98.テンプレ的に、不安を煽る俺。
シンジ君、実験に走りつつ、不安を煽っていくスタイルの巻。
こんなこと言われたら、不安になるよね?
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更新の間が空いてすみません。
まだまだ不安定になりそうです。
この時期は忙しい……!
木のテントを外し、仙桃茸の生えていた場所を見てみると、土の中で濃い魔素の渦が出来ているのを感じる。
「仙桃茸は、龍脈が地表に井戸みたいに出るところで、希に出来るというのは分かっているけど」
人工的に龍脈井戸を造っても、普通は栽培に成功はしない。したとしても、数十年に1個出来るというレベルだ。その理由も不明とされている。
だが、この環境では12個も出来ていた。その理由は何か。
シンジもチュートリアル中に仙桃茸狩りを何度もしたことがある。その時は、土の中にある仙桃茸の香りと魔素を頼りに魔術で探した。が、その時にはこんな魔素の渦は感じていない。
ただし、今思い返してみれば、一度に複数個発見した時は、確かにその場所には魔素が溜まっていたような気がする。
ならば、今回土の中で、魔素の渦が出来ていたのは偶然なのか。
「恐らくは魔素の滞留と滞留、両方起きていることが条件。今回の場合、魔の森の倒木が、ちょうどテント状に交差して魔素を逃がさないだけではなく、自然と空中でも対流が起きる状態になったから、同時に対流と滞留を起こして大量発生に繋がった?」
これが正解なら、貴重なキノコ栽培が可能になる。
「実験するしかないよねえ、これは」
早速、魔素を受け止める森の木の中でも、ご神木に出来そうなくらい立派な太さのものを選ぶ。直径にして1.5mほどもあるだろうか。といっても、そのレベルの木は、そこら中に生えているのが魔の森だ。
これらの大木は、とにかく固く、普通の斧では歯が立たない。つまり、それだけ魔素を取り込んでいる木だからこそ、地中の龍脈から漏れ出してくる
魔素を受け止め、跳ね返すことが出来るのだ。
シンジは、氷の剣を抜くと大木の前に立ち、そのまま何の気負いもなく、腰の高さにするりと剣を横に滑らせる。
「はッ!」
そのまま地面を蹴り、2mほどの高さに飛び上がる。そこでも剣を一閃、素振りの様に薙いだ。
すっと音もなく着地したシンジは、そのまま一歩引いて剣を鞘に納めた。さらに、大木に近づくと、右手で軽く押した。すると、それを待っていたように大木が横ににずれて、シンジと反対側に倒れ始める。大木は傾きながら、ちょうど2mほどの長さで、上部分が切り離された。
結果、シンジの足元には、直系1.5m、長さ2mほどの丸太が転がった。
「うん、上出来」
シンジは再び剣を抜くと、包丁で豆腐に切れ目を入れるように、水平に何度も薙いでいく。そのたびに、硬いはずの大木は、板状に斬られていく。
もうここまでくると、剣の技量という問題ではない。剣そのものの性能がモノを言う。
当然シンジが使っている氷の剣は、シンジが打った剣の中でも傑作のひとつである。だからこその光景なのだ。
出来上がった木の板を、今度は対角線上に斬り落として、大きな直角三角形をいくつも作り上げた。
「構造的には、枡づくりが良いかな」
シンジはつぶやきながら、アイテムボックスからナイフを取り出し、板の側面に枡のようなほぞをいくつか作り、組み立てが可能なようにする。
これを木槌を使いながらひとつずつ組み上げ、直径2mほどの円錐の様な形に仕上げていく。板は組み上がり、角度の急な陣笠というか、とんきょ帽や角度の緩い三角コーンのような形をしたものが出来上がる。
「えーっと、あの辺に作ってみるか」
シンジは、出来上がった笠を両手で軽々と抱え、自然のテントから100mほど離れた場所に移動した。後ろから興味津々とばかりにトコトコ付いてくるリルが楽しい。
笠を下ろすと、地面に手を当て龍脈を探る。見込み通り、分岐した細い龍脈を見つけると、地面に穴を開けて魔素を誘導する。ある程度まで地表近くに魔素が上がってきたのを確認したら、仙桃茸が出来ていた場所の土を少量持ってきて、掘り出した土と混ぜ、地表にかぶせてその上に笠を置いた。キノコ類なら、菌糸が無いと生えてこないはずだから、これで良いだろう。
「これで、さっきの場所と同じような状況になったはずだけど……」
魔素の流れを探ってみると、途中までつながった穴に、上手い事魔素が上がってきて、土に染み込みながら溜まっていくのが分かる。さらに地表まで
染み出た魔素が、木の笠にぶつかって再び地面に流れ出したのを感じた。
「よしよし。もしこれが上手くいけば」
仙桃茸の栽培という、古今誰もやったことが無い快挙になる、はずだ。たぶん。
「んじゃリル、一緒に戻ろうか」
「あんッ!」
シンジは、リルを胸に抱えて領都まで一気に跳んだ。
◇
「あ、シンジさん、どこへ行ってらしたのですか?」
シンジが男爵邸まで戻ると、アンリとアイリスも帰って来ていたようだ。
「その、胸の犬は……?」
リルは、シンジの胸の中ですっかり寝入っている。何とも度胸のある犬、もといフェンリルだ。
「拾ってきちゃった♪ ……だめ?」
「え? イヤあの、もうすぐシンジさんの屋敷も決まりますし、しばらくはこの屋敷で世話しますので、問題はありませんが」
アイリスがシンジの視線を受けて、ちょっと動揺したように早口で答えた。
「うん、口で言ってくれれば理解できる子だから、躾とかは問題ないよ。トイレだけ作って欲しいかな」
子供でもフェンリルなのだから、そのくらいの知能は問題なく持っている。
「それよりも、カードの方はどうだったの?」
シンジの問いに、アンリはニヤリと笑い、アイリスは不満げに唇を突き出した。
「おや、対照的な反応」
「アイリスは、剣術の段数が思ったほど高くなかったので不機嫌なんですよ」
アンリが笑いながらシンジに教える。
「兄上は良い段数だったから、そんなに余裕なのです!」
「へえ、段数聞いても良い?」
「ええ、私が五段で」
「私が……三段でした」
アイリスの段数が三段というのは、かなり高い方だろう。この年齢でその段数は、天才に近い。むしろ、アンリが五段というのが異常なのである。
「シンジさんは?」
「ん? 俺? 四段だよ、剣術」
「ウソですね」
きっぱりとアンリが否定してきた。
「私とあれだけ打ち合える人が、四段のはずがないでしょう。騎士隊にも四段の者がひとりだけいましたが、シンジさんより弱いですよ」
なるほど、剣の打ち合いをしていたから、見抜かれてしまったか。だが、カードの偽造までは分かるまい。
「ちゃぁんとカードも四段だよ。ほれほれ」
シンジは、偽造カードの技術欄に剣術の項だけを表示して、アンリにこっそりと見せた。
「あ、本当ですね……おかしいなあ」
アンリがしきりに首を傾げ、不思議がっている。まあ、このまま誤魔化すのが吉だろう。
「ほら、まだ経験面とかが足りてないんじゃない? アイリスさんも三段にしては強いし」
「……まあ、そうですね。経験が積めれば、一気に段数が上がるかもしれませんね」
どうやら、上手く誤魔化せたようだ。
「ところでアンリさん、おふたりの明日のご予定は?」
シンジは、誤魔化しついでに本題へ入ることにした。
「明日は、ちょうどアイリスの部隊と一緒に魔の森の巡回ですね。だよな?」
アンリが確認すると、アイリスがこくこくと肯く。
「そーなんだ。じゃあ、どこかで会うかもしれないねー」
「シンジさんも魔の森ですか?」
「うんそう」
「……またとんでもないもの採取する気ですか?」
「採取はしないよー。(……栽培はするけど)」ボソ
「何か言いました?」
「何でもないよー」
アンリは今一つ腑に落ちない顔をしたが、流すことにしたようだ。
「採取しないのなら、何で魔の森に?」
「うーん、ちょっと嫌な予感が」
アンリが激しくイヤそうな顔をする。
「え? シンジさんのイヤな予感とか、ものすごく不安になるんですけど……?」
アイリスが、やはりこくこくと肯く。
「大丈夫。まーかせて。そんなに気になるんだったら、俺も一緒に行くからね」
「え? そちらの方が不穏なんですが?」
「ふたりとも、明日は一番いい装備を頼むねー」
「イヤちょっと本気で不穏なんですけどッ!?」
ものすごく不安そうなふたりを残し、部屋に戻るシンジだった。ひどい。
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