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あるんだけど、ないカード③


というのが三年前の話。

 

流石にもう果林も気にしていないだろう。このカードを売ってしまっても、何も問題はないはずだ。



「一応、あとで確認くらいはしておくが……」

 

その前に、いくらで売れるのかを確認しておこう。とても高額になるとしても、値段まで果林に教えてやる義理はない。あくまで売っていいかどうかの事実確認をとるだけ。金額を話した途端、態度がころっと


変わる可能性もある。


「これは何レアっていうんだ?」

 

レアカードの種類・名称はカードゲームによって異なる。サイン入りカードなのだから、特別な仕様であることは間違いない。なんらかの名称があるはずだ。

 

黒いサインが書かれたカード。サインレア?

安直すぎるか。

試しに、「宵宮すずは サイン入りカード」で検索をかける。

ヒットしない。


「スキカ サインカード 宵宮すずは」ならどうだろうか?

これもヒットはなし。



「サイン 宵宮すずは」ならどうだ?


出てきたのは眼鏡をかけた黒髪の女性VTuberがタペストリーを紹介している画像だ。

タペストリーには黒いペンで宵宮すずはのサインが書かれている。この黒髪の女性はスキライブのマネージャーらしい。


「スタッフもVなのか。面白い試みだな」


公式にカードのデータベースがあるといいのだが、こちらも見当たらない。

ほかに情報はないだろうかと、裏面を見る。見えるのはイラストだ。宵宮すずはの別のイラストが描かれたスリーブに入れられているのだ。


「まあ、カードの裏面なんてみんな同じか。サポートアプリは存在していないのか?」

 

これが「デュエルレガシー」なら、すべてのカードを様々な視点から検索が可能で、かつユーザーが投稿したカードレシピや、どのパックに封入されていたのか、そのパックには他のどのようなカードが収録されていたのかなど、関連情報もすぐにわかる。とても便利な公式アプリが存在しているのだ。

 

しかし、どうやらそれもないらしい。

 

ないものは仕方がない。別の切り口から調べてみることにする。



 

三十分後。

 

画像検索からAIのサポート、質問サイト、SNSの検索欄などあらゆる手を使って調べた結果、ふたつわかったことがある。


一、宵宮すずはのサイン入りスキカカードは存在しない。

二、このカードと同じイラストのカード自体は存在する。


つまり、サイン入りバージョンの特別レア仕様カードは実在しない。


「どういうことだ?」

 

このカードはファンが偽装したものだった?

価値がないと知っていたから、果林は手放したのか。

だが、熱心なファンが偽物に騙されるだろうか?


「考えてもわからないことは、本人に聞いてみるのが一番いい」







『あのカードだったら、確か十三万くらいで落札したんじゃなかったかしら?』

「十三万円!? そんなにしたのか!?」

 

本当にレアなカードであればそこまで珍しい金額ではないものの、かといって新パックが出る度にごろごろと市場に現れるような金額でもない。十万円以上の市場価値があるレアカードならば、調べれば公式の情報やらカードショップにおける通販のページくらいはヒットしそうなものだ。


『オークションで、最初は五万円くらいだったんだけどね。だんだん価格が上がっていったのよ』


「販売主の別アカウントが釣り上げたんじゃないのか?」


『そんなわけないでしょ。なによ、私の記憶を疑っているわけ?』


「いや、疑っているのは記憶ではなく、カードの価値だ。宵宮すずはのサイン入りカードは調べても出てこないんだ。落札したってことは、あれがちゃんと公式に存在しているカードだって、わかってたのか?」


『…………あれは本物よ。間違いないの』


今の間はなんだろうか。


「だが調べても情報が出てこない」


『調べ方が悪いんじゃない? あんたがやってるカードにだって、調べても検索の上位に来ないカードはあるでしょ? なんだか紛らわしい別のワードと被るような名前のカードとかさ』


「そりゃあるが、当時人気だったVのサイン入りカードだぞ。まったくの別問題だろ」


『ごちゃごちゃうるさいわね。あれは本物よ本物! ファンだった私が偽物を落とすわけないでしょ! それに、オークションの日、掲示板サイトのスレでもオークションのことは話題になってたの! それも偽装だっていうなら、そこまで手の込んだことをして十三万程度でやめにする?』


「それは……そうかもしれないが」


『っていうか、なによあんた。調べたってことは、売ろうとでもしたの?』


「いらないんだろ。まずかったか?」


『そりゃあ……』


「偽物だから、売れるはずがない……?」


『しつこいわね! 本物だって言ってんでしょ! 売りたければ売れば!?』


通話が切断された。

どうにも何かを隠しているような気がする。たいして調べもせず、衝動で買ってしまったもののあとから偽物だと気付き、それが恥ずかしくなった。というのは考えられる。

もしくは、何かもっと別の理由が――。



「まあ、何かの記念品で用意されたマイナーなカードという線はあるよな」


カードの正式なレアリティがわかれば検索にもヒットするのかもしれない。要は、俺の調べ方が悪いだけなのかもしれない、という話。


「一応、売りに持っていってみるか」


スキカの取り扱いをしている店ならば、きっとこのカードが偽物か本物か判断してくれるはずだ。結局、こういうのはプロに任せた方が早いのだ。


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