表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アタシは二代目大地の魔女だ!  作者: アイン
序章 未来へ
1/6

プロローグ

〈十七年前とある平原〉

「お前ら気張れよ!絶対にここを通らせるな!」

「「「オォォォー‼︎」」」

男は魔獣と対峙しながら周りにいる騎士たちに声を掛けると、騎士たちも魔物と戦いながら応える。

「おい!避難は後どれくらいかかる!」

「後一時間くらいかと!」

「マジか、じゃあお前ら三十分持ち堪えろ!その後は、俺がなんとかしてやる!」

男は魔獣を切り倒すと、そう言いながら別の魔獣に切りかかる。その姿は、国最強の名に相応しく、まるで闘神の如き強さである。


「さすがは隊長だな。俺たちと同じ平民とは思えないくらい強いな」

「俺たちは、姫さんの援護がないと、何回死んでるか分からないってのに」

そう言って、騎士たちは後ろを振り返る。そこには、祈る様に手を合わす銀髪の美しい少女がいた。一人の騎士が魔物の攻撃を受け、腕から血を流す。

しかし、傷口が光ると瞬く間に傷が塞がり始める。

 

三十分経つと、三千近くいた魔物の数は、残り百近くにまで減らしていた。

「お前らよく頑張った。残りは俺に任せてゆっくり休んどけ」

一人も死者は出なかったが、疲れ切っていた騎士たちは、男の言葉で一斉に座り込んだ。しかし、


「隊長!後ろの方から、更に千近い魔物の群れが。そ、それに、ドラゴンが…」

「嘘だろ!もう体力残ってねーよ!」

新たな群れ、ドラゴンの出現に騎士たちは、絶望の声を上げる。男は考えるかの様に目を閉じ、そして決断する。


「よし。お前ら、やっぱり残りのやつは任せる。俺は、後から来たやつの相手をする」

「いやっいくら隊長でも、あの数とドラゴンは無理ですって!俺たちもいっしょに戦います!」

男はそう言いながら準備体操をする。

騎士たちは、男の言葉に驚き無理だと説得しようとするも、

「あー、さすがにあの数とドラゴンが相手だと、お前ら無駄死にしちまうから駄目だ。それに」


笑いながら言われてしまい、その言い方はどうかと反論しようにも、男の顔が真剣そのものに変わり、口を閉ざしてしまう。

「お前らがこっちに来ると、誰が姫さん守るんだ。知ってるだろ、俺が何のために戦ってるのか」


その言葉に騎士たちは、何も言えずにいた。男は後ろを振り返り、

「という訳で、悪いな姫さん。俺ちょっと用事思い出したから離れるわ。」

軽い感じで笑いながら言う。それを聞いた少女も

「それは仕方がないですね。あなたはそういう人ですから」

同じ様に笑い返す。男と少女は数秒見つめあった後、男の方から視線を外し、騎士たちの方を向く。

「それじゃお前ら、あと頼んだぞ」


そう言って男は、魔物の群れがいる方向に走り出した。後ろから騎士たちの止める声が聞こえてくるが、

「なっ隊長!無茶ですって!」

「止まって下さい、隊長!」

「あっ、ちょっと!姫さん!」

…少し不安な声も聞こえてくるが、男はどんどんと魔物を切りながら進んでいく。


そしてドラゴンの所まで行き、

「人間なめんじゃねーぞ!トカゲ野郎!」

そう言いながら切り掛かるも、死角から尾で弾かれる。とっさにガードするも、頭から血を流してしまう。

「大丈夫ですかー?」

すると、呑気な声が聞こえ、頭から流れていた血が止まった。嫌な予感がして後ろを振り返る。


「何でいんだよ、姫さん!待っとけって言っただろ!」

そこには、もっと後ろにいるはずの少女が、笑いながら手を振ってくる。

「そんなこと言ってないですよ。用事があると言われただけです」

「……言ってなかったな…。けど!だいたい状況見たら分かるだろーが!」

男は少女にそう言われて、一瞬納得してしまうも、すかさず反論する。

「そうですね。でも、私がサポートすれば、その用事も早く終わるかなーと思いまして」

「けどな…っ⁉︎」

いまだ、軽い感じの少女に何か言いたげにするも、

「守る自信がないんですか?」

「……覚えとけよ、お前…」 

男は、挑発する様に言う少女に、眉をピクリとし、挑発に乗る。

「さっさとトカゲ倒して帰るぞ!」

「はい!」

そう言って、男はトカゲに向かい、少女は手を合わせた。


三十分後、残りの魔物を倒した騎士たちは、男と少女のいる所に向かうも、そこには、あちこち切り傷まみれのドラゴンやバラバラな魔物、何故か地面に串刺しにされた魔物の死体しかなく、二人の姿はどこにもなかった。


国に愛された姫と、民の英雄だった男が行方不明になったこの戦いを、後に平原の名前から【ハルストフの悲劇】と呼ばれる様になり、それから十七年間これ以上の魔物の大量発生は起きなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ