第十二話:暴君たちの饗宴と交錯する運命
略奪と享楽の館
聖王国との国境付近に位置する、戦略上の要衝の街。その市長の館は、今やスルベニア軍の野蛮な司令部となっていた。
館の広間では、ヤンキー連中が、略奪した金品と酒を前に、饗宴に耽っていた。
リーダー的存在のケンイチ(大剣使いのリーダー)は、上質なワインをがぶ飲みし、その傍らには、先日襲撃した村から捕らえられた、裸のウサギ耳の獣人の女性が侍らされていた。ケンイチは、その女性の豊満な胸をわしづかみにし、下卑た笑いを浮かべる。
「どうよ、この世界。俺らに任せりゃ、国潰しなんてあっというまよ」
彼の言葉に、他のヤンキーたちも哄笑する。
「騎士団の奴らがチマチマやってんのが馬鹿みたいだよな!力こそ正義ってわけだ!」
「このウサギちゃん、マジでたまんねぇぜ!」
彼らは、元の世界では味わえなかった絶対的な力と、それによる享楽に完全に溺れていた。彼らの行動を王国が是認しているため、罪悪感など微塵もない。彼らの頭の中には、「魔王討伐」という大義は薄れ、暴力と欲望の実現だけが残っていた。
その頃、彼らが属するスルベニア王国の勇者パーティは、全く別の方向へと進んでいた。
神崎傑(勇者)率いるパーティは、王女と国王から告げられた「魔王討伐」という偽りの大義を信じ、聖王国とは正反対の大陸北方に存在する魔王国へと、ひたすら遠征を続けていた。
彼らは、ケンイチ達の暴虐が続く聖王国方面の状況を、ほとんど知らされていない。
「魔王を倒せば、僕たちは帰れるんだ。さやか、頑張ろう!」
「ねぇ、傑ほんとにそう思ってる?」
さやかは、あまりに張り切りすぎる傑に違和感を感じた。
(気のせいよね)
神崎は、王女による洗脳の言葉が脳裏に響きながらも、自身の正義感と責任感で、まっすぐに魔王国を目指していた。
幼女の接近
ケンイチ達、スルベニア軍のいる享楽の街へと、漆黒の影が静かに、そして猛烈な速度で迫っていた。
ノア・ノストラヴァは、ロジャーとその部下たちに、聖王国への最短ルートを確保させ、アルベルトと共に空路で移動していた。彼女の瞳の奥には、前世の同胞の暴虐を許さないという、冷たい怒りが宿っている。
ノアは、ターゲットが近郊の街に屯していることを、既にアルベルトの眷属からの報告で掴んでいた。
(ウサギ耳の獣人を侍らせて、ですか。下品極まりない。貴族の恥ですわ)
ノアは、ミスリル製の鉄扇を握りしめ、静かに決意を固めた。
「もうすぐですわ、アルベルト。一掃しますわ」




