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第1話 転生、そして性転換

『セイバーガール・ダーティーリッパー』、通称剣むす。プレイヤーは指導者として女剣士を志す美少女たちを指導し、チームを編成して他のプレイヤーと勝負するゲームだ。

配信当時はアニメがやっていたこともあり世界的な人気を誇り、瞬く間に2000万ダウンロードを突破。当時の記録としてはシミュレーションゲーム最高だった。

アニメの円盤は2028年最多を記録し、劇中歌のCDもビルボードチャートトップにランクインした。

しかし、新規キャラ追加やイベ限衣装などで3年は人気を食いつないだが、年々人気が減少、7周年を迎えた今年は映画をやるとかやらないとかでまた盛り上がってるみたいだが。

そして今、俺、星川友城(ほしかわともき)は人生でも有数の喜びを噛み締めている。7周年記念で新衣装が出た、プロジェクトのティザーPVを見た時から愛している推し、(あずま)テティス、テティス様のフィギュアをクレーンゲームたった7回で手に入れたのだ。

俺にテティス様のことを語らせれば恐ろしいことになる。薄水色のサイドテールの髪にマリンブルーの瞳、元気で常に笑顔で、指導者が他の生徒を指導してると拗ねて、何事にも一生懸命で…。

きっと三日三晩話し続けられるだろう。そんなテティス様の聖なる彫刻ただのフィギュアだけどを俺は今抱えている。

家に帰ったら神聖な儀式をやってから開封、そして祭壇に飾りつけて祭る。ああ、しばらく一晩中崇めるあまり寝れないかもしれないな…。


そんなことを考えていた俺の前で、奇跡が起こった。いや、見間違いかもしれない。

そんなことはなかった。見れば見るほどそう思えた。

そこには、テティス様本人にしか見えない、別人には見えない少女がいた。たくさんの荷物を両手に掲げ、頑張って歩くその姿は本当にテティス様その人だった。

ただ、その出会いが俺の運命を狂わせた。

その少女は、足元も見えない状態で階段を降りようとし、1段目で踏み外した。

そうやって横着やってのけようとして失敗するところもテティス様らしい…。なんて考えてる場合じゃない!!

俺はテティス様の彫刻を一旦地に下ろし、少女を助けようと3段下の階段に回り込み、受け止めることに成功した、が…。

少女の足が俺の股間に直撃、俺は少女を抱きしめたままその長い階段を転げていった。痛かった。それに、なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないのか、と思った。

それでも痛みに悶えず、苦痛に耐えられているのはこの少女がテティス様に似ているからだろうか。

そして遂に、俺は首に違和感を覚えた後、意識が無くなった。

次に意識が戻った時には、そこは何もないただひたすらの暗闇で、音も一切しない。

ああ、死んだのか。そう直観することしかできなかった。

もっとテティス様を愛していたかった。俺が頑張って働けたのはテティス様のおかげだった。どんな嫌なことからも逃げなかったのも、テティス様のおかげだった。

あの高校に入った後、生きている意味が分からなくなっていた俺に生きる希望をくれたのもテティス様だった。

俺は何十回も何百回も、テティス様に救われた。きっと、どれだけ感謝しても足りない。従者になって、恩返しにテティス様を救いたいとさえ思った。それなのに…。きっと、もう俺には何もない。死んでるって分かってるのに意識があるから辛い。

神様、どうか俺にチャンスをください。


「いいだろう。その願い、叶えてあげよう」


その時、聞き覚えのある声がした。俺の目の前で光の靄らしきものができ、そこからは見覚えのある神様が出てきた。


「女神ルナータ様!?」

「驚くのも無理はないか。誰だって私が出てくるとは思わないだろうからね」

「なぜ、あ、あなたがここに…?」

「星川友城、剣むすでのユーザーネームは星川パルス、だったかな?」

「まあ、はい、それはそうなんですけど、どうしてそれをあなたが?」

「私はあの世界、あのコンテンツの権化だから全プレイヤーの情報を持っているから、と答えるべきか。だから君の推しがテティスだったことも知ってる。あの娘は人気が高いよ、相変わらず。それで、テティスの従者、というか大親友になるように転生したいんだね?」

「まあ、それはそうですけど、カレセって指導者以外の男子禁制じゃなかったですか?」

「そこは任せておいて。自我は3歳で戻るけど、それまではお楽しみだね」

「まあ、何であれよろしくお願いします」

「それじゃあ、良い来世を~」

「良い旅を~、のニュアンスで言われても困るな…。それと、世界線はアニメですか?ゲームですか?」

「それも自我が戻ってからのお楽しみだ。それじゃあ」

「あっ、ちょ…」


まだまだ質問したいことはあったが、抵抗する間もなく俺は光の中に包まれていった。



俺が目を覚ますと、既に二本足立ちができていた。


「あー、あー」


試しに声を出してみたが、どうやらもう喋れる状態らしい。

ん?待てよ?今、3歳児にしても声が高かったような…。

俺は恐る恐る鏡の前に立った。予想と覚悟はしていたが、結局叫んでしまった。


「性転換しとるやんけェーー!?」


続く

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