勇者の装備を着てみたい魔王様
勇者と魔王様の新しい防具と追加で頼んだ衣装が来るとのことで、いけない考えが頭をよぎる魔王様。
それは、勇者のガーリーで見た目にも可愛らしい防具を魔王様が来たら、私も可愛くなるのではないかと。
今回は、それをやって、衣装を破く魔王様のお話
それは、なんてことはない夏の時期の昼下がり
勇者、凱 (Kai)、蓮 (Lián)、あと魔王で訓練を行い、最近導入した、勇者の今の装備の性能を見た後の話。
最初に口を開いたのは勇者だった。
「前の武器、後は防具と比較しても、動きやすいうえに攻撃力が3段くらい格上に上がった気がする。」
凱 (Kai)と蓮 (Lián)は口をそろえてこんなことを言っていた
「確かに前よりも俊敏性が高く、今の私たちで相手にするにはついていくだけでも結構大変。
そしてそれ以上に攻撃が強く、正確性と攻撃力、あとは攻撃までの時間の短さがすごくよくなった。」
「魔王である私もほぼ同意見である。ここに切れ味鋭い魔術が加われば、基本的に向かうところ怖いものなしの冒険者になれるはず」
それを聞いた勇者は、こんな賛辞を送っていた
「皆さんのおかげで、このような素晴らしい装備を支給していただけました。ありがとうございます。今後も、皆さんのお力になれるように精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。」
何故だろう……私の目に涙が……良いことのはずで、私も心の中から喜んでいる。なのに、涙が出てくる。
「魔王様、大丈夫でしょうか?」
部下2人と、勇者ジュリアナが私の顔を覗き込んできた。
「ああ、嬉しさのあまり涙が出てきてしまって……大丈夫だ」
「仕事にしか興味がなさそうな魔王様も興奮して泣いたりするんですね。意外でした」
「蓮……別に私は仕事にしか興味がないわけではない」
「魔王様のことだから、せっかく育てた勇者が帰ったら困るとか思っていたのでは?」
「今ジュリアナが自分の故郷に帰るとなったら寂しいのは確かだが、その時は笑顔で送り出すよ」
「魔王のことだから、てっきり勇者に首輪をつけて奴隷にでもするのかと思ってた」
「凱……私にそういった趣味は無い」
勇者に同意を求めようと勇者の方を向くと、勇者は顔を真っ赤にして固まっていた。流石に途中からの会話は、また初心な勇者にはキツい話であったか……センシティブな話をするときは気を付けよう。
「ほらお前ら、初心な勇者が固まっているから、今日はこれでお開き。」
「「ありがとうございました。」」
異様に世間に擦れた凱 (Kai)と蓮 (Lián)はさっさと帰らせて、私はここで固まっている勇者を元に戻す作業をすることにする。まずは……お姫様抱っこして、最上階にある私の執務室に持っていく。普段人が使わない、裏の階段を使えば誰かに会う機会はないので、その階段を使って一気に上がる。
次に、部屋に入ったら、勇者を私の仮眠室のベッドに寝かせる。その後のことは……仕事をしながら考える。
この後は、いくつか打ち合わせが入っている。警備隊の隊長とか、総務の課長とか、歳入課の課長とか……これらの打ち合わせをやった後に何か対応を取ることにする。
結局1時間級の打ち合わせ4連発終わった後に自室に戻ってきた魔王様。室内で見かけたのは、下で回収したままかっみしつい放置した、上着がはだけで下着が丸見えになっているジュリアナ様。
「お、おぅ、脱げてるな」
こんなことを言っても起きないので、勇者は相当疲れているようだ。
ここで魔王様の脳内にいけない考えが流れ込む。訓練を含む丸1日着た勇者の衣服を剥いて、試しに自分で来てみる。部屋の中には運がいいことに、秘書のイザベラは居ない。当然勇者の仲間も居ない。今日のこの後は誰も入って来る予定もない。状況は完全にそろっている。そうと決まれば実行に移るのみである
寝ている勇者に近付き、ゆっくりと上着脱がす。どうにかして手を伸ばさせて、そこからゆっくりと上着を脱がせると、上着は簡単に脱がせることができた。スカートについては、もっと簡単で、ベルト緩めて、そのまま足に沿って下すだけ。と、簡単に勇者の衣装はぎ取ることに成功。下着だけになってしまった勇者には、厚めの毛布をかぶせておけば問題ないはず。
そして、勇者から脱がした、女性向な衣装一式。ファンシーな飾りがついていたりと完全な女性向けの衣装。これを魔王様が着るのが問題になるわけですが、入るでしょうか?
身長差が2'6"あり、体重差は200lbsと、何もかも合わないが、魔王様の魔術で大きさは合わせることができるので、魔術グロウス・エンチャントを使用して試しに合わせてみる。
結果としては、縦と横と厚さはそれっぽくなったが、体型に追従しないので、胸の辺りはちょっときつめになってしまった。スカートの方は、丈も合わせたので問題なく着れそうである。
これを着て、凱 (Kai)と蓮 (Lián)に見せびらかしに行こうと考えた魔王様。勇者の装備も拝借し、2階の警備隊の事務所にお邪魔しに行くことにした。扉の隙間から覗くと、凱 (Kai)と蓮 (Lián)はまだいるようなので、入っていくこととする。
「ねえ、この衣装と装備、どう思う?」
この雑な質問に対し、凱と蓮の反応は意外なものだった
「まあ、悪くはないと思う」
蓮は想像通り冷たい反応だった。
「良いじゃないですか!魔王様には素の状態での悪さが足りないので、こっちの可愛らしい方が似合っています。ローブとかスーツ着るのやめて、こっちの方が私は好きです」
意外なことに、凱はすごく褒めてくれていた。
「魔王様、この後凱と1回手合わせお願いできますか」
「ああ、いいよ。凱とやるのは久しぶりだから、武器はいつもの自分の奴で行くよ」
凱から練習試合のお誘いとは珍しい……武器だけいつもの大斧で行って、衣装はこのままでいいか
「じゃあ、準備出来たら魔王様を呼びに行きますね」
「ありがとう。自分の部屋で凱を待ってるから、できたら呼んで」
「了解しました。」
ということで、この衣装のまま自室に戻り、練習試合の準備をする、といっても今回は武器の入れ替えと、いつもの防具を付けるくらいであるので、3分もあれば終わるので大した事は無いのですが、まあ待つことにする。
しかし、この時間になっても勇者はまだ寝ているようだ寝顔も可愛らしいのでいつまでも見ていられる……でもこんなに殺傷力のある爪の付いた手で勇者の顔を撫でるのは気が引ける……それはそれとして、こんなショボい体力でよく冒険者をやっていたものだと感心する。でも私との戦闘の終わりのときは寝ていなかったよね?
そんなこんなしていたところ、凱からよばれたので外の訓練場に行く。
「魔王様、本当に勇者の衣装で来ちゃったのですね」
「可愛いでしょう。今回は破かないように丁寧に扱う予定」
「「では、いざ勝負」」
パワー、魔術と絶対的な速度がある魔王様と、パワーと魔術はそこそこ、俊敏性が優秀な凱との練習試合。ちなみに、今回の魔王様の勝利条件には、勇者の服を破かないが追加されています。
早速凱が短剣もって魔王様に襲い掛かるが、魔王様も普通に斧で防いだ。勇者の服は耐えられるか?
逆に魔王様が大斧にバフをかけ始めた。切れ味アップと電気系の魔術を走らせられるようにしたようだ。そしてそのまま、凱の攻撃防ぎつつ、斧に次の魔術をセットしている。勇者の服が魔王様の魔力に負けて、ところどころ蒸発して色々怪しいことになっています。
一旦魔王様が後ろに引く、引いたところに凱が短剣もって突っ込んでくる。魔王様が斧で薙ぎ払って攻撃をかわす。そして上空で立て直して、再度凱が魔力を纏って突っ込んでくる。魔王様がレディアントフューズを放って、凱を飛ばす。凱が立つ前に魔王様が剣を首元に向ければ勝利だが……やりました。
でも魔王様、勇者の服を袖から裾まで余すことなくボロボロにしてしまいましたので、試合に勝って勝負に負けています。
試合の勝敗は付いたので、凱に手を差し伸べ休憩室まで一緒に行くことにする。、
「凱、ありがとう。久しぶりに全力で戦えてうれしいよ」
「魔王様、私なんてまだまだ魔王様の足元にも及びません」
「そんなことはない。熱くなって、破いてはいけない勇者の服をボロボロにしてしまったから、実質負けだよ」
「魔王様、またどこかでお手合わせ願えますか?」
「もちろん、凱のお願いなら断らないよ」
そんな訓練試合後の他愛のない会話をしながら休憩室で着替えてから、私は自室に移動した。問題は、勇者の服をボロボロにしてしまったこと……秘書のイザベラなら何か良い方法知っているかな?いたら聞いてみよう。とりあえず大きさだけ元に戻して、自室に戻る。
自室に戻ると、甘ーい想定通りイザベラが戻っていた。
「魔王様、お帰りなさい。仕事がまた増えたようですよ」
「イザベラありがとう。急ぎの物から処理する」
「ところでイザベラ、聞きたいことがあるけどいいかな?」
「良いですけど、何の件でしょうか?魔王様」
「実は勇者の服を破いてしまって……これを直せるところは知らない?」
そういって、先ほどまで着ていた勇者の服を差し出す。
「これまた派手にやりましたね魔王様。修理は時間かかりそうですね。普段私が行っているところでよければ出しておきますよ」
「イザベラありがとう。恩に着るよ」
「あと、これを直している間の勇者ちゃんの着るものどうするんです?」
完全に忘れていた……いつまでも仮眠室で寝かしておくわけにはいかないし、だからと言って私のシャツ着て帰ってとは言えない。体格が違いすぎて、色々問題がある。
「それもどうにかお願いできないか?」
「魔王様、私が良く行っているお店を紹介するので、自分で買いに行ってください。」
「わかった、行ってみる」
イザベラから、いつも行っている服屋の情報をもらったので行ってみる。なんと17時には閉まっているのですぐに行かない間に合わない。
部屋を急いで出て、城の門を駆け抜けて、服屋まで飛ぶ。あと15分で閉まってしまう。
どうにか閉店10分前に、教えてもらった服屋に着くことができた。なるほど、店前には看板も展示も何もないので知らなかったのか……。とりあえず入り口に顔を入れて、店主を呼んでみる
「こんにちわ、エリサさんいらっしゃいますか」
「はーい、どなたですか?」
中から店主と思わしき人の声がした。よかったまだ営業しているようだ。
「イザベラさんからお勧めされてきました。アデレードと申します」
「イザベラ・・・・・・ああ、魔王さんの秘書をしておられる方の。ということは魔王城の警備の方?それとも事務方の方?」
「いえ、魔王本人です」
「あら・・・・・・とりあえず入られて」
どうも店主も困惑しているようで、店の中に案内されてしまった。角まで入れればほぼ9ftなデカい何かが店の外に飛び出している状況は興味を惹いてしまい良くないのだろう。
「で、魔王さん。本日はどういったご用件で」
「エリサ殿に修復を依頼したい衣装がありまして、そのために本日参った次第です」
そういって、私は袋の中に入れていた、やらかしてしまった勇者の結構可愛らしい戦闘服をカウンターに出す。
「これの修復……ですか?」
そりゃ無理もない。無茶をして、首元は焼けていて、袖口は無理に力でねじ伏せたから裂けてボロボロ。これを修復するなんてふつうはやらない。
「やはり……できないですよね」
私はほぼできないと思っていた。新しいのを買えば許してくれるだろうか……そんなことを考えていた。しかし、その回答は私の想像のはるか上を飛んで行った。
「2日間もあれば元に戻します。」
「マジで!」
「本当です」
「費用は如何程に」
「やってみないと分かりませんが……」
財布から、大きいほうの銀貨十数枚を出して、カウンターに置く
「これで足りますかね、エリサ様?」
「これだけあれば、形を戻すのは勿論、ボタンとかの細かい装飾品も在庫にある中で一番いいやつに変える余裕もあります」
「エリサ様、ではこれでお願いします」
「魔王様、いやアデレード様。あなたの大切な方の衣装、預かって修復します。」
「ありがとうございます。3日後でいいですか?」
「2日後の夕方に、魔王城に伺うので、その際にお渡しします」
「ありがとうございます。もう1点お願いがありまして、同じ大きさで町中歩くのにちょうど良い服が在庫でないですかね……」
「こんなのでよければありますが、親しくない方にはちょっと進めにくいのですが」
そういって、エリサが持ってきたのは、装飾がたくさんついた黒いドレスで、レースなどは勿論、あちこちに宝石などもちりばめられている、なんというか……完全に親しい間柄でないと着せられないレベルの物となっていた。これで貴族のパーティに御呼ばれしても安心……といった感じの見た目である。
でもこれしかないので、これを買うしかないのである。一番大事なことととしては、私の好みに刺さったことである。
「これがいい。これで足りるかな」
と言って、追加で大きい銀貨を数枚出す。
「お買い上げありがとうございます。こちらはすぐに持って帰られますよね」
「そのつもり」
「では包みますね」
ここで初めて店主の顔をはっきりと見たが、店主のエリサさんは、背の高い猫耳の付いた美女だった。顔の各部品が小さく整ってて、声年と仕草で想像していた、丸くて可愛らしいとは真逆だった。
「ではお気をつけて」
持って帰る服を渡され、店を出ようとすると、背の高い猫耳の付いた美女がカウンターの後ろで手を振っていた。こういったおもてなしを受けるも悪くない。
安堵と、勇者の衣装をもって急いで城に戻る。
自室の仮眠室に戻ると、勇者は起きて大騒ぎしていた。
「あ、魔王様、私の服知りません?起きたら無くなってて」
「申し訳ない。誤って汚してしまったから、クリーニングに出してる。代わりの服は用意したからそれ着てくれ」
勇者にさっき買った服を渡すと、勇者はすぐに着替えた。いや下着からだから、着たという表現が正しい気がする。
「魔王様、どうでしょう?」
勇者は似合っているかどうか確証を持っていないような表情をしているが、普段とは違う見た目なので
新鮮で好きである。特に20%位強く見えるのが好きである。
「よく似合ってると思う。ジュリアナ」
「やった。魔王様に褒めてもらえた」
ここで、頭の中に一つ、悪い考えがひらめいた
「ねえジュリアナ、今からディナー行かない?」
「私なんかが魔王様とディナーなんて……失礼します」
そう言うと、勇者は置いていた荷物をもって帰ってしまった。いたずらは失敗に終わってしまった。
自席に戻って、貯まった仕事を片付けてから帰るかな。今日は仕事がはかどりそうだ。
もう一回破きたい。できれば自宅で破いて彼シャツ状態にしたい。




