72.テンプレ的に、ラックブック村の秘密を暴く俺。
シンジ君、ラックブック村の禁忌に触れるの巻。
まあ、普通は分からんよね。(ヲイ)
「あ~ん~り~さぁ~んん~……ッ!?」
「ゴメンッ! 謝りますッ!」
シンジは謁見から戻ると、すぐにアンリを見つけて突進した。
そのまま脳天にチョップする。
「おしおきッ!」
「あいたッ!」
それを見て、アイリスが腹を抱えて笑っている。オリバーとアーサーもだ。
「いやあ、アンリのそんな姿、初めて見たなあ」
アーサーが笑いながら、アンリの肩を叩く。
「あ、いや、これは」
アンリが顔を赤くして小さくなった。美形は照れても美形である。ちくせう。
「騎士隊の連中に見せたいくらいだな」
オリバーもアンリをからかうように笑う。
「や、やめてください!」
アンリが真面目に焦る。見られたら、総隊長の面目丸つぶれである。
ひとしきり皆で笑ったところで、全員にお茶が配られた。
ひと口のどを潤して、アンリがシンジを見る。
「いや、私はシンジさんがカーテシーするんじゃないかと思って冷や冷やしたんですよ。無事に済んでホッとしました」
「一瞬しようかと思ったんだけど。マジで」
「は?」
これは本当である。
「イヤ本当。ここでカーテシーしたら、どうなるかなーと思ったけど、自重しました」
ドヤ顔で言い放つシンジ。
「ちなみに、あの場でカーテシーしていたら、どうなったんだろうねえ?」
「……たぶん、会場爆笑で式は中断、上の人たちが陛下をコケにしたと怒り狂って、シンジさんは打ち首かな?」
アイリスが非常に怖い未来予想図を述べた。
「……まじ?」
「いやまあ、そこまで酷いことには……なるかな?」
アーサーがポツリと話す。その話し方が真に迫っていて、怖すぎる。
「あ~ん~り~さぁ~んん~……ッ!?」
「本当ゴメンッ! 謝りますッ!」
再び、全員が爆笑する事態になった。
◇
「でだ、シンジ。予定通りアイリスはラックブック村を。君は魔の森の一部と手前の草原を領地として受けることになった。が、本当に良いのか?」
どうやら、国側との根回しはオリバーの方でやってくれたようだ。
「伯爵様の方は、村を譲り渡して大丈夫だったんですか?」
そう、あの村は、非常に高級な小麦を排出することで有名な村だったはずだ。
「そのことなら問題ない。確かに直接的な税は減るが、アイリスを通じて間接的には入るし、陛下から仙桃茸の献上で、3村含む1州を下領いただいたしな」
どうやら、伯爵の領地が加増になったらしい。であれば、得にはなっても損にはならない。
「ほむ、であれば問題ないですね」
「しかし、シンジが何も受け取ってないのと同じではないか? もちろん、開拓費込みで金貨1万枚は下賜されたが」
日本円にして100億円。遊んで暮らしても人生全く困らない金額である。まあ、仙桃茸7個分の相場で考えれば不思議な金額ではない。
「まあ、本気で俺が村を作るときには、ガンガン魔術使いますしね。金銭使わないので全く問題ないですよー」
シンジがその気になれば、一瞬で石壁を造れるし、村ひとつ分くらいの建物だって、サクッと造ることが出来る。
「ただ、すぐには造りませんね。その村で、単純に農業をしても良いのですが、それだけだと領民の暮らしがパッとしないでしょうし、麦を作ったらラックブック村と競合しちゃいますしね」
「競合? どうしてだね?」
オリバーが不思議そうに聞いてきた。
「え? だって、あの村の麦が良い出来なのは、魔の森の魔素が地下の龍脈から流れてきていて、その上に村があるからですよね。だったら、より森に近くて、龍脈に沿って村を造って大々的に麦を作ったら、当然影響が出るでしょ?」
全員の口があんぐりと開けられた。
「え? え? まさか知らなかったんですか?!」
これにはシンジもびっくりである。
「い、いや、シンジ君、これは大変な話だよ!? 今までも、あのラックブック村の麦を超えるモノを作ろうと、より魔の森近くに開拓村を造っても、出来上がった麦は普通より少し良いくらいだった。だから、魔の森とは関係なく、あの村の特殊性だと思われていたんだ。それが覆ったことになる……」
シンジ以外の全員が頭を抱えた。ラックブック村の麦だけが、どうして極端に質が高いのかは、学者の間でも長いこと不明とされていた。
多少の被害が出ても、あの場所に村を置き、開拓をし続けた理由がそれだったのだ。ただし、いかに麦の質が高くても、それだけで畑をすべて覆う程の壁を造る費用までは出せなかったのが事実だ。
それが、壁を造り上げた人間にあっさりと解答まで出されてしまった。しかも単なる雑談の中で。
全員が頭を抱えたのも仕方ないほどの衝撃である。
「……あ、俺、またやっちゃいました? てへ?」
すかさずシンジがテヘペロをかました。
もちろん、直後にシンジが総ツッコミを喰らったのは言うまでもない。
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