99.テンプレ的に、やらかしを誤魔化す俺。
シンジ君、いろいろ誤魔化そうとするの巻。
いや、さすがに無理でしょ。
「ちょっとアンリさん、あんまり顔色良くないよ?」
「……昨日あれだけ脅しておいて、それはないですよ」
アンリが徹夜明けの様に目の下にクマを作っている。それでもイケメンはイケメン。ちくせう。
「いやいや、人聞きの悪い。脅かしてなんかいないでしょ」
「シンジさんのイヤな予感とか、当たるしかないじゃないですか。しかも一番いい装備とか」
アイリスまでアンリに加勢してきた。
「まあ、昔から言うじゃない。備えあればうれしいなって」
「念には念を、という意味ですか?」
どうやら、似たような言葉があるらしい。嬉しいかどうかは知らないが。
「で、どういう流れで魔の森まで行くの?」
シンジは、話題を転換することにした。
「ああ、今日はラックブック村まで行き、翌日森に入ります。今回はアイリスが率いる小隊からふた班が担当ですから、アイリスと班長の騎士2名、隊員10名と私ですね。全員騎乗しますので、2日で行けると思います」
馬車ではないから、1日でラックブック村まで行けるのだろう。馬車がいると倍くらい時間が掛かるはずだ。
「俺も騎乗して良いの?」
「シンジさん馬乗れますよね? 隊の馬を貸しますよ」
「……乗れるけど、飛んだ方が早い気がする」
「隊員が驚くからやめてください」
アンリに止められた。
「あ、リルは連れて行って良い?」
シンジがアンリに尋ねる。一応、残すのも酷なので、連れて行ってやらねばなるまい。
「子犬を連れても大丈夫なんですか? 面倒ならメイドたちに見させますよ?」
シンジはちょっと考えるも、やはり連れていくことにする。もともと魔の森にいたのだから、何かの役に立ちそうな気がする。カンだけど。
「ああ、俺の方で面倒見るからダイジョーブ。馬に乗るときには、懐に入れていくよ」
「では、準備は出来ていますので、早速出発しましょう」
アイリスに促され、シンジたちは席を立った。
◇
「なッ!? 何ですかこれはァ~ッ!!?」
「あ、忘れてた」
ラックブック村の入口には、立派な鉄の門が掲げられていた。今は。
そう、シンジのやらかしである。当の本人であるシンジは、自分のやらかしを今になって思い出した。
「こ、これは……」
アンリや隊員たちも、門扉に近づいてじっくりと見ている。そこへ、騎士たちの接近に気付いたのか、物見塔から声がかかった。
「チェスター騎士隊の方々とお見受けしますが!」
「そうだ! 私は総隊長のアンリ=ランチェストである! 開門を要求するッ!」
塔の上からアンリを見ていた門番が、慌てて降りて開門する。重々しい音とともに開いていく鉄扉。
「あッ! アイリス様ッ!!」
隊員たちの中からアイリスを見つけたのか、ふたりの門番が平伏した。
隊員たちの目が、一斉にアイリスへと注がれた。
「え? え? え? な、何を言って」
うろたえるアイリス。
「ようこそこの村へッ!! お待ち申し上げておりまじだぁッ!!」
年かさの門番が、最後には涙声で喜んでいる。
若い門番が、塔にダッシュで駆け上がり、カン、カカン、カン、カカンと鐘を鳴らし始めた。騎士隊の到着を知らせているのだろう。
騎士隊全員が、唖然としてこの様を見ていた。
「……アイリス、何をしたんだい?」
「な、なな、何もしていませんッ!!」
顔を真っ赤にして否定するアイリス。やったのはシンジである。当のシンジは、横を向いて知らんぷり。
一行が、何とか気を取り直して村の中へと歩を進めると、村長以下村人総出で出迎えられた。……屹立する英雄像の前で。
「これは……アイリスの、像?」
アンリのつぶやきとともに、騎士隊一行が呆然と、剣を掲げる凛々しいアイリスの像を見上げる中、村長が前に進み出る。
「ご領主様ッ! ご来村を、心の底からッ! お待ち申し上げておりましたぁッ!!」
村人が一斉に平伏した。
静まり返る騎士隊の面々。広場に、一陣の風が吹き抜けた。
シンジは、再び横を向いて知らんぷり。口笛まで吹いている。
「……アイリス、いったい何をしたんだい? お兄ちゃんの目を見て、正直に言ってごらん?」
「だからぁッ!! 何もしていませんってばぁッ!!」
アイリスの半泣きの声は、むなしく風に吹き流されていくのだった。
俺も銅像になりたい! という方は、★とブックマークをお願いいたします。(マテ)




