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71.テンプレ的に、叙爵の式典に臨む俺。

シンジ君、叙爵されるの巻。

やらかすのを必死に堪えるシンジ君だった。(ヲイ)

 叙爵式の会場は、当然のことながら謁見の間である。が、今回は騎士爵の叙爵が2件と、それほど規模が大きいものではないので、『銀冠の間』と言われる中規模の会場が使われる。


 中規模と言っても、国王が謁見する間である。豪華な設備と装飾であることは当然だ。床には毛足の長い絨毯が敷き詰められ、玉座まで続く部分は、赤い絨毯が敷き詰められている。これは、前の世界と同様だ。


 これほどの部屋で下級貴族である騎士爵の叙爵で使われることは珍しいのだが、今回は何故か特別に国王直々の叙爵になるとの事で、この部屋が使われることになったらしい。もちろん、シンジが後で聞いた話だ。


 シンジとアイリスは、叙爵者として一番前の席に座った。玉座の周りには、国で重きをなす役職者が、座席の前に立っている。シンジたちの後ろには、宮廷で勤める法衣貴族の中でも中核となる中・下級貴族が見守っている。もちろん、好意的な目ばかりではないが。


 国王隣席のためか、本来騎士爵叙爵に出ることはない宰相・大臣まで参列している。そのためか、少々部屋が狭く感じる。


 「皆様、ご静粛に! 陛下のご入場です!」


 儀典官の声が響いた。ファンファーレが鳴り響く。


 会場の全員が立ち上がり、椅子の横に膝を着いて頭を下げる。シンジたちも倣って膝を着く。


 国王入場の調べとでも形容できそうな曲が高らかに流れる。こういった儀典的なものは、どうしてもテンプレになる。どこの国でも一緒だ。


 やがて音の波が収まると、再び儀典官の声が響いた。


 「皆様、お直り下さい」


 全員が、一斉に立ち上がり、座席に座って顔を上げた。


 正面の玉座には、男が座っている。


 国王、ジョセフ=アーサー=ウィンサー。通称ジョセフ7世。48歳。


 長身の美丈夫で、一国の王らしく眼光は鋭く、だが柔和な笑みを浮かべている。


 「皆の者、楽にするがよい」


 魔術で声を増幅しているのだろう、国王の声が響いた。


 すかさず儀典官は、今回の式典の意義と理由を述べ始めた。


 今回の式典は、オークロードによる1000匹もの魔物暴走(スタンピード)を被害ゼロで撃破したこと。これに伴う献上、そのお披露目。さらに、その褒賞としての叙爵・陞爵についてであること。


 それを、華美な修飾をつけた言葉で語る。


 詳細を知らなかったのであろう法衣貴族の参列者が、いちいちどよめくのが面白い。もちろん参列者が知らないとは思えないので、恐らくそういう演出なのだろう。


 「それでは、献上品を披露いたします。皆さまご注目ください」


 大小の布が、同時に取り払われた。巨大なオークロードの体躯。だが、立っているために、まるで生きてこちらを睨んでいるかのように見えた。


 小さな台座には仙桃茸が置かれている。小さいけど、存在感があった。


 おおっ、という会場のどよめきが響き渡る。


 「まさか、あれは仙桃茸ッ!? 7本もあるぞッ!!?」


 近くの貴族が声を上げた。茸マニアだろうか?


 「これらの素晴らしき成果を挙げたのが、今回叙勲される方々となります」


 儀式は進んでいく。


 「それでは、叙爵の儀に移ります。騎士アイリス=ランチェスト、前へ」


 アイリスが、呼び出しとともに立ち上がり、赤絨毯の上をゆっくりと歩いて行く。ドレスアーマーであるため、大股ではなく上品に進む姿は、華やかでありながらも颯爽としていて、流れる金髪はふわりと揺れ、清冽な風を感じる。


 「騎士アイリス=ランチェストは、冒険者シンジとともに魔の森から発生した魔物暴走(スタンピード)を、一切の被害なく撃退。さらにオークロードを直接退治したものである。この功により、臣一同、騎士爵家設立を推挙するものなり」


 アイリスが玉座のある階段の前に立ち、そこでひざまずき、首を垂れる。昨日の予行演習通りに。


 国王が玉座から立ち、後ろに控える儀典官から叙爵証である羊皮紙を受け取ると、これを読み上げた。


 「騎士アイリス=ランチェスト、汝に騎士爵家設立を許し、諸侯騎士爵に封ず」


 おおっ、というどよめきが再び起こる。『諸侯に封ず』という言葉は、領地を下賜するという意味でもある。爵位のみなら『叙す』と言う。


 国王から儀典官の掲げる黒い盆に叙爵証を戻すと、儀典官は一礼し、盆を掲げながら静々とアイリスのもとまで歩いてくる。


 別の儀典官が、跪くアイリスの後ろに回り、黒色のマントを着せる。黒は騎士爵の色である。男爵家と同じ『ランチェスト』性だが、騎士爵は通常そのまま分家として同じ姓を名乗ることが多い。


 これがもし準男爵家以上となると、区別のため分家でも姓を変えることが多い。


 アイリスのマントには、家紋などは掲げられていない。周りの貴族たちのマントには、それぞれ家紋であろう文様が施されている。


 これは、アイリスが自分の家紋を新たに創って紋章院に登録し、認可を受けた上でこの下賜のマントに刺繍を施すのである。


 アイリスが立つと丁寧にカーテシーを行い、席に戻る。


 そう、この礼が男女で違うのである。チラリとシンジがアンリを見ると、アッという顔をしてシンジを見てきた。


 「続いて冒険者シンジ、前へ」


 儀典官の声に合わせ、シンジは立ち上がった。ゆっくりと中央へと進む。


 その間、儀典官はシンジの功績を読み上げる。


 「冒険者シンジは、ランチェスト騎士爵アイリスを助け、魔の森から発生した魔物暴走(スタンピード)をともに撃退。さらに貴重な仙桃茸を発見、チェスター伯を通じて献上したものである。この功により、臣一同、騎士爵家設立を推挙するものなり」


 シンジはアイリスと同様に、玉座のある階段の前に立ち、そこで跪き、首を垂れる。


 「シンジ、汝にクロスの家名を授け、騎士爵家設立を許し、諸侯騎士爵に封ず」


 おおっ、という先ほどよりも大きなどよめきが起こる。一介の冒険者が、いきなり『諸侯』になったのだ。インパクトは大きい。


 別の儀典官がシンジの後ろに回り、同じく黒のマントを着せる。


 家名が『クロス』になったのは、もちろんシンジの希望である。予め男爵から聞かれていたので、元の黒須性から採ったものだ。


 シンジは立ち上がる。一瞬、ここでカーテシーをしたらどうなるだろうと考えたが、さすがにシャレで済みそうにないので自重することにする。アンリはしばくが。


 胸に握り拳を当て一礼し、昔読んだ英雄小説みたいに、ばさりとマントを翻して元の立ち位置に戻る。シンジの中の中二病が疼いただけだ。後悔はない。


 チラリとアンリを見ると、あからさまにホッとしていたのがおかしかった。でも後でしばく。


 儀典官が儀式の終わりを告げた。国王が退場すると、貴族たちも三々五々、控室に戻る。シンジはアイリスとともに、伯爵に与えられている控室に戻った。

俺もカーテシーしてみたいッ! と言う方は★とブックマークをお願いいたします。(チガ)

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