75.テンプレ的に、怪しい通販番組を展開する俺。
皆様、あけましておめでとうございます。
今年も、当『テンばん』をよろしくお願いいたします!
シンジは伯爵邸を出て、アンリと遭遇した商店にいた。ここで、チャンたちと合流するためだ。
いくら王宮に呼ばれたと言っても、契約は契約。シンジはまだ護衛依頼の途中なのである。よって、再度チャンたちと合流し、護衛の任務に就かなければならない、と考えている。
ちょうどそこへ、ボーブたち暁の鐘のメンバーがやって来た。
「ボーブさん、こっちこっちー」
シンジに気付いたのか、ボーブたちが近づいてきた。
「昨日は御免ねー。突然呼ばれちゃったから」
「いや、アンリ卿が呼んだんだ。仕方ないだろう。無事に王都の商店に着いていたんだ。チャンさんも問題ないと言ってくれていたしな」
ありがたい話である。
「で、シンジ。いったいどんな用事だったんだ? 一応護衛チームとしては聞かなきゃならんのでな。言えないなら言わなくてもいいが」
シンジは、懐から鎖を引っ張り出した。
「ちょっと、これ貰いに行ってたの」
「これ? ちょッ!? おまッ!?」
「これ、爵位章じゃないかッ!?」
ボーブとマリックが目を剥いた。どうやらこのふたりは、これがどういう物か知っているらしい。
「あれ? ボーブさんとマリックさん、これ知ってるの?」
「ああ、一応な。親父が騎士爵だったからな」
「あ、僕は伯父が法士爵だったので」
ボーブもマリックも、身内が爵位持ちだったらしい。
「ほむ、おふたりも貴族?」
「いや、親父は家爵まで至っていない一代貴族だしな。兄貴たちが騎士だから、上手くすれば家爵持ちになるかもしれんが。俺は単なる平民だ」
「僕も平民ですよ」
シンジはサクサクと爵位を受けてしまったが、普通はそう簡単に貰えるものではない。当たり前だが。
「でだ、それをシンジが持っているって、どういうことだ?」
「んーとね、へーかから貰っちゃった」
てへペロするシンジ。
「へーかってお前、まさか陛下かッ!?」
「そうそう」
唖然とする暁の鐘。
「なあ、そうしたら、『シンジ卿』って呼ばないといけない、か……?」
「あー、気にしないで。フツーにしてフツーに。冒険者辞める気ないし」
せっかく仲良くなったのに、気を使われるのはイヤだしな、とシンジは暁の鐘に、今まで通りの扱いをお願いした。
「まあ、そういう事なら、今迄と同じにするけど、後で不敬であるとか言うなよな?」
とりあえず、冒険者のシンジとして、しばらくは活動出来そうである。
「あ、シンジさん、ここにいたアルね」
そこへ、チャン親子がやってきた。
「シンジさん、取引が終わってお金、入ったアル。マジックバッグ買うアルね」
「おー、小麦イイ感じで売れたんだ」
「高値瞬殺だったアル」
どうやら、ラックブック村の小麦は無事完売したらしい。
「そっかー、じゃあ、儀式しないとねえ」
「儀式? 何アルか?」
チャンが首をひねる。
「リンシャンさん、そこに立って」
「わたしアルか? ここでいいアルか?」
シンジは、横に立ったリンシャンに、バッグを持たせる。
「ハイッ! 今日ご紹介するのは、このアイテムバッグですッ!」
シンジが、突然甲高い声で話し出した。
「このバッグアルか?」
「そう、このバッグ、なんと馬車5台分の荷物が入るという、高性能アイテムバッグなんですッ!!」
「素晴らしいアルね!」
リンシャンもノリノリである。
「しかもこのバッグ、なんと時間も止まる仕様になっていますッ!!」
「それはすごいアルね! でも、そうするとお値段お高いアルか?」
「いえいえ、なんとこのバッグ、ひとつ金貨100枚でご奉仕!」
「ちょっとお高いアルね」
リンシャンが横に首を振る。
「では、2枚で金貨180枚、180枚でご奉仕ッ!」
「あんまり変わっていないアル」
「何と、2枚セットで買うと、もう1枚付いてくるんですッ!!」
「それは本当にお買い得アルね!! ……でもそれなら1枚を金貨60枚で売って欲しいアル」
「……リンシャンさん? それは皆が思っているけど、言っちゃダメなキーワードなんです」
シンジが怖い顔をしてリンシャンを見る。
「そ、そ、そうアルか、ご、ごめんアル……」
「ご連絡はこちらまで!!」
シンジが胸の前で下を指差す。
「って、連絡先どこだよッ!!」
「あ、そうだった。この世界じゃリニア編集ないもんねー」
ボーブのツッコミに、シンジが頭を掻いた。
「というわけでチャンさん、3つで金貨180枚で良いよー」
日本円で約1.8億円である。
「賃貸料が入っていないアルよ?」
「賃貸料コミコミねー」
そこで、シンジがちょっと真面目な顔になる。
「冗談はともかく、金貨180枚って大変な額だよ? チャンさん大丈夫?」
「大丈夫アルね。商業ギルドでカード決済してほしいアル。それなら、預け金があるから足りるアルね」
つまりチャンの商会には、2億近いプール金があるという事になる。
「時間停止のマジックバッグが3枚手に入るとか、そんな機会はそうそう無いアルね。ここで勝てる勝負をしないのは商人じゃないアル」
その足でギルドへ行き、シンジは金を受け取った。一部は現金にすることも忘れない。
チャンは、これから3日間を仕入れで使うそうだ。4日後朝に出発することになった。
シンジは、一旦伯爵邸に戻ることにした。
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