表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/135

98.テンプレ的に、不安を煽る俺。

シンジ君、実験に走りつつ、不安を煽っていくスタイルの巻。

こんなこと言われたら、不安になるよね?


---------------

更新の間が空いてすみません。

まだまだ不安定になりそうです。

この時期は忙しい……!

 木のテントを外し、仙桃茸の生えていた場所を見てみると、土の中で濃い魔素の渦が出来ているのを感じる。


 「仙桃茸は、龍脈が地表に井戸みたいに出るところで、(まれ)に出来るというのは分かっているけど」


 人工的に龍脈井戸を造っても、普通は栽培に成功はしない。したとしても、数十年に1個出来るというレベルだ。その理由も不明とされている。


 だが、この環境では12個も出来ていた。その理由は何か。


 シンジもチュートリアル中に仙桃茸狩りを何度もしたことがある。その時は、土の中にある仙桃茸の香りと魔素を頼りに魔術で探した。が、その時にはこんな魔素の渦は感じていない。


 ただし、今思い返してみれば、一度に複数個発見した時は、確かにその場所には魔素が溜まっていたような気がする。


 ならば、今回土の中で、魔素の渦が出来ていたのは偶然なのか。


 「恐らくは魔素の滞留と滞留、両方起きていることが条件。今回の場合、魔の森の倒木が、ちょうどテント状に交差して魔素を逃がさないだけではなく、自然と空中でも対流が起きる状態になったから、同時に対流と滞留を起こして大量発生に繋がった?」


 これが正解なら、貴重なキノコ栽培が可能になる。


 「実験するしかないよねえ、これは」


 早速、魔素を受け止める森の木の中でも、ご神木に出来そうなくらい立派な太さのものを選ぶ。直径にして1.5mほどもあるだろうか。といっても、そのレベルの木は、そこら中に生えているのが魔の森だ。


 これらの大木は、とにかく固く、普通の斧では歯が立たない。つまり、それだけ魔素を取り込んでいる木だからこそ、地中の龍脈から漏れ出してくる

魔素を受け止め、跳ね返すことが出来るのだ。


 シンジは、氷の剣を抜くと大木の前に立ち、そのまま何の気負いもなく、腰の高さにするりと剣を横に滑らせる。


 「はッ!」


 そのまま地面を蹴り、2mほどの高さに飛び上がる。そこでも剣を一閃、素振りの様に薙いだ。


 すっと音もなく着地したシンジは、そのまま一歩引いて剣を鞘に納めた。さらに、大木に近づくと、右手で軽く押した。すると、それを待っていたように大木が横ににずれて、シンジと反対側に倒れ始める。大木は傾きながら、ちょうど2mほどの長さで、上部分が切り離された。


 結果、シンジの足元には、直系1.5m、長さ2mほどの丸太が転がった。


 「うん、上出来」


 シンジは再び剣を抜くと、包丁で豆腐に切れ目を入れるように、水平に何度も薙いでいく。そのたびに、硬いはずの大木は、板状に斬られていく。


 もうここまでくると、剣の技量という問題ではない。剣そのものの性能がモノを言う。


 当然シンジが使っている氷の剣は、シンジが打った剣の中でも傑作のひとつである。だからこその光景なのだ。


 出来上がった木の板を、今度は対角線上に斬り落として、大きな直角三角形をいくつも作り上げた。


 「構造的には、枡づくりが良いかな」


 シンジはつぶやきながら、アイテムボックスからナイフを取り出し、板の側面に枡のようなほぞをいくつか作り、組み立てが可能なようにする。


 これを木槌を使いながらひとつずつ組み上げ、直径2mほどの円錐の様な形に仕上げていく。板は組み上がり、角度の急な陣笠というか、とんきょ帽や角度の緩い三角コーンのような形をしたものが出来上がる。


 「えーっと、あの辺に作ってみるか」


 シンジは、出来上がった笠を両手で軽々と抱え、自然のテントから100mほど離れた場所に移動した。後ろから興味津々とばかりにトコトコ付いてくるリルが楽しい。


 笠を下ろすと、地面に手を当て龍脈を探る。見込み通り、分岐した細い龍脈を見つけると、地面に穴を開けて魔素を誘導する。ある程度まで地表近くに魔素が上がってきたのを確認したら、仙桃茸が出来ていた場所の土を少量持ってきて、掘り出した土と混ぜ、地表にかぶせてその上に笠を置いた。キノコ類なら、菌糸が無いと生えてこないはずだから、これで良いだろう。


 「これで、さっきの場所と同じような状況になったはずだけど……」


 魔素の流れを探ってみると、途中までつながった穴に、上手い事魔素が上がってきて、土に染み込みながら溜まっていくのが分かる。さらに地表まで

染み出た魔素が、木の笠にぶつかって再び地面に流れ出したのを感じた。


 「よしよし。もしこれが上手くいけば」


 仙桃茸の栽培という、古今誰もやったことが無い快挙になる、はずだ。たぶん。


 「んじゃリル、一緒に戻ろうか」


 「あんッ!」


 シンジは、リルを胸に抱えて領都まで一気に跳んだ。




 ◇




 「あ、シンジさん、どこへ行ってらしたのですか?」


 シンジが男爵邸まで戻ると、アンリとアイリスも帰って来ていたようだ。


 「その、胸の犬は……?」


 リルは、シンジの胸の中ですっかり寝入っている。何とも度胸のある犬、もといフェンリルだ。


 「拾ってきちゃった♪ ……だめ?」


 「え? イヤあの、もうすぐシンジさんの屋敷も決まりますし、しばらくはこの屋敷で世話しますので、問題はありませんが」


 アイリスがシンジの視線を受けて、ちょっと動揺したように早口で答えた。


 「うん、口で言ってくれれば理解できる子だから、躾とかは問題ないよ。トイレだけ作って欲しいかな」


 子供でもフェンリルなのだから、そのくらいの知能は問題なく持っている。


 「それよりも、カードの方はどうだったの?」


 シンジの問いに、アンリはニヤリと笑い、アイリスは不満げに唇を突き出した。


 「おや、対照的な反応」


 「アイリスは、剣術の段数が思ったほど高くなかったので不機嫌なんですよ」


 アンリが笑いながらシンジに教える。


 「兄上は良い段数だったから、そんなに余裕なのです!」


 「へえ、段数聞いても良い?」


 「ええ、私が五段で」


 「私が……三段でした」


 アイリスの段数が三段というのは、かなり高い方だろう。この年齢でその段数は、天才に近い。むしろ、アンリが五段というのが異常なのである。


 「シンジさんは?」


 「ん? 俺? 四段だよ、剣術」


 「ウソですね」


 きっぱりとアンリが否定してきた。


 「私とあれだけ打ち合える人が、四段のはずがないでしょう。騎士隊にも四段の者がひとりだけいましたが、シンジさんより弱いですよ」


 なるほど、剣の打ち合いをしていたから、見抜かれてしまったか。だが、カードの偽造までは分かるまい。


 「ちゃぁんとカードも四段だよ。ほれほれ」


 シンジは、偽造カードの技術欄に剣術の項だけを表示して、アンリにこっそりと見せた。


 「あ、本当ですね……おかしいなあ」


 アンリがしきりに首を傾げ、不思議がっている。まあ、このまま誤魔化すのが吉だろう。


 「ほら、まだ経験面とかが足りてないんじゃない? アイリスさんも三段にしては強いし」


 「……まあ、そうですね。経験が積めれば、一気に段数が上がるかもしれませんね」


 どうやら、上手く誤魔化せたようだ。


 「ところでアンリさん、おふたりの明日のご予定は?」


 シンジは、誤魔化しついでに本題へ入ることにした。


 「明日は、ちょうどアイリスの部隊と一緒に魔の森の巡回ですね。だよな?」


 アンリが確認すると、アイリスがこくこくと肯く。


 「そーなんだ。じゃあ、どこかで会うかもしれないねー」


 「シンジさんも魔の森ですか?」


 「うんそう」


 「……またとんでもないもの採取する気ですか?」


 「採取はしないよー。(……栽培はするけど)」ボソ


 「何か言いました?」


 「何でもないよー」


 アンリは今一つ腑に落ちない顔をしたが、流すことにしたようだ。


 「採取しないのなら、何で魔の森に?」


 「うーん、ちょっと嫌な予感が」


 アンリが激しくイヤそうな顔をする。


 「え? シンジさんのイヤな予感とか、ものすごく不安になるんですけど……?」


 アイリスが、やはりこくこくと肯く。


 「大丈夫。まーかせて。そんなに気になるんだったら、俺も一緒に行くからね」


 「え? そちらの方が不穏なんですが?」


 「ふたりとも、明日は一番いい装備を頼むねー」


 「イヤちょっと本気で不穏なんですけどッ!?」


 ものすごく不安そうなふたりを残し、部屋に戻るシンジだった。ひどい。

よろしければ、★とブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ