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88.テンプレ的に、魔力循環訓練をさせる俺。

シンジ君、魔力循環の修行を施すの巻。

ただし、一部に叡智あふれる回。(ヲイ)

 「それじゃ、魔力循環の基礎から行こうか」


 シンジは、自分の胸の中央に手を当てる。


 「全員真似してくださいねー。ハイそうですよ。ドクドク言ってますねー。心臓が全身に血を送り込んでいます」


 全員が胸に手を当ててうんうんと肯く姿は、傍から見ると非常に間抜けである。


 「逆の手で、下腹に手を当ててくださいねー。ここに、通称『丹田』というモノがあります。魔力を意識すると、これがだんだん熱くなりますよー」


 全員が逆の手で腹を押さえ、再びうんうんと肯く。まるで、腹痛を訴える患者のようだ。


 「はい、熱くなってきた人」


 そこでシンジが心臓側の手を上げると、まずアンダーソンとマリックの右手が上がった。さすがに魔術を使うだけあって、魔力を扱う感覚に優れている。


 「はいじゃあ、まずはアンダーソンさん。下腹の熱い魔力を、心臓のドクドクに合わせて。そこに乗せるように」


 アンダーソンは、しばらく手を当てて頑張ったが、首を傾げる。確かに、魔職循環の壁は、この『心臓に魔力を移動する』感覚が掴めるかどうかなのだ。そこに時間が掛かる。


 シンジは、時間短縮のために手を出すことにした。文字通りに。


 「アンダーソンさん、ちょっとおなか触るねー」


 シンジはアンダーソンの下腹に触ると、魔力の存在を確認し、それを引っ張り上げるように動かす。これは、魔職の扱いに長けているシンジだからこそ出来る技である。他人の魔力を動かす。これも聖魔術に属する技だ。


 「うぁ……?」


 アンダーソンの表情が、驚愕と得体のしれない感覚に歪んだ。痛いわけではない。魔力を恣意的に動かすと、何ともむず痒いというか、気持ち悪良いというか、変な感覚に襲われるのだ。シンジも覚えがある。


 シンジは、そのまま魔力を心臓のあたりまで持ち上げ、血管に乗せるように導いた。心臓と重なった瞬間、血液に乗って少しずつ体内を巡る魔力。


 「あ……ぅ……?」


 「変な感覚があるでしょ。でも慣れるから。暫くはそのまま少しずつでも魔力を乗せられるように頑張って。じゃ、次」


 今度はマリックに、同じ手順で魔力循環を認識させる。


 「うゎ、なんと言うかこれ、気持ち良いような寒気がするような? でも身体だけ熱くなるような? 不思議だね。僕の身体が書き換えられていくみたいだよ……」


 スナーブはくすぐったく感じ、ボーブはマッサージを受けたように気持ち良く体が軽くなったらしい。ストレス満載のオヤジか。


 シンジは、チャンにも試してみた。腹に手を当てて、魔力をコントロールする。ちょっと脂肪が邪魔だが。


 「お? おお?」


 魔力が巡回し始めると、シンジが戸惑いの声を上げた。


 「な、なにアルかッ!? こ、これはすごいアルッ!!」


 チャンは、なんと太っていた腹が引っ込んでしまった。それどころか、体全体が引き締まって、身長まで高くなり、ナマズ髭まで消えている。


 「えぇーッ! どゆことーッ?!」


 ダイエット効果があるとは、シンジも知らなかった。


 しかし、考えてみれば、体内の血液循環に乗せて魔力を回しているわけだ。なら体の脂肪が効率よく消費されていると考えれば、新陳代謝が良くなり、結果的に痩せるというのはあり得る話だった。もともと脂肪とは、貯えられたエネルギーなのだから。


 「いやでもさすがにこんな急に変わらないよねッ!?」


 シンジも、目の前の現象がまだ信じられない。チャンから手を放し、頭を抱えた。


 「パパがカッコよくなったアル!?」


 リンシャンもびっくりである。


 「ハハハ、リンシャン、もっと褒めても良いのだぞ」


 口調まで変わっている。キャラの原型どうした。


 「ハハハハハ、は、あれ? おかしいアル?」


 高笑いしていたチャンが、急に戸惑うように体を見回すと、だんだん体形に元に戻っていく。


 「パ、パパ? 元に戻って行くアルよッ!?」


 「ど、どういう事アルかッ!?」


 最後には、すっかり元に戻ってしまった。


 再びシンジが、チャンに魔力循環を仕掛けると、やはり急に変化する。


 「まるっきり変身能力(007)ぢゃねーかッ!! ナンバー違うだろう―がッ!!?」


 そういう問題ではない。固有魔術なのだろう。たぶんきっとめいびー。


 「じゃあ、次はわたしアルね♪」


 父親の得た変身能力を気にも留めず、リンシャンが自らシンジの手を掴み、自分のおなかに当てる。


 「え? チャンさん良いの? お年頃の娘さんに……」


 シンジがチャンを見るが、魔力循環を手に入れようと必死の様子で、こちらを全く見ていない。


 「ダイジョーブね♪ 早くやるアルよ♪」


 シンジはため息をつき、そのままリンシャンの魔力を操った。


 「ふぁッ……?」


 リンシャンの顔が赤くなる。


 シンジは、なおも魔力をこねくる。ちょっとお仕置きも兼ねて。


 「んぁッ!? ぁう? ……ンぁんッ?!」


 リンシャンの、少し艶めかしさを覚える声が、吐息とともに漏れた。


 目をつぶり、頬は益々赤くなる。息遣いが荒くなっていく。


 「みゃ、にゃ、ぁン……♡」


 ちょっと雰囲気が怪しくなってきた。リンシャンは、手を嬌声を堪えるように口に当て、うっすら汗ばんできている。


 「だ、だめアル……シンジ、さん、そんな、に……ンぁ、強、くぅ……」


 シンジもちょっと楽しくなってきてしまった。おなか、柔らかいし。いー匂いするし。 


 「ぁ……シン、ジ、さん、いっぱ……あぅンッ! い、いや……怖い、アルぅ……」 


 リンシャンが仰け反り、倒れようとするのをシンジが腕で支える。傍からは、睦事をするかのように見える。 


 「あ、ら、らめぇ……」


 言わせてみたいセリフ上位の『らめぇ』を戴いてしまった。


 そこで、シンジは背中からガッシリと肩を掴まれた。


 そこには、すっかりバンプアップしたチャンの姿が。背中には炎を纏っている。


 「シンジさぁん……? 何しているアルかぁ……?」


 チャンの目が、豆電球の様に光っている。それを見たシンジ、頬に汗がタラリ。


 「ぼ、僕はヤッてないッ!!」


 「……ダメだこりゃ」


 ボーブのセリフが、むなしく響いた。

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