6. 提案
男は俺の方を見て行った。
「お前を助けたことに関しては気にするなお前がウチの店の前で倒れてて営業妨害になっていたから簡単に看病しただけだ」
部屋を出ていくジェイダが「お父さん恥ずかしがっちゃって」とか小声で言うのが耳の片隅で聞こえた。
多分本当は営業妨害をしてたからとかではなく純粋に優しさから見ず知らずの俺を助けてくれたのだろう。
俺は改めて心の中で大きく感謝した。
「どうやらお互いに多くの質問があるようだがまずは自己紹介からだな。俺はここのパン屋の店主マークだ。そして、さっきまで俺と一緒にお前の看病を手伝ってたのが娘のジェイダだそっちは?」
急に言われても何を言えばいいか分からなかったが一応言った。
「俺の名前は虚賀 翔馬、えっと、前象高校の二年で...学生?です」
「コウコウの二ネンセイ?んなギルドは知らねぇな。お前はどっか遠くから来たのか?」
いや、ギルドではないんだが...
てかギルドってなんだ?総合組合の名前か?ってヨーロッパでは高校がないのか?いやいや、そもそも日本話せるのに高校を知らないのか?
俺がまるではてなを浮かべたような表情をして色々考てたらマークさんが少し考え込んでいた。
「お前、その格好と世間を知らなさ...、まさかな...」
「どうしたんですか?」
「ここで働くつもりはないか?」
急に言われたことに俺は正直驚いた。
だが、今の置かれてる状況が分からない中悪くない提案ではあるかもしれない
なぜ急にそんなことを言い出したのかは分からない。
しかしながら、治療を施してくれた上にお世話になるのは申し訳ない気が...
「あの嬉しい提案なのですが...」
「ポーション代」
「はへ?」
ポーション代?そういえば、なんか飲まされたような。
「一般市民にとってはポーションとは少量でも高価なもんなんだ。お前の治療の際にそれを使った。その分だけでも働け」
「えっ、あの...」
「キョガと言ったか?ふっ、残念だがお前に拒否権はない。ここで働け」...
こうして有難く、半強制的にパン屋で働くことになったのである。