魔王様。勇者のご実家にお邪魔して夕飯と寝る前のお酒まで頂いていく
あまりにも魔王城が寒いので、勇者のご自宅にお邪魔するつもりの魔王様と勇者ご一行。
ようやく1泊3日に及ぶ移動を終えた魔王様ご一行。勇者のご実家での過ごし方を見て行こうと思います。
何と、魔王様は勇者ご両親に自分を紹介するらしいです。
夜通し走った馬車を降り、ブライアベリーの町に着いた勇者+魔王様ご一行。丁度朝日が上がってきたころなので、町中にはまだ誰も歩いていない。
「ただいま、私の故郷」
まだ魔王を倒していない、勇者ジュリアナは、着いて早々にそんなことをつぶやいていた。
「ねぇ、この街って朝はこんなに人が居ないの?」
「そう!、他の町だとこの時間から動き出すんだけど、この辺は農家が多いから」
ブライアベリーはのどかな農村で、ほとんどの村人は農家であり、ジャガイモと小麦を育てているか、牛や羊や鶏を育てて、生計を立てている。そんな彼らの仕事は朝早く、それこそ日の出前からやっている。
「そうか……私の家族は狩猟で生計を立てていたから、よくわからなかったけど、魔法の勉強していた時の師匠が農家だったなぁ。師匠も朝が早くて、週に3回位手伝わされたよ」
「私の教会では、裏に農園がありまして、野菜と果物を栽培してました。でも外での作業は日が出てからですよ」
「意外とみんな農業にかかわりがあるのでね……連れてきて驚かれたらどうしようと思ってました。ところで魔王様はそういった経験ないのですか?」
「今は趣味程度にしたけど、ウィロウウッドを開いたばかりの昔は、家の裏に作った広い畑でジャガイモと野菜を育ててた。あと牛と馬も飼育してた。」
「そんな時期もあったらしいですね。魔王様の古い話はお爺さまから聞きました」
ここで、ジュリアナにご実家の場所を聞く。
「そういえばジュリアナ、ご実家の場所はどちらに?」
「ここから歩いて15分くらいです。案内します」
そうして、田舎のでこぼこ道を歩いて移動することになったが、街の中心部から少し外に出ると、広大な畑と牧草地が広がっていた。
しばらく歩いていて気づいたことだが、妙に視線を感じる。周囲を見ると、農家の青年やおばちゃんがこっちを見ている。困ったことに、私の身長と頭のそれが農作業中の方々の注目を集めてしまっている。
「ねえジュリアナ、私って目立ってない?」
「そうですかね、私は気にしたことないですが」
と、いらない注目を集めながら歩くこと15分、勇者の実家に到着した。
到着すると同時に、ジュリアナは中に向かって走り出した。
「じゃあ、私説明してくる」
「いってらっしゃい。ここで待ってるね」
ジュリアナが家の中に入ってから数分後、玄関からジュリアナが満面の笑みで走って出てきた。
「さあ、みなさん入って」
ジュリアナに連れられて、ジュリアナ実家に入ると、実家の家族総ぞろいで出迎えていただいた。
そしてそのまま客間に案内された。
少し重苦しい空気が流れていたが、先に自己紹介させていただくことにした。多分人間の間ならこれが当たり前の手順だろう。
「初めまして、ウィロウウッドの町の長をやっている、アデレードと申します」
「アデレードの秘書をさせていただきている、イザベラと申します」
「ジュリアナと一緒に冒険者をやっている、魔法使いのエレノアと申します」
「右に同じく、戦士のセリーナです。よろしくお願いいたします。」
「華 です。同じパーティで回復役の僧侶をやっています」
そして、私から用意していた贈り物を渡した
「ここにお邪魔するにあたって、ささやかな贈り物を要しましたので、受け取ってください」
と言いながら、箱に入ったお酒やら高級なお菓子、また高級そうな肉の瓶詰などが入った袋を渡す。
「こんないいものを……ありがとう。」
「私がランドールで、ジュリアナの父親だ。今も農業やっているよ」
「私はリリアンと申します。作ったものを売りに行ったり、加工したりしているわ。兄と妹が居るけど、運よく仕事から戻ってきたら紹介するわ」
軽く互いの紹介が終わったところで、両親は外に行ってしまった。
「行っちゃいましたね」
「そうですね」
「ねえジュリアナ、あの2人はどこに行ったの?」
「牛の世話と野菜の収穫じゃないですかね?」
「ふ~ん、ちょっと行ってくる」
そう言って、私は荷物を客間に置いて、そのまま外に駆け出して行った。両親ともにすぐそこの小屋で仕事をしていたので、すぐに見つけることができた。
「手伝いますよ」
「いやいや、お客さんに仕事はさせられないよ」
「私、畑仕事には覚えがありまして、今でも小さい畑は持っています」
「牛は?」
「2頭買っています。どちらも荷車引っ張る目的ですが」
「じゃあ、牛の世話頼んでもいいかい?」
「もちろんです」
そう言うと、ランドールは畑の方に行ってしまった。信用してくれているのかな?
とりあえず、牛の世話をすることにする。まず牛を策の中から出して、その間に作の中の掃除をする。結構古い藁とか糞とか土が溜まっているので、シャベルを使って気合で外の堆肥に積む。これを1時間。
そうしたら、中をきれいにして、綺麗な土の上に新しい藁を敷き詰める。
最後に、牛を入れれば完了。久しぶりにやったが、あまり腕は衰えていないようだ。
仕事が終わり、スキルで出した水を畑の上でかぶり、汚れを落とす。
家に戻ると、お母さんがジュリアナ、華さんと3人で料理をしていた。
はじき出されたエレノアとイザベラに効いてみると、
「華さんって意外と料理の腕がいいというか、家事力が高いようで、私たちの仕事全部取られちゃいました」
「彼女は修道院出身で、実家も教会でしょう?その辺の手際はいいよね」
悔しそうな顔をしているが、なだめながら休憩していると、料理が準備できたようだ。恐らく肉の入ったスープか何かだろう。丁度同じくらいに、お父さんも帰ってきた。
私も手伝いつつ、テーブルの準備をして、早々に夕飯の準備をした。丁度良い機会なので、ジュリアナ父を呼びに行く。
「ランドール様、いやお父さん、準備ができましたよ」
「ああ、今行くよ」
ランドールさんと一緒に行った食卓は、豪華な食事とは程遠いが、体と心が温まるようなそんな料理と、人の精神を潤すのに丁度いい程度の葡萄酒や弱めの蒸留酒も並んだ暖かいテーブルが準備されていた。
「では、皆さんそろいましたので、いただきましょう」
皆が料理を美味しそうに頂いている中、ジュリアナの両親は複雑そうな表情をしていた。
私も気になっているが、後でそれぞれの話を聞きてみることにした。
「では、片付けやりますよ。お母さんはソファーでくつろいでいてください」
「いいのよ、アデレードさんもエレノアさんもお客さんなんだから」
「では3人でやりましょう」
「そうしましょう」
「では、私アデレードがテーブルと周辺の片づけをするので、エレノアが食器の洗浄収納をお願いしします」
「了解しました。」
「で、リリアンさんには、我々の片づけの指示をお願いします」
「指示・・・・・・ですか?それだけでいいのですか」
「全く問題いありません。やっていただくことで、元のきれいな状態を維持することができるのです」
「わかりました。お願いします」
この采配のおかげなのか、もしく各メンバーの能力の高さか、もしくはリリアンさんの支持が良かったからなのか、片づけは30分程しかかからなかった。」
「終わりましたね……皆さんどうされますか?」
「私は。いつも通り魔法の鍛錬をやってから寝る予定です。そういうアデレードはどうなんですか?」
「わたしは、終わっていない書類の処理かな」
「母上様はどうされます?」
「では、お茶でも頂こうかしら」
私はお茶を入れながら、次の行動を少し考えていた。特に思いつかないため、
夕食後に、そのまま仕事しようと準備していると、ウイスキーの瓶とグラスを持った、ジュリアナの父に呼び止められた。
「どうかされましたか?」
「娘のことについて聞きたくてな」
「彼女の最近の成果ですか?ええ、娘さんはよくやっています。最近は鉱山に潜って鉱石取りに行ってもらったり、ダンジョンにも一人で潜れるくらいには強くなりました」
「そうか……それは良かった。これなら魔王を倒して、幸せな生活をできる日も近いな」
私は少し戸惑いながらも、気づくと回答していた
「そうですね。きっとそうなると思っています。その時は、家でも建ててあげるつもりです」
私はテーブルの上に置いていたウイスキーが入ったグラスに手を伸ばし、半分ほど体に取り込んだ。
「君は本当に私の娘を気にかけているんだね」
「それはもちろん。彼女は私にとっても大切な存在です。命に代えても守りますよ」
「約束するかい?してくれるなら娘をお願いしたい」
「ええ、もちろんです。」
「それを聞いて安心したよ。そしてさびしくなるねぇ」
「何故寂しくなるのですか?」
正直、ランドールが今よりも寂しくなる理由が全く分からなかった。まだ2人いるし、我々も別に敵対するつもりはない。なのになぜ……
「兄と妹の方は、ここ最近都会に出てしまってね、戻ってくることが無くなってしまったのだよ。でもウイロウウッドなら、私の娘は帰ってくる気がしていてね」
ここでグラスに氷とウイスキーを入れ、ランドールに手渡す。
「本人の意思なのでなんとも言い難いですが、親の顔を見にに行きたいといえば、直ぐにでも行ける環境は準備します。今回と同じような形かもしれませんが」
「そうか……ありがとう」
言葉を吐き終わると同時に、ウイスキーを軽く飲んで、不安を消毒仕様としているのだろう。
そして御父上の表情を見ると、不安を抱えた表情から、荷物を下してほっとしたような表情に変わっていた。
「もし、私が彼女、いえジュリアナと誓いの契りを交わすことになったら、どうでしょうか?」
「ジュリアナが良いと言えばいいよ。」
「もし私が魔族であったとしてもですか?」
「ジュリアナが良いと言えばいい。これはジュリアナ自身が決めるべき事項だ。そして私はそれを尊重する。ただ、定期的に帰省できるようにはしてやってくれ」
「安心してください、これまで以上に顔も出しますし、子供ができたら真っ先に会わせに伺います」
「なんか、良くできた婿さん貰うような気分になるなぁ。うちの娘なんかで良いのかい?」
「もちろんです。あんなによくできた女性はいません」
「そんなに気に入ってもらえたならこちらとしても嬉しいよ。死ぬまで大事にしてやってくれ」
父上はそういうと、グラスに残ったウイスキーを飲み干し、自分の部屋に帰っていった
私はためていた仕事の処理に戻り、深夜まで淡々と仕事の処理をした。そして、たまたま一人で寝ていた勇者の寝床に忍び込んだ。
小声で、勇者に今日の会話の結果を漏らすことにする
「ねえ、ジュリアナ、今日の私とランドールの会話聞いてた?」
「いいえ、何かあったのですか?アデレード?」
「いえ、私と貴方の関係について、お父上様は認めてくれるようですよ。
更には、年に何度でも帰省しても良いよとまでおっしゃってましたよ。ジュリアナ、あなたは愛されていますね」
「ええ、3兄弟の中で一番に良くできた娘ですからね」
「私、ジュリアナはすごいと思う。この年で私と同じように渡り合ってきたのはすごいし、社会の仕組みも学んでいっているのも素晴らしいと思う。」
「ありがとう。お父さんと何かあったの?」
「お父さんは素晴らしい方だった。それでも私の街に残りたいなら、教えてね」
「わかりました。ありがとう。アデレード」
私がジュリアナのいい所を上げている最中に、彼女は寝てしまったようだ。私も寝ることとする。
「私は、ジュリアナと一緒に住みたい」と言えたら楽だったのかもしれないが、今は言わないことにする。
親御さんからしたら、稼ぎも良くて強くて浮気しない上に性格も問題なし……そんな女性を娘が連れて帰ってきて、同居も考えていると言ったらどうするのでしょうか?私が親なら、この人と結婚したいと言われたら、喜んでセミダブルベッドを用意します。
次回は、勇者実家での日常回にします。畑仕事+市場での買い物と、夕飯とお風呂回にしたいと思っていますが・……




