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魔王様が裏庭の穴を埋めます。

勇者との初戦闘に勝利した魔王様。ただし強引にもぎ取った勝利の代償は大きかった。

穴だらけにしてしまった裏庭兼訓練場を何とか使える状態にするために奮闘する魔王様のお話。

当然、いつもの仕事の傍らでやらないといけません。そんな状態なので、朝から晩まで仕事することになります

前半は正直退屈なので、後半から読んでもいいかも

まだ太陽が昇る前の、多分朝5時頃。魔王様の長い一日が始まる。

寝床から這い出し、そのまま家の裏の池に落ち、身を清める。魔王様の家の裏の池はきれいなので特に問題はない。昨日の傷はこの時点で完治している。魔族の体とは便利にできているものなのである。

10分ほど池の底で沈没した後、これまたナメクジのように家に戻る。これから仕事に行く準備である。

気分が乗らないまま体をふき、制服である黒くて長いローブに袖を通す……いや、今日は農民みたいなツナギで行くか……その方が今日の仕事にもあっている。

いつもとは趣の違うあっさりとした重い服を纏い、街の中にある家を出る。

元々はこの家が城だったのだが、人が増えて手狭になったので、今のサイズの城を町の外に立てたはずだが、そっちに街の中心が移ってしまった。

家を出て気づいたが、朝早いせいか、まだ人通りも殆どない。普段なら屋台が数店出ていて、簡単なサンドイッチとか野菜入りスープ、後はコーヒー辺りが買えるのだが、今日はお預けになるようだ。

何にせよ朝食は城についてから取る派である。お勧めは城の1階にある喫茶店で出される、クラシックブレックファースト。パンケーキ、ベーコン、ソーセージ、目玉焼き、トーストにハッシュブラウン、飲み物にコーヒーとジュースが選べる山盛り仕様。味はシンプルで良いし、ボリュームが多くてお気に入りである。残念ながら、この時間では開いていないことである

そんなことを考えつつ歩いていると、魔王城に到着する。いつもならローブを着ているから紋章だけで出入りできるのだが、今回は珍しくバッジを付けている。

「おはようございます」

「おはようございます、入門証を拝見してもよろしいでしょうか?」

この丁寧なのがサムエル。昨日負けた方だが、実力には問題はない。それどころかこの体格のおかげで、悪いやつはこれを見て近寄ってこない、心が広い警備隊の隊長。なんか猫を飼っていて、甘いものが好きらしいが、私の顔は覚えてくれない。

胸のバッジに指差し、聞いてみる

「これではだめかしら?」

サムエルがいつもの調子で答える。

「問題ありません、魔王様。本日もご安全に」

そういっても正門は自動では開かない。

「ねえサムエル、これ開けるの手伝ってよ」

めんどくさそうに正門の前まで大男が来る。

「じゃあ、1,2,3の掛け声で押し込むからね」

私もサムエルも、門に力をかける準備をする。位置について、扉の強い部分を見抜いて、扉の骨格に手を掛け一気に力を加える

「1,2,3」

2人分の力で、城の正門は開いた。結局、この門は私なしで開けることはできないのかもしれない。

「サムエル、ありがとう。仕事終わったら後でそっち寄っていい?勇者の件で相談事があって」

「ああ、問題ない」

「じゃあ、昼過ぎにそっちに行くわ」

とりあえず勇者の今後については、しばらくは警備隊の相手をしてもらうとして、

今度は自分の仕事をどうするかを決断しなければならない。少なくとも昨日やるべき仕事は半分くらいしか終わってないし、今日の分も追加されるし、そして一番重い仕事である裏庭を元に戻す仕事も残ってる。

城の中は閑散としており、入り口のサムエルと、もしかしたら喫茶店の仕込みで誰かが居るくらいで、他には誰もいない。そして都合が良いことに、私はすでに着替えを済ませているのでこのまま裏庭で野良仕事をしていても誰も違和感を持たない。

ということで、さっそく裏庭に出て、倉庫を漁っている。幸運なことに、穴の開いた芝生を埋める用の土と芝生の素はあった。戦闘で吹っ飛んでいったり、溶けてしまった玉砂利もある。普通の小砂も砂利ある。あとは……猫車とシャベルがあるからとりあえずは問題なさそう。

と、いうことで、今から裏庭を埋めていく作業に入ります。

まずは……土がむき出しで固められていた部分の修理に入る。

まずは爆破で開けてしまった巨大な穴に、砂利を敷き詰めて、敷き詰めた部分を魔王様が体重と魔法で平らにする。最後にその上に土を多めにかぶせて、土の部分を魔王様が体重と魔法で平らにすれば完成。

と、言うのは簡単ですが、実際には爆発でできた直径1mの穴と、勇者の攻撃を防いだ時にできた20cmの穴が4箇所ほどありまして……どうしたものか。

「よし、1mの穴はちゃんと埋める。20cmの穴は土だけで埋めて均せば平気でしょう」

とこんな調子でスタートしました。まずは1mの穴に砂利の袋を切……らずに穴に6個投入。そして上から魔法攻撃で袋を破く。こんなんで砂利の投入作業は終わってしまいました。

そして、均す。ひたすら均す。穴に入って体重と魔法の力で平らにする。これで底の方の40cmは埋まりました。私の体力の残りは3/4くらいになりました。

最後に、土の袋を切って、砂利の上に敷き詰めるだけ。今回も上から袋を投げ込んでかまいたちで袋を破いて、そこから体重と体力を使って平らにする・・・・・・これ結構かかるので魔王の力で時間を進めましょう。魔王様の体力が1/2まで減りました。魔王様が今日を生き残れるのかを見て行ってあげてください。

最後に、シャベルで、穴の周囲を平らにして、この大穴は終了。ここには元々芝生が無いので、これでOK。

次に、20cmの穴……猫車に砂利を積んで、積んだ砂利を穴の近くに持っていき、猫車から砂利を下して

、シャベルと魔王様の重量で平らにする。そして土袋から土を穴の上の方にかけて、これまた魔王様の体重でならす。

最後に、シャベルで、穴の周囲を平らにして、この小穴×4は終了。ここには元々芝生が無いので、これでOK。

時間が過ぎるのは早いもので、大して穴を埋めていないのに昼になってしまった。勇者誘って昼飯に行くか……いや、この泥だらけ格好でけが人に会うのはまずい。どうせ勇者は昼過ぎてから行ってもいいでしょう?

で小休憩も取らずに作業の再開ですが、魔王様は24時間連続稼働保障なのでこれくらいでは問題ありませんが、皆さんはちゃんと、休憩して水分を取りましょう。これくらいの強度で気温25℃なら一時間当たりに500mLの水分を取りましょう。

ここからが問題でして、勇者に攻撃を叩き込んだ時にできた直径30cmの穴がいくつかありまして、これが芝生に空いた穴だということ。埋め戻すところまではできるけど芝生に戻せないので、最後は誰かにやってもらおう。

まず、空いた穴に芝生用の土を入れる。入れた砂を体重と権力で平らにする。

ここまではいつも通り。次が問題だ。穴の開いている部分の周囲の正常な芝生から芝生を土付きでちょっとだけ掘り起こし、掘り起こした芝生を、穴の開いていた部分に埋め戻す。最後に埋め戻した部分に砂をかけ、掘り起こした部分に砂と土をかけ、芝生の苗を植える。植えたら上から砂を追加で掛ける。

これが後3か所も残っているのですよね。さてどうしようかと思っていると、都合よく人が通りかかりました。

「あ、魔王じゃん、何してるの?また穴ぼこ増やすの?」

話しかけてきたのが虎と人の獣人の弟の方の凱 (カイ)。かなり社交的で、街に出るとナンパをするらしい。背は高いし、見た目は美形で、金も持っているから多分男の理想形。

「こんにちは魔王様。今日は訓練場の修理ですか。ありがとうございます。」

「いや、私が勇者と暴れすぎてボコボコにしたから、今直してる」

次に話しかけてきた方が、虎と人の獣人の姉の蓮 (リエン)。こっちも線の細い美人で、男女問わずにモテルらしい。全部断っているといううわさがあるけど実際は知らない。

ちょっと手伝ってもらおうかな……なんて邪な考えが、いや、みんなの共用部だからお願いするのは悪いことではない。

「ねえ、カイ、リエン、もし時間あったら芝生をもとに戻すの手伝ってくれない?」

「いいですよ、リエンはどう?」

「私も時間あるので、いいですよ」

言ってみるものである。これでだいぶ助かった。

「ありがとう。じゃあ、私が最初の穴を均すから、カイとリエンは芝生掘り起こして、掘り起こした芝を穴の開いた場所に植ええほしいの、で、私が芝生掘って空いた穴に芝生の苗植える。これでいい?」

「それで行きましょう」

それから、私は穴に砂と土を入れて整地しながら、2人が芝生を掘り起こすところを見て、終わったら2人が整地した穴に芝生を埋め、掘って空いた穴に芝生の苗を植え、土と水をやって終了となった。

言ってみるとだいぶ面倒だが、人数集まったら30分程度で終わった。

「カイ、リエン、ありがとう。今日遅いなら夕飯奢るよ」

「「魔王様、ありがとうございます。」」

声がそろうのが兄弟感あるよね、と思いながら更衣室へ。更衣室で着替えて気づくが、汗と泥だらけとなったツナギが意外と重い……労働者には感謝しないといけないようだ。

着替えて執務室に向かったら、今日の仕事開始である。その前に、喫茶店で茶でもしばくか。

喫茶店でテイクアウトした、アイスコーヒーとアイスの……なんかミルクの入ったコーヒーを持って執務室に上がる。

さて、時間的には3時と、一日の労働時間の3/4が終わった感じですが、私の普段の仕事は0/10しか終わっていません。何なら前日に逃げたやつもあるので、かなり増えているはず。

ここからが正念場だなと思いながら、開けたくない執務室の部屋の戸を開ける。

「ようやく終わった……あとこれ」

「お疲れ様です。差し入れありがとうございます」

買ってきたよく分からない方の飲み物を渡す。意外と秘書イザベラの対応が淡々としすぎて怖いが、今日の仕事の確認をするのはもっと怖い。

「イザベラ、すぐに処理しないと危険なものってあります?」

「書類とか客人とか、術式ですよね?今日はとくには無かったはずです」

「ありがとう」

時間を掛ければどうにかなるものばかりの仕事ばかりだと知って安心はできたが、目の前にある量を処理するのはそれはそれで時間が単純にかかる。

「ねえイザベラ、この中に単純にサインするだけの書類はどれだけ?」

「半分くらいですかね」

「魔術の依頼は?」

「5件くらいだったはずです」

「ありがとう」

ここから私は、書類にサインを入れるだけのからくり人形と化した。書類の山の書類のうち、単純な書類には一気にサインを入れ、面倒な書類は……一応ちゃんと目を通し、通せないものは返送トレーへ

こんなことを3時間ほど行っていると、日も暮れてきて、城内の照明に火が点る。

「じゃあイザベラ、処理ができた書類がこれ、不備があったのがこれ。それぞれを渡してきてくれ」

「わかりました。これ終わったら上がりますね」

小柄な女性が重そうな書類を持って部屋から出ていくのを見ながら、依頼の入っていた魔術を確認する。2つは魔法を記録し、魔力だけで簡易に再現するストリップの作成、1つは紙に術式を焼きこんだ物。開くと入れていた術式が発動して燃えたり爆発したり、精神状態に干渉したりするやつの依頼。残りは物そのものに術式をかけて強化する依頼。ストリップの作成が時間的には一番大変だが、それ以外はそうでもない。

仕事の確認をしていると、執務室の扉が開いた。

「あれ、イザベラ帰るんじゃなかったの?」

しかし、反応はなく、代わりに勇者が立っていた。しかもナイトガウン着ただけの格好で

「勇者じゃん。どうしたの?」

「魔王様、いえアデレードさま、申し訳ありませんでした。」

突然勇者に謝られて、思わず紙を落としてしまった。何があったのだろうかという気持ちと、これから何が起きるのだろうという不安の両方の感情が体を支配する。

「さあ入って、とりあえず座って?お茶入れてくる」

勇者を応接セットに座らせてから、慌てて外の給湯室に逃げ込む。とりあえず一人で作戦会議である。

なぜここに来たのか?もう一度戦いに来たのか?それともほかの理由?体の調子が悪い?実は暗殺されそう?

いずれにしても、この場で何かをするための案は出ない。

適当に邪念入りで淹れた茶を持って、執務室に戻る。応接セットのソファーには、勇者が寝ていた。

一体何しに来たんだ……と思いながら、2つ淹れたお茶の片方を置く。

医務室で一応診察とある程度の応急処置は受けたはずだが、傷の状態は気になる。確か、水圧で吹き飛ばしたのだっけ……一応上は脱がして確認してみるか。

背中側にも、前側にも特に大きな傷は無いようだが、肋骨は数本折れてそうなので、しばらく安静にしておいた方が良いだろう。

さて、可愛い勇者が来てくれたので、魔術を込める仕事をする。時間は夜の6:30。城のこちら側は静かだが、正門出た通りは飲み屋に飯屋にお姉ちゃんが居るお店で賑やかなはず。

初めにとりかかる、ストリップへの魔術の書き込み自体は難しくはない。よく知っている魔法であれば、その魔法を正しい順番で軽く唱えて、特殊な薄膜金属でできたストリップにぶつける。別の魔法も焼くなら、ストリップの別の部分に焼く。これを繰り返すだけ。

ちなみに使うときは、唱えたい魔法が焼かれた部分のストリップに魔力を込めると、魔術が発動する。

紙に術式を焼きこむ方も手順はさっきのストリップに魔術を焼くのと変わらないが、紙が特殊で、暗い部屋でその紙に対して焼きこみたい魔法をぶつける。ぶつけたら光を通さない封筒に入れて封をする。

使うときは、封筒から紙を出すだけ。と、使うのは簡単だが作るのは面倒。

そして、最後に物を強化する魔法……2件あるのに手甲1セットしかない。しかも別の依頼は剣の強化だから、手甲だけでよいのか……これならカイ兄妹との夕飯奢る約束には間に合いそうだ。

そして手甲にはさっと軽量化と耐熱の恵みを与えたので、これで終わりということになる。

勇者を背負って、執務室の明かりの灯を消し、外套を被って執務室の鍵をかける。一日の終わりである。

勇者を背負ったまま、城の正門を出て、いつものレストランに行く。城の中には2人はすでに居なかったので、もう店で出来上がっているだろう。

いつもの店に入り、いつもの席に座って……そうだ、今日はお客さんがいるのだった。

「魔王様、背負っているのは誰ですか」

「これ?勇者。名前はジュリアナ」

「これが魔王に傷を付けたと話題になってた」

「こちらが油断すると簡単に負ける程度には強い」

そして、仕事のこと、日常生活の悩みや自慢などを軽く話しながら、酒と飯と時間が進む。

「魔王、そろそろ帰らなくていいのか?」

カイが勇者ジュリアナを見ながらこっちに聞いてくる。

「ああ、そうだな。」

財布の中から、中銀貨数枚置いて、店を後にする。

「魔王様、今日はありがとうございました」

「こちらこそ、リエンとも話ができて楽しかった。また行こう」

さて、手伝ってくれた部下にも飯は奢ったし、勇者を家に連れて帰ることにする。

2つ目のベッドはないが、ソファーはあるので執務室のソファーよりかは快適。一応温水で水浴びもできるし。

家まで勇者を背負って行き、家に勇者を運び込む。完全に寝ているので、とりあえずソファーに寝かせて、毛布を掛けておく。これで良し。

さて、今日は妙に長い一日だった。もう寝よう

何か今回は文体が違うのですよね……まあ前半は魔王様一人なので話が成立しないのですよ

そういえば、役所の1階に喫茶店が入っているのは普通なんでしょうか?

考えてみると自分が知っているのは蒲田駅の大田区役所くらいで、他では見たことないのですよね

次回は、勇者を連れてダンジョンデート(仕事)です。

準備はしっかりしましょう

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