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82.テンプレ的に、盛大にフラグを立てる俺。

シンジ君、盛大なフラグを立てるの巻。

テンプレでフラグを立てるのは正義。(ヲイ)

 シンジたちが元いた部屋に戻っても、ランチェスト兄妹は戻ってきていなかった。


 ちなみに、ハルクは上司(アントニー)への報告作成のため席を外している。げに悲しきは宮仕えなり。


 「おや、まだ戻ってないみたいだねえ」


 「兄は魔剣大好きというのを知っておりましたが、妹も魔剣好きになったのでしょうか?」


 フレディが首をひねった。もし、アイリスが魔剣好きになったのだとしたら、それは自分が持っている魔剣と比較したいという事なのだろうか。だとすれば、元凶はシンジである。


 ちょうどそんな会話をフレディとしていると、艶々した顔を見せながら、ランチェスト兄妹が戻って来た。


 「あ、シンジさん、遅くなってすみません」


 アンリがぺこりと頭を下げてきた。こちらにもそういう風習があるらしい。


 「いえいえー、アンリさん達、しっかり堪能してきたみたいですねー」


 「ええ、それはもうッ! 素晴らしい魔剣の数々でしたッ!!」


 むふーッと、鼻息も荒くアンリが答えてきた。美形が台無しである。


 「アイリスさんも堪能したの?」


 ちょっとアイリスが頬を赤く染める。


 「ええ、シンジさんから頂いたこの魔剣と比較がしたくて……」


 「比較しても、こちらの保管品の方が良いでしょうに」


 シンジの作った魔剣の中でも下のランクだ。普通に考えて、神殿に集められた魔剣より格下だろう。そう思っていたのだが。


 「いえ、そんなことはありませんでした。最上、という訳ではありませんが、中より上かな、と」


 ちょっとシンジは驚いた。シンジの剣が中の上だからではない。そんな格の低い剣が魔剣として取り扱われていることに。


 「神殿の魔剣って、どんな経緯で集められているの?」


 シンジは振り向いて、後ろに立っているフレディに聞いてみた。


 「そうですね、呪いが掛かっていて所有者が手放したり、所有者が亡くなって他の者が使えない状態になったり、制作者が奉納したりとかが多いでしょうか」


 「呪いや使用者制限を神殿で解除するというのは分かるけど、奉納もあるの?」


 「そうですね。今回の様に実力者には拝観が許されるので、制作者が名を上げるために奉納することは、結構ありますよ」


 なるほど、剣は売ってしまえばそれまでだが、名を上げる広告的な役割を果たすことにもなるのか、とシンジは納得した。


 「呪いや使用者制限を解除するのは聖魔術だよね。解除した後、預けた剣を取りに来たりするの?」


 「もちろん、その分の喜捨をいただければお渡しします。が、そこまでの聖魔術を使えるのは、かなりの高位者だけですので、別の欲しい方が喜捨をして、その分を神殿と元所有者が分けるという事例の方が多い気がします」


 神殿も人の組織である。霞を食って生きているわけではないので、当然と言えば当然である。


 「それって、他人の魔剣を奪って持ち込んだらどうなるの?」


 「神にお伺いを立てるので、まずバレますね」


 《Botじゃよ》


 幼女の声が頭に届く。どうやら、そういう機能があるBotを創ったようだ。


 さすがに神殿の中だからなのか、幼女の声の受信率が高い。嬉しくはないが。


 「ふーん、まあ、魔剣もピンキリって事だよね。凄いのはあった?」


 「そうですね、ドラゴンの鱗でも斬れる魔剣が一番すごかったでしょうか。私も、そんな魔剣を持ってみたいものです」


 アンリが目をつぶり、頭の中で剣を思い描くように言った。


 「ん? 竜斬剣(ドラゴンスレイヤー)が一番すごいの? どのレベルの竜が斬れるのかな? もしかして、『龍』クラス?」


 「いやいやいや、それはあり得ないでしょう。そんな剣は国宝クラスどころか、神剣レベルですよ」


 アンリが首を横に振りながら答える。


 剣で竜を斬るためには、単に金属の剣や魔術の通りが良いというだけでは不可能である。何故なら、その身に纏う鱗が魔力を帯びていて、魔術も切れ味も相殺してしまうからだ。


 では、竜を斬るのは不可能なのかというとそういう訳でもない。


 要は、鱗の纏う魔力を超えられれば良いのだ。それで鱗が斬れる。鱗の下には皮膚や肉があるわけで、当然その下も斬れるという事になる。


 では、どうやって鱗の魔力を上回るのか。


 剣に、それだけの魔力の切れ味を纏わせるか、鱗のない部分を攻撃すれば良い。


 過去の竜殺し(ドラゴンスレイ)は、半分が剣による斬殺、もう半分が鱗の薄い部分への攻撃で達成されている。


 つまり、竜を斬れる剣とは、そういう魔力を纏った剣である。


 では、どうやってそんな剣を造るのか。


 人間の魔力を纏った程度では、最も下級の竜である色竜すら傷付けられない。色竜とは、青・黄・赤・緑の4属性を持つ竜の事だ。


 通常、竜斬剣(ドラゴンスレイヤー)はその1ランク上の竜が纏っていた鱗を、ミスリルとアダマンタイトの合金に混ぜ、鍛えて造り出す。


 色竜を倒したければ、その上のクラスである属性竜、水・地・火・風の竜鱗が必要である。


 竜は下級から、色竜、属性竜、自然竜である海・大地・炎・嵐・光・闇の竜、さらに区分が変わって属性龍、自然龍となる。


 そして最上級が、シンジがチュートリアルで最後に戦った『五色の龍』である。五色の龍を超える龍がいない以上、剣で五色の龍を倒すのは通常不可能という事になる。通常ならば(・・・・・)だが。


 最下級が色竜なのに、最上級も『五色の龍』なのが非常に不思議である。たぶん、幼女が語感で決めたものと思われる。《ちがうぞー》という声は、アーアーキコエナイ。


 もちろん、剣だけが上級でも、腕が伴わなければ斬ることは出来ないのは言うまでもないが。


 ちなみに、龍レベルの鱗を使うと、土台となる金属も、ミスリルとアダマンタイトだけでは耐え切れず、オリハルコンも混ぜなければ崩壊してしまう。そんな剣は、ドワーフでも歴史に名を遺すレベルの者だけが鍛えることが出来る。シンジも、チュートリアルでだったが、そこまでの剣を鍛えることが出来ていた。


 「ほむ。そういう事ね。理解した」


 そこまで話が進むと、シンジの背中に悪寒が奔った。


 「ど、どうしたんですかシンジさん、急にビクッとして?」


 アンリが不思議そうに聞いてきた。


 「ん? いや、何か今、盛大にフラグを立てた気がしたんだよね……ま、いっか。ふたりもいるし」


 そこで、アンリとアイリスがビクッとした。


 「どしたの?」


 今度はシンジが聞き返した。


 「「いや、今何か、変な悪寒が奔りまして」」


 アンリとアイリスがキョロキョロとあたりを見た。


 「はッ!……シンジさん、もしかして何かしました?」


 アイリスがジト目でシンジを見た。


 「いやぁ? 知らないよー?」


 シンジ、渾身の真っ赤な嘘である。

俺も盛大にフラグを立てたい! という方、★とブックマークをお願いいたします。(チガ)

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