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74.テンプレ的に、紋章を決める俺。

シンジ君、紋章を決めるの巻。

家紋って面白いですよね?

 パーティーの翌日、シンジはオリバーたちとともに伯爵邸にいた。


 「で、シンジ、紋章はどうするのだ?」


 そう、シンジは早急に自分の家紋を決める必要があった。クロス騎士爵家が成立した以上、紋章院に家の紋章を登録する必要があるのだ。これが決まらなければ、マントへの刺繍が出来ない。


 「ちなみに、アイリスさんの家紋はどうするんですか?」


 「私の紋章は、今のランチェスト家の紋章に、花のアイリスを加えます」


 見せてもらった紋章は、交差した剣に王冠、真ん中にアイリスの花があしらわれている。この地は西洋テンプレである。当然紋章は西洋っぽいカラフルで複雑な意匠の組み合わせであった。


 「ほむ、なかなかかっこいい」


 「そ、そうですか?」


 アイリスがちょっと照れた。


 「シンジさんは、紋章考えてますか?」


 アンリの問いに、シンジは頭を掻いた。


 「んー、以前嫡子様からお話があったときに、考えてはいたんですよねー」


 「ほう、どんなものだ?」


 オリバーが興味深げに聞いてきた。


 「一応家の紋ではあるんですけど、こちらの紋とは全く違う感じでしょうから、合いますかね?」


 そう言って、シンジは腰のバッグから1枚の紙を取り出した。皆が覗き込むと、そこには不思議だがシンプルな紋が描かれていた。


 「変わった紋だね。シンプルだが美しい。これは、葉を図案化したものかな?」


 アーサーが顎に手を当てながら、感心したようにつぶやいた。そこには、丸で囲まれた中に、交差した棘のある葉が描かれている。


 「(ひいらぎ)という葉ですよー。知ってます?」


 黒須家の家紋は、丸に抱え柊である。日本では良くある家紋のひとつだ。


 「ふむ。こういった紋は珍しいな。シンジ、君の国では、こういった紋章が基本なのかね?」


 「そうですねー。植物とかを単純化した図案が多いですねー」


 オリバーの問いにシンジが答える。


 元々、家を表す紋というのは日本と欧州にしかない。だが、足す文化と引く文化という感じで方向性が真逆になったのが、歴史の面白いところだろう。


 「あ、そう言えば、昔滅んだ貴族の紋章に、これに近いものがあったような……」


 「そうなんですか?」


 もしかしたら、それは過去の転移者のものかもしれない。だとしたら、それに近い家紋を使うのは良いことではないだろうとシンジは思った。


 「んじゃ、こっちにしようかな?」


 そう言ってシンジは再び紙を取り出した。そこに書かれていたのは、中央背景に飾り十字架が書かれ、前に交差する剣と杖。それを交差した柊が下1/3ほど覆う図案だった。中二心をくすぐるデザインである。


 「ほう、こちらはなかなか面白い。ここにも柊が使われているのかね?」


 「まあ、家のアイデンティティみたいなものですから」


 「シンジさん、これはどういう意味があるんですか?」


 「十字架はクロスそのもの。交差する剣と杖は、魔法剣士であること。柊は、さっきも言った通り家を表すって感じ?」


 シンジの中二心を表した一品である。


 「恐らく、類似する紋章は無いと思うので、これで登録すると良い。念のため、紋章官に調べさせよう」


 オリバーはそう言うと、すぐに執事に命じ、紙を持って行かせた。


 「さて、これが認められればすぐにマントへの刺繍と、紋章旗を用意させよう。これは、依子になるクロス家へ、私からの贈り物にさせてもらうよ」


 「伯爵様、感謝します」


 シンジは、オリバーに深々と頭を下げた。


 「それから、これも持ち歩くように」


 オリバーは、執事が持つ黒い盆に載った、鎖が付いた銀色の懐中時計のようなものを、盆ごとシンジに渡した。


 「これは何ですか?」


 「これは貴族章と言って、身分を証明するものだ。貴族家当主は、これを持つことで城門などが通れるようになる。まずは、この部分に手を触れなさい」


 シンジが懐中時計の蓋のようなものに触れると、ふわっと光を放った。


 「これで登録出来たことになる。シンジ以外がこれに触れても反応しない」


 どうやらファンタジーっぽい一品のようだ。


 「ちなみに、紛失したら最悪爵位取り上げになるから、気を付けて保管するようにしなさい」


 「はい」


 シンジは、腰のバッグに入れる振りをしながら、アイテムボックスに収納した。これで紛失の心配はない。


 「そんなところに入れて、本当に大丈夫かね?」


 「大丈夫ですよー。何故なら」


 そう言って、シンジは腰のバッグを外し、バッグを開いてひっくり返した。


 「あ、あれ? ……入ってない?」


 アイリスが驚いてバッグの中身を見た。当然何も入ってない。


 「実はここに」


 そう言って、シンジは胸ポケットから鎖を引っ張り出した。するするっと、発光しながら取り出される懐中時計もどき。


 「え? え?」


 アイリスは混乱する。それを見ながら、再びシンジは胸ポケットに入れる。


 「じゃ、アイリスさん、この胸ポケットから引っ張り出してみて?」


 アイリスが胸ポケットを探ると、そこには何もない。


 「え? え? え?」


 さらに混乱するアイリス。胸ポケットだけではなく、シンジの体中を触り始めた。


 「いやん、アイリスさんのエッチ♡」


 「え? どこ?!」


 シンジは、首の後ろから鎖をスルスルと取り出した。


 「ハンドパワーです」


 シンジがドヤ顔で決め台詞を言うと、オリバーたちが拍手した。

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