらも、周囲の注目の多さに、わずかに眉をひそめた。
妹と姉の独占
しかし、ノアは動じない。幼いながらも、その背筋はまっすぐ伸び、瞳には冷たい威厳が宿っている。彼女は、集まる視線に戸惑いつつも、貴族としての完璧な立ち居振る舞いを崩さなかった。
この「動じない幼女の気品」は、特に女子生徒たちの注目をさらに集めることになった。
「何あれ、可愛い!それに気品に溢れてるわ」
「まるでお人形さんみたい!でも、なんか女王様っぽい…」
「まさに夜の女王だわ」
「あんな妹がいたら、絶対自慢できるわ!」
「お姉様とお呼びしたい!」
ノアは、その日のうちに、学園内で「妹にしたいNo.1」と「お姉さまにしたいNo.1」という、相反する称号を独占した。その存在は、可愛らしさと同時に、手の届かない崇高な存在として、学園の噂の中心となった。
ちなみに、ロザリアは「お嫁さんにしたいNo.1」を獲得している。
小さな嫉妬の独占宣言
ノアが校舎へ向かおうと歩き出した時、ロザリアが、周囲の熱い視線に耐えかねたように、ノアの小さな身体に抱きついた。
「皆、お姉様を見すぎですわ!この方は、わたくしのです!」
ロザリアの、ノアを独占しようとする小さな嫉妬と宣言は、またたく間に「可愛い」と評判になり、ノアとロザリアの関係もまた、学園の注目の的となった。
ノアは、抱きついてきたロザリアの頭を、ため息交じりに優しく撫でた。
「わたくしの所有物が、下品な嫉妬を見せてはみっともないですわよ、ロザリア。さあ、参りますわよ」
ノアは、周囲のざわめきを完全に無視し、ロザリアの手を引いて、堂々とSクラスの教室へと向かっていった。
学園都市アルカディアの、黒と白の双璧の物語は、こうして華々しく幕を開けたのだった。




