89.テンプレ的に、人体講義をする俺。(微グロ注意)
シンジ君、講義を続けるの巻。
昨日は更新できずすみません。ちょっと表現に苦労したもので。
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『※閲覧注意※』
微グロ表現があります。
本当にグロ耐性が無い人は、◇から◇を飛ばしましょう。
必死の謝罪と、リンシャンの取り成し、また実際に何も疚しい事はやっていない事実により、シンジは許された。ただし、ちょっと正座されられたが。
魔力循環を最初にモノにしたのは、皆の予想を裏切ってと言うか、予想通りと言うか、チャンだった。
怒りに任せたバンプアップにより、コツを掴んだらしい。娘大事なのが良く分かるが、ならば危険な旅に連れて来るなよと言いたいところである。
帰りの行程の半分あたりで、全員が一応魔力循環を使えるようになった。
「普段から魔力循環はやっておくと良いよ。呼吸と同じくらい自然に出来るようになるのが目標だね」
シンジはそう言って、全身に魔力を行きわたらせる。
「魔力の練度が上がると、斬りつけられても練度によってはケガしないし、魔術の威力も操作能力も上がるから、頑張ってやり続けてね」
言いながらナイフを取り出して、机に乗せた自分の手の甲に突き立てた。が、全く刺さらない。
「び、びっくりしたアル……」
リンシャンの顔が青くなっていた。
「あ、ごめんね。実証したくって」
シンジはリンシャンにペコリと頭を下げた。
「明日から、アンダーソンは別メニューね。聖魔術の基礎のために、座学からやるから」
アンダーソンが首を傾げた。
「うん、聖魔術の効きが良くなるためには、適切な知識が要るんだよね。という訳で、それは準備があるからまた明日」
「シンジ、俺たちも見させてもらって構わないか?」
ボーブが興味深そうに聞いてきた。
「うーん、ちょっと気持ち悪いかもしれないけど、冒険者なら大丈夫かな?」
「それはどういう意味だ?」
「模型を使って説明するんだよね。人体の。だから、内臓とか血管とか、そういうものを見ても大丈夫なら。でも、あんまりお勧めしないよ?」
「そういう事か。冒険者は解体に慣れているからな。問題ないだろう」
「じゃあ、準備があるから今日はこの辺で」
◇
翌日、予定通りに行程を進め、大き目の村に到着した。ここでもチャンは商売する予定だ。
親子が店を開いている間に、暁の鐘とシンジは講義の準備を進めた。
「じゃあ、アンダーソンさん、始めようか」
おもむろに、シンジは机の上に布に包まれた何かを置く。布を開くと、土で出来た人の腕の模型だった。
「これはね、人の腕を忠実に再現した模型だよ」
シンジが言う通り、今にも動き出しそうな腕である。ちょうど、二の腕の真ん中あたりで見事に切断されている。断面も、骨から筋肉、皮膚まで完璧に再現されている。土色だが。
「うわ、本物そっくりだね……。でも感触は土だね」
マリックが指でつつく。
「さすがに着色したらグロいから。R18G指定だから」
「なんだそのあーる、なんとかってのは?」
「気にしないで」
ボーブに突っ込まれるのはお約束である。
「んで、これを使って腕の構造を覚えて欲しいんだよね。それだけでも魔術の治療の効果は上がるはずだから」
聖魔術での治療は、ケガなどの場合は『治癒力を上げる』か『元に戻す』ことが基本となる。つまり、見た目に左右される。だから、神経の細かいところが損傷している場合、治りきらなかったり、後遺症が残ることがある。
しかし、事前に知識として体の部位の構造を知っていれば、そういう事は防ぐことが出来る。つまり、聖魔術の効きが良くなる。
もちろん、細かい部位を治すという事は、その分余計に魔力を使うという事でもある。だから、魔力が多いことが必須となる。
魔力巡回により魔力の質が上がれば、同じ体内蓄積能力であっても、より多くの魔力が扱える事になる。だからシンジは、魔力循環と医療知識をセットで覚え込ませるのだ。
このふたつは丁度天秤の両端のようなもので、使える魔力と身体知識に拠った治療は、並行して行けばより効率的に治療の力量を増やすことが出来るとシンジは考えたのだ。
当然、この教育方法は、幼女に貰った『世界大百科』のチート知識をシンジが咀嚼する中で気付いたもので、いつか試そうと思っていたのである。
ただし、この教育方法は、知識を得るために時間が掛かる。
治療を実践しながら、魔力循環を行う方が吸収が早いのは分かっているが、良く考えて欲しい。実現するには、患者を切り刻みながら、治療し続けるという、拷問も真っ青な状態になるわけだ。
そんな患者に、誰がなりたいと思うだろうか?
そこで次善の策ながら、模型を使った知識の伝授という事になったのだ。
「腕の構造はね、こうなっているんだよー」
シンジは、模型を使って順々に構造を説明していく。瞬きもせずじっと見つめるアンダーソン。ひと通り、骨や関節まで含めて腕の構造を理解させる。
次に足の模型を取り出し、同じように説明するシンジ。アンダーソンは肯きながら見つめ続けた。
「いや、しかしシンジ、これ粘土だからいいが、さすがにちょっと気持ち悪いな……」
その模型は、魔物の解体に慣れている筈のボーブも、ちょっと退くくらい良く出来ていた。
◇
「じゃあ、いよいよ頭と胴体部分だね。覚悟は良い?」
肯くアンダーソンと、ちょっと青くなっている他のメンバー。
シンジが大きな布に包まれたものを取り出す。布を一気に剥がすシンジ。
そこには、大人の屈強な男性の全身が横たわる。……土色の模型だが。
「人体模型『ぼーぶくん2号』です!」
「おいいいいーーーッ!! シンジィーーーッ!!! てめえシャレになんねぇだろぉがこれはぁーーーーッ!!?」
ただ、その顔がボーブのものだった。さすがに悲鳴にも似た怒りの声を上げるボーブ。
「いや、アンダーソンさんが治すのは、主に前衛のボーブさんのケガだからね。リアリティとか臨場感とか大事だし?」
「そんなリアリティ要らんわぁぁぁーーーッッ!!!」
絶叫するボーブ。無理もないだろう。この模型は、これから切り刻まれる運命なわけだから。
さすがにアンダーソンも冷や汗をかきながら首を横に振っている。
「まあ、さすがに冗談だけどね」
シンジは、人体模型『ぼーぶくん2号』に布を掛けると、そのまま収納し、代わりの模型を取り出す。こちらは個性の全くない顔をした男性の、腕と足のない模型だった。
「人体模型『じょん・どぅくん1号』です!」
どこかのホラー映画のような名前で、下手すると呪われそうである。
先ほど使った手足は、この人形のもののようだ。
「じゃあ、はじめるよー。……気を確かに持ってね」
シンジは、講義を続けるのだった。




