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87.テンプレ的に、魔力の秘密を明かす俺

シンジ君、博士モード発動の巻。

やっぱり授業の正装は、白衣と伊達眼鏡ですよね。(ヲイ)

 昨日チェスター泊一行を見送り、今日はシンジたちの出発の日だ。


 「シンジさん、忘れ物ないアルか? トイレは行ったアルか?」 


 「お前は俺の母親か」


 リンシャンのボケに付き合ってみる。


 「何やってんだ? 出発だぞ」


 呆れたボーブに突っ込まれる。ここまでが1セットである。


 「皆さん、出発するアル。王都でたっぷり買い込んだネ。だから、行きとは違う道を通って行くアル。ヨロシ?」


 チャンの言葉に、全員が肯いた。シンジとしても、再びラックブック村を通るのは気が引けたので、ちょうど良かった。


 「どうしても魔物が多い地域を通ることになるアル。気を付けてほしいアルね」


 全員が深く肯いた。


 「では、出発するアルッ!」


 何事も無く、馬車は2台連なり出発した。


 王都からしばらくは、魔物もほとんど出ない街道を進む。油断はしないが、緊張し過ぎるのもよろしくない。全員が適度に体を休める。


 何しろ、荷物はマジックバッグの中だ。2台の荷馬車は、全員が普通に乗り込むことが出来た。


 当然、その分早く進むことになる。


 「アンダーソンさん、次に休憩入ったら、聖魔術から訓練始めよっか」


 「……承知」


 アンダーソンの了承を得たので、シンジもあたりを見ながらもゆったりと過ごすことにした。


 


 ◇




 休憩地に着いたので、早速昼食を準備した。お約束の丼ものである。今回はロコモコ丼にしてみた。大評判である。どうやらハンバーグも出回っていないようだ。肉団子はありそうだが。


 シンジは食後休みの間に、アンダーソンにいろいろと質問する。


 「まずは、アンダーソンさんがどこまで聖魔術を使えるかだけど」


 残念ながら、段数表記が解禁されるのは10日以上先だ。一応、ギルドの方からも情報としては明かされている。手続きをすれば、順次段数表記付きカードに更新される予定だ。


 「手足……ケガ、治る。胴……」


 「ほむ、手足に負ったケガなら治せるんだ。胴体は内臓に達すると無理。なるほど」


 だいたい、幼女が示した基準で考えれば初段くらいだろうか。


 「ほむほむ、どのくらいの回数治療できる?」


 「腕、4回……足、3回」


 「ほむほむ、回数はそのくらいね。そうなると、原因は人体構造知識と魔力制御かな。大体分かった。続きは今晩ね」


 休憩も終わり、馬車が走る事1鍾半(4.5h)、日が暮れる前に次の町へ入ることが出来た。


 宿を取り、シンジがアンダーソンにレクチャーを始めようとすると、他のメンバーも集まって来た。チャン親子まで。


 「みんなどうしたの?」


 「いや、興味あるから聞いていていいか?」


 「別に良いよ。あ、これからの話は、魔術使う人全員に役立つ話だから、聞いてもらった方が良いかも」


 シンジがそう言うと、全員が興味津々とばかりに身を乗り出した。


 「まず、大前提として、人間は一部を除いて、生まれたときは極端に魔力が多かったり少なかったりする人は居ません。格差も3倍を超えることはないでしょう」


 全員が、え? という顔をする。実体験として、他人より多く魔術が使えたりする魔術士がいるのだ。今の説明と矛盾しているように思う。


 シンジは興が乗ったのか、白衣と伊達眼鏡を装着した。テンプレ通りに。


 「……今、どこから出した?」


 つぶやくボーブの声はスルーしつつ。


 「魔力に格差が出来るのは、主にふたつ要因があります。ひとつは魔物を倒した時に吸収される魔力。これは通称『風』というのは、知っていると思います」


 シンジが人差し指を立てて言うと、冒険者である暁の鐘は、全員肯く。


 「もうひとつは、体内を魔力が巡回して、質的に練られることで密度を増していく方法。これを『魔力循環』と言います。無意識にやっている人はいますが、意識的に修行している人はほとんどいません」


 全員が、ほー、という顔をする。


 「高ランクの冒険者になると、普通は持てないような武器を振り回したり、魔術士が大規模な魔術を使ったりできるのは、無意識に魔力循環をやっているからです。冒険者の中に、戦いになると急に皮膚が強靭になったり、筋力が増したりする人がいますよね。それもこれで説明できます」


 「ほう、あれは魔物を大量に倒したから、風を大量に受けたのが原因かと思っていたが、違うのか?」


 ボーブの質問が飛ぶ。


 「ボーブさん、良い質問ですね。実は、それもあります。ただ、『風』のみで得られる魔力と、『魔力循環』で得られる密度は、掛け算になります。ですので、風で元々の10倍の魔力を得て、魔力循環で密度が3倍になると、元の30倍の魔力になるという事です」


 全員が、えーッ! という顔をする。


 「す、すると何か? 『魔力循環』を使いこなせれば、使える魔力が何倍にも増幅されるという事かッ?!」


 「そう、そういう事ですッ!」


 ドーン、という効果音がしそうな感じで、シンジが右手を高々と掲げた。


 「な、なんか今までの僕の常識をひっくり返すような話なんだけど」


 マリックが呆然としながらつぶやいた。全員が同じ気持ちだ。


 「使える魔力が増えるんですから、当然量的に撃てる魔術も増えます。でも、それだけではありませんッ!!」


 ババーン! という効果音がしそうな感じで、シンジが両手を大きく広げた。先ほどから演出過剰である。どこのアングラ新劇か。


 「何と、魔術や身体強化の質的向上もあるんですッ!! 何しろ魔力を練って密度が上がっていますからねえッ!!」


 全員が、おおーッ! とどよめく。……だんだん教育番組から通販番組っぽくなってきた。


 「ぜひ、この機会に皆さんッ! この力を手に入れてくださいッ! ご連絡はこちらまで!!」


 シンジが胸の前で下を指差す。


 「だから、連絡先どこだよッ!!」


 「あ、そうだった」


 シンジ、しつこく天丼ネタだった。

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