第十八話:クラス分け試験と剣聖
クラス分け適性試験
学園都市アルカディアに到着した翌日、新入生たちはクラス分けの適性試験を受けることになった。これは、学生の潜在的な能力や適性を測り、最も適したクラスに振り分けるためのものだ。
SからDまで振り分けられ、それぞれ適正なカリキュラムが組まれる。そして、振り分けは平等である。
試験は複数のセクションに分かれており、魔法の適性を見る筆記・実技試験と、実技試験には、魔法や剣術の習熟度合いを見る為の試験があった。
ノアは、魔法士のアルベルトと、剣術を使うカエデ、そしてロザリアと共に、実戦試験の会場へと向かった。
試験官は、ノアの幼い外見を見て、戸惑いを隠せない。
「ノア・ノストラヴァ様、貴女は特例での入学ですが、この試験は能力を測るものです。ご無理のない範囲で…」
ノアは、ミスリル製の鉄扇を手に、優雅に微笑んだ。
「大丈夫ですわ。わたくしに遠慮は不要です」
実戦試験は、魔力が込められた訓練用の人形を相手にする模擬戦形式で行われた。
ノアは、本来のジョブである「神祖ヴァンパイア」の能力をそのまま見せるわけにはいかないため、前世で培った剣道の技術と、神祖のカンストした身体能力、そして闇魔法による魔力付与と『独自の剣技』を披露することにした。
ノアは、鉄扇を左手に持ち、中段に構えた。
そして、闇のオーラが鉄扇を覆っていく。
(…身体は幼い。ですがそれこそですわ)
訓練人形が襲いかかってきた瞬間、ノアの動きは音速を超えた**。
ヒュッ!
幼い体躯から放たれたのは、まるで残像のような一歩と、鉄扇による一点集中の一撃。それは、剣道で最も基本的ながら、極めるのが難しいとされる完璧な振り下ろしの一撃だった。
スパッ!
訓練人形は、頭部は漫画のような擬音が聞こえそうな感じに見事に縦に両断され、さらに首が落ちて、機能停止した。
ノアは、軽く鉄扇を振って残心を保つと、静かに納めた。その一連の動きは、洗練され、淀みがなく、それでいて圧倒的な破壊力を秘めていた。
まるで、一流の侍の所作である。
「ノア殿は、あんな所作をどこで会得したのでござろう?」
カエデから見ても、あまりに見事な所作であった。
「お粗末さまでしたわ」
そうして、再び出した、鉄扇を広げて口元を覆うと、ほほほほほと試験の舞台を降りて行った。
「ミスリル製の人形が」
試験管は壊れるはずのない人形が破壊されたことに、驚愕していた。
そして、ロザリアは、これも植物を操る魔法で、人形を完膚なきまで破壊していた。
「お姉様に恥はかかせられません」
ノアのパートナーとしての意地であった。
「ロザリア、いつの間にか研鑽を積んでおりましたのね。えらいですわよ」
「はい、ありがとうございます。お姉様」
周りの女生徒は、明らかな幼女をお姉様と呼ぶロザリアを不思議な目で見ていたが、後に彼女達の中でもノアお姉様呼びが流行るのだが。
その試験の様子は、留学組の勇者パーティの面々も、見学していた。彼らもまた、学園のシステムを知るために、各試験を見学するよう言われていたのだ。
特に、武道経験者である剣聖・如月さやかは、ノアの一連の動作から目が離せなかった。
(あの構え…あれは、片手打ち…蓮が得意としてた!あんな幼い子が、どうして、あそこまで完成された蓮の動きを…)
さやかの心臓が、激しく高鳴った。
ノアが鉄扇を納めた瞬間、さやかの脳裏に、剣道の道場で竹刀を交わした一人の少年の姿がフラッシュバックした。それは、行方不明となった幼馴染、上月蓮の姿だった。
(まさか…そんなわけ、ない。あんなに可愛らしい女の子なのに…でも、あの剣筋は……蓮から習った?)
さやかは、衝動を抑えきれずに、ノアに向かって叫んだ。
「ごめんなさい、あ、あなた、ちょっといい?そ、その剣技は、どこで!?」
ノアは、その声に気づき、静かに振り返った。彼女の金と赤のオッドアイが、さやかの姿を捉えた。ノアの記憶の中の「クラスメイトの朧げな記憶」が、はっきりとした像を結ぶ。
(如月さやか……覚えていますわ。元・わたくしの幼馴染)
さやかは、ノアの顔を、そしてその冷たい瞳を見て、息を呑んだ。
そして、絞り出すような声で、確信に近い疑問を口にした。
「あ、私、如月さやかって言います。えっと、ある国からの留学で来てて……そ、その・・」
ノアの覗き込むような目に何かを感じたのか。
(全然似てないし、瞳の色は左右別だし、でも)
「・・・・蓮?」




