91.テンプレ的に、教会に立ち寄る俺。
シンジ君、教会に寄るの巻。
伯爵領はそれなりに広いので、いくつも小規模な町があります。
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今週は忙しいため、ほとんど更新できないかもしれません。ご容赦を。
テリー準祭司に連れられて、全員で神殿へ向かう。
神殿は、今まで見た村の教会以外の建物では最も小さいもので、テリー準司祭が責任者だった。
「ここの神殿は、良い感じにコンパクトですね」
「ここは正確には神殿ではありませんよ。教会です」
シンジがそう言うと、テリーが勘違いを正してきた。
神殿の区分によると、ここは正確には『教会』である。『神殿』は、司祭以上の神官が常駐することが条件らしい。
「先ほどは、ランスを助けてくださり、ありがとうございました」
改めてテリーが感謝してきた。
「あの少年の事ですか? お知り合いですか?」
「以前、あの子はこの教会の孤児院にいましたので。商家に勤めたのですが、その商家からは最近居眠りがあると苦情がありまして」
もしかしたら、脳腫瘍による睡眠障害だったのかもしれない。早期に治療出来たのが幸いか。
「ランス君は今は?」
「治療院で休ませています」
治療は上手くいったので、問題は無いだろう。
「本人からもフラフラするという話を聞いていたのですが、聖魔術を使っても理由がわからず、恐らくそのせいで馬車に撥ねられてしまったのでしょう」
テリーが悔し気に顔をゆがませた。脳の構造を理解していなければ、脳腫瘍を発見するのは無理難題だ。とは言っても、テリー本人にしてみれば、納得できる話ではあるまい。
「しかし、足の治療跡を見たが、アンダーソン、腕を上げたな。聖魔術なら、もう祭司クラスの力はあるのではないか?」
アンダーソンは、首を横に振った。
「修行、魔力……足りない」
「お前は言葉が一番足りないと思うが。……まあ、それも修行か」
それは確かに。
「今……特訓中。……シンジ卿」
「こちらの方が? シンジ卿? え? シンジ卿? まさか、シンジ=クロス卿?」
テリーが、目を見開いてシンジを見た。
「あ、初めまして。シンジと申します」
「貴方様が、あのクロス卿だったのですか……」
神殿関係者なだけあって、テリーもシンジの事は聞いているようだ。
「あー、そうですが。あまり騒がれたくないんで、そこんとこヨロシクお願いしたいです」
「ええ、それはもちろん」
「では、私たちはこれで」
治療のために教会へ来たのだ。遅くなるとチャンに迷惑がかかる。
「あ、ちょっと待ってください。ひとつ伝言が」
テリーがシンジを呼び止めて、耳元にこそりと囁いた。
「例のカード書き換えの件、滞りなく準備は進んでいます。なるべく早くチェスタニアへお戻りくださいと、ハルク祭司教より」
「分かりました」
シンジも視線を向けずに返答した。
「でも、俺がこの町に来るかどうかは分からないのに、よく伝言とか出来ましたね?」
「近隣の神殿や教会の責任者には、同じ伝言が来ています。確実に伝わるようにとの事でしょう」
神殿の連絡網恐るべしである。
「双方向で情報のやり取りが出来るのですか?」
「そこは神殿の秘儀が絡んでいますので」
絡んでいるのは幼女だろう。たぶん。
そう言えば、ランスの症状についてテリーに伝えていなかった。
「あ、そうだ。テリー準司祭、ランス君の件ですが」
「何かありましたか?」
「彼の頭には、中におできのようなものが出来ていましてね。ふらつくのも眠くなるのも、それが原因だったと思います。もう取り除いているので大丈夫だと思いますが、何かあったら、チェスタニアのフレディさんに連絡をください」
テリーが驚いた顔を見せるが、すぐに真剣な顔になって肯いた。そして、アンダーソンに振り返る。
「アンダーソン、クロス卿の教えを守って早く腕を磨き、教会に戻ってこい。待っているぞ」
テリーがアンダーソンにエールを送ると、アンダーソンは深く肯いた。
「クロス卿、ますますのご活躍を創造神様にお祈りしております」
シンジは正直、幼女に祈られてもなあ、と思わなくも無かったが、あんなのでも創造神は創造神である。
《失礼じゃぞー》という声は、アーアーキコエナイ。そう言えばここは教会だった。ある意味幼女の領地である。
シンジたちは教会を辞すと、予定通り宿屋に泊まり、翌朝出発した。
突発的な事故に遭遇したが、アンダーソンには良い訓練になったのは間違いない。
そして3日後、シンジたちは何事も無くチェスタニアに到着したのだった。
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