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復讐令嬢アデラの帰還  作者: 小針 ゆき子
第二章 復讐本番
10/40

閑話 私はマリア。(五十年前の)乙女ゲームのヒロインなの

突然ですが、アデラの中の人のお話です。

このお話唯一のギャグ要員です。


 私は小柴(こしば)真理愛(まりあ)。花の十五歳よ。

 ある日突然足元が光ったと思ったら、いつの間にか異世界にいたの。

 異世界は「ムーアクロフト」っていう名前らしい……ええーーっ!この世界って「ラピスラズリの王冠」の世界じゃない。主人公が異世界ムーアクロフトのケンブリッジ王国に不思議な力で召喚され、イケメンたちとイベントをこなしながら世界を救うストーリーよ。試しにゲームの通りに魔法書を買って魔法を使ってみたら、やった!できたわっ。ワンダフル!もうヒロイン決定ね。空も飛べるし身体強化できるし、回復魔法も使えるわ。チートじゃない。

 早速城を抜け出して街にいた王子との出会いイベントから始めましょーーっ。


 ……ふふふふ。いいわ。いいわ。

 王子ってばチョロいことチョロいこと。あっという間に私のトリコよ。取り巻きたちも以下同文。そして王子の婚約者、つまり悪役令嬢が登場したわ。縦ロール生で初めて見た……。ほんとにいるんだ。この人が意外と重要人物なのよ。ヒロインと王子との愛を燃え上がらせるスパイスなのはもちろんだけど、断罪されて国を追放された後、邪悪な魔族を召喚してケンブリッジ王国を乗っ取ろうとするの。王子ルートではこの危機を乗り越えることでヒロインは王子の妃に相応しいと認められ、王妃になってハッピーエンドなのよ。


 さあ王子に連れられて学園に特待生としてやってきたわ、いやっほい!

 さあ悪役令嬢ちゃん。私をどうぞいじめてちょうだい!……あれ?いつまで経っても悪役令嬢がいじめてこないんだけど。困ったなぁ。

 いじめてもらわないと王子や他の攻略対象との好感度が上がらないじゃない。仕方ないわね。全部は無理だけど大事ないじめイベントはでっち上げるしかないわね。ちょっと心が痛むけど、これも世界の平和と愛のためよ。


 そんなこんなで一年後。やってきました卒業式ウィズ断罪ターイムっっ。

 やっちゃってください、王子様。

「貴様との婚約を破棄する!そして聖女マリアを新たな婚約者とする!」

 追撃お願いします、取り巻きの皆様。

「聖女であるマリアをいじめるなど、淑女の風上にもおけん!」

 そして悪役令嬢様!醜く泣きわめいて王子に縋ってくださいませ。


「―――殿下、婚約破棄は承知しました。ですがマリア様は聖女ではありません。魅了の魔法を使う魔女です」


 はい!?え、え?悪役令嬢様、セリフがおかしくないですか?

 あれ?いつの間にか両脇にいた騎士に腕を拘束されている。見れば王子たちも騎士たちに取り押さえられていた。どういうこと?すると悪役令嬢の後ろから、ローブをまとった長身の女が現れた。あ、あのシルエットは……。そしてあの特徴的な紫の髪。


「魔女ヴァイオレット?」


 魔女ヴァイオレットは魔法が使えるヒロインを助けてくれるお助けキャラだ。でも最初に接触するための魔法アイテムを手に入れるのには危険な思いをしなくちゃいけないし、金に超がめついし、あっさりと王子たちを攻略できたので私はヴァイオレットに会いに行かなかった。それなのにどうして悪役令嬢の味方として現れるの?

「まあ、私を知っているなんて……魅了魔法使いの娘が一人脱走していたとは聞いていましたが、あなたでしたか」

 え、なんの話?

 私がぽかんとしていると、ヴァイオレットは水晶玉のような透明な球体を袖口から取り出した。

「ケンブリッジ王国の皆様、この魔女めは同じ魔女の私が引き取り、二度と悪さをさせないと誓います」

 え、違うよ?私はチキュウから召喚されただけで、ヒロイン補正のチートで魔法が使えるだけだよ。魔女の仲間じゃないよ!

 見れば悪役令嬢がにんまりとしている。……しまった!嵌めたつもりが嵌められた!この恨みはらさでおくべきかーーっ。

 ぎゃーーーっっ。玉の中に吸い込まれるぅぅーーー。

 

 あーーーーーーーーーれーーーーーーーーーー。



 ……くそー。悪役令嬢にしてやられたわ。

 あの後、私を玉に閉じ込めたままヴァイオレットが色々と教えてくれた。思った通り、私は聖女ではなく魔女の仲間、しかも王子に魅了を使った大罪人に仕立て上げられていた。……え、概ね事実だろうって?そんなわけないでしょ。私は魅了なんて使えないわよ。私自身の魅力で王子を堕としたのよ、失礼な。

 結論を言うと、悪役令嬢が転生者だった。そして私と同じくこの世界の知識を持っていた。だから断罪を回避し、強力な魔法を使える魔女ヴァイオレットとひそかに手を組み、私を排除したのだ。

 ゲームでもヴァイオレットが悪役令嬢と手を組んだ理由は金だった。彼女は魔法の向上と自身の美貌を保つために莫大な金を必要としていたのだ。それを知っていた悪役令嬢は莫大な金でヴァイオレットを雇い、彼女に私を封印させたのだった。

 ちなみに王子や取り巻きたちは廃嫡。次期国王は王子の弟に決まり、悪役令嬢はその婚約者にちゃっかり納まったらしい。


「私をどうするつもりよ?」

「ご令嬢と魔法契約をしてしまったのよ。あなたの魂を五十年は預かるわ」

「ご、五十年!?五十年もこの中なの!」

 ひどい、あんまりだ。

「安心おし。催眠魔法をかけてあげるから。目を覚ましたら五十年後になってるから、すぐに出してあげられるわ」

「何一つ安心要素がない!」

 ヴァイオレットが玉に手をかざす。さらに文句を言おうとしていた私の意識はあっという間に刈り取られた。




 そして目が覚めたら本当に五十年後である。

 起きて早々、私は命の……いいや、魂の危機に瀕していた。なんと私の魂inグラスである。どういうことなの。


「これを飲んでちょうだい」

 私(の魂)が入ったグラスを弱弱しい女の子に勧めるのはヴァイオレットだ。おんどりゃーっ!てめえ、説明しろい!

「これは?」

「あなたを殺す毒よ」

 毒じゃねーわよ。失礼ぬかすなよ。もう泣くよ?泣いちゃうよ?何なのこの扱い。

「毒……」

 あーーー。オジョウサマ?まさか飲まないよね?毒って聞いたよね。いや、毒じゃないけどもっ。

 いや、いやっ、待ってーーー!やーーめーーてーー!


 あーーーーーーーーーれーーーーーーーーーー。


次話から本編の続きに戻ります。

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