観覧車のてっぺんで腕組みしてたら、先客がいた!
(爽快だ……!)
これを一度、やってみたかった。
地上を見下ろし、頬撫でる風を心地良く受け流す。
俺は今、観覧車の天辺に立っている。
ゴンドラの中ではなく、外だ。
仁王立ちで腕を組み、気分はさながら、どこかの強者。
厨二病と笑う勿れ。
機会があって可能なら、誰だって一度は憧れるポーズだと思うのだ。
(マントとかあればなぁ。おっと)
観覧車がゆっくりと下降を始める。
隣のゴンドラに飛び移らねば、天辺ではなくなってしまう。
「えっ」
間抜けにも声が出た。
隣のゴンドラの屋根に、先客がいる。
ぼんやりと座ってる女の子。年は俺と同じ大学生、かな?
自分で言うのもなんだけど、普通の人間は観覧車の外には乗れない。
「えっと……、幽霊の方、でしょうか?」
飛び移ってから、控えめに声掛けると。
「はあ?」
怪訝そうに睨まれた。
うっ、すみません。突然話しかけて。
「身体に繋がるこの紐が見えない? 貴方と同じよ、パジャマの生霊さん」
「お、おぅ……」
それ言わないで。
縦縞模様のパジャマにスリッパという出で立ちを指摘され、俄かに赤面する。
対する彼女は水色の……。
「もしかして、手術着」
「そう。いま執刀されてるところ」
「それ、抜け出して来てて大丈夫なの?」
「だって! 自分の身体にメスが入ってるとこなんて、見てられないじゃない。怖いもの!」
「あわわ、そうだよね。ごめんね、繊細なことなのに」
「貴方は事故か何か? 早く戻った方がいいんじゃない?」
「まあ、そうなんだけど」
ストン、とその場に腰を落とす。
「あ、隣座って良かった?」
「座ってから聞く?」
彼女が笑った。
微笑んで細められた目が、絶妙にセクシー。
知らない相手。肉体からの解放。
そんな状況だからだろうか。思わず零れた。
「俺が戻ったところで喜んでくれる人がいるのかな、とかさ」
「いきなり重いわね?」
「……振られたんだ。つい先日」
「それはまた……あっ」
「おお」
二人一緒に、下降し始めたゴンドラから隣に移る。
「っぷ。ふふふふ! 貴方、全然大丈夫だと思う。だってすごく負けず嫌いみたいだし」
「ええっ? いやでも、観覧車は天辺だろ」
「そうね。私も天辺が好き」
「良かったら、生身でまた会いましょう。私、手術頑張るから」
彼女が力強く言った。
「うん」
それが、半年前の馴初めで。
「今日は、観覧車本来の使い方をしようと思ってる」
「というと?」
「密室で告白」
ゴンドラの中で、俺と彼女は互いの体温を確かめ合う。
生きてて良かった! 二人とも!
お読みいただき有難うございました!
なろうラジオ大賞、参加10作目になります。
クリスマスにインフルエンザに沈み…っ。気がつけばもう年末です。
年末とは思えないほど何も出来てないまま、明日が大晦日とか信じられない(*ノ□ノ);
ら、来年、来年の年末はしっかりお正月準備する。気が早いけど。
今年はもう体力の回復に努めながら流されることにします。
ところでゴンドラとドラゴンって字面似てますよね♪ 相変わらずの1000文字、いろいろ書き足りませんでしたが、楽しんでいただけましたら幸いです。
では良いお年をお迎えください。




