67.テンプレ的に、野営飯を作る俺。
シンジ君、野営飯を作るの巻。
飯テロにはなっていない、筈。(ヲイ)
「じゃあ、我々は出発するアル。村長さん、色々お世話になったアル」
チャンの言葉に、総出で見送りに来ていた村人が、歓声を上げた。その声は、シンジに向けられたものだ。
「シンジさん、皆シンジさんの言葉を待ってるアル。挨拶するヨロシ」
「えー」
「シンジ、そこは素直に応じろよ」
ボーブが呆れたようにシンジの頭を小突いた。
「しょうがないにゃあ」
シンジが、しぶしぶ前に出た。
「み、みんな、ありがとねー、元気でねー」
それだけ言って、大きく手を振る。村の皆が大歓声で答えた。シンジはちょっと仰け反ると、そのままそそくさと隠れた。
「照れたな」
「照れたみたいだね」
「照れてやがらぁ」
「「照れたアルね」」
「……テレ」
「うッ! うっさいなあもうッ!! ほら行くよ!?」
シンジの作った、村人の門が開けられた。
「では、出発するアル!」
チャンの掛け声ともに、馬車は動き出した。
荷物をシンジが貸し出したマジックバッグに入れることで、全員が馬車に乗れるようになったので、進みが早くなる。
シンジたちは、歓声に包まれながら門を出た。
◇
「あー、やっと落ち着いた」
シンジがため息をつきながら言葉を漏らす。
「照れてたからな」
「キキッ、照れてやがったからなぁ」
「照れていたからアルね」
同じ馬車に乗っているチャン、ボーブ、スナーブからいじられる。
「もうええっちゅーにッ!!」
シンジはいじるのが大好きだが、いじられるのはあまり慣れていない。元の世界での事もあるが、チュートリアルが長かったこともあるだろう。
「で? 次の目的地は?」
ちょっとふてくされながら、シンジがチャンに聞き返す。
「シンジ、耳赤いぞ」
ボーブがニヤリと笑いながら指摘してきた。
「……ボーブさん、夕食はオークの生肉ね」
「ウソだろオイッ!! 謝る! 許してッ!!」
ボーブが必死に頭を下げる。それを見て、全員笑った。
「アイヤー、ボーブさん形無しネ。シンジさん、次は隣のエルゲス伯爵領アル。ちょっと遠いので、明日明後日は野宿アル」
どうやら、違う領主の土地に入るらしい。
「なるほどー、魔の森の近くを通過するのは?」
「この村の街道沿いに、一か所森が張り出しているところアルね」
「ほむ、そこが要注意なの? ボーブさん」
「そこはボア系の魔物だな。途中の草原はウルフ系の魔物が出る。もちろん、ゴブリンやオークも出るぞ。あいつらはどこにでも出るからな」
「なら、野営はどこでするの?」
「街道沿いにはぁ、野営用の広場もあるぜぃ。井戸もなぁ」
そちらはスナーブが答えてきた。
「今回は、シンジさんのおかげで荷物が軽いアル。馬車も早くなるので、野営地にも早く着くと思うアルね」
その予言通り、何事もなく予定より1時間も早く野営場に着いた。
「では、野営の準備をするアル。シンジさんは、ボーブさんにやり方を聞くヨロシ」
そのチャンの声に、全員が一斉に動き出す。暁の鐘のメンバーは、近くの林に入り薪になりそうな枯れ枝を拾いに行った。もちろん拾った木がすぐに使える訳はないので、持ってきた薪の補充用だ。
「シンジ、お前は全員分の料理が出来るか?」
「だーいじょーぶ、まーかせて」
シンジが胸を張って平手で叩く。
「じゃあ、まず竈作りだな。端の方に石が積んであるから、それをここに持ってきて」
「ボーブさん、ここで良いんだね。大丈夫、作っちゃうから」
そう言うとシンジは、両手を胸の前でパンと鳴らすと、地面に手を当てる。すると、地面がモコモコと盛り上がり、あっという間に鍋が2つ置ける竈になった。隣には、調理用の台まで作られている。
「そうか、シンジお前土魔術得意なんだったな」
「そうそう。んじゃ、皆が戻ってくるまでに調理始めちゃうよー」
シンジは、どこからか取り出した台布巾できれいに台を拭くと、次にまな板と包丁を取り出す。さらに中華鍋と寸胴鍋など、調理器具をこれでもかと取り出した。
「れぇっつ! くっきぃんぐぅー♪ ちゃらちゃっちゃっちゃっちゃっちゃ♪ ちゃらちゃっちゃっちゃっちゃっちゃ♪」
シンジは、人形が踊って3分間で調理するテーマ曲を口ずさみながら、キャベツを取り出して風魔術で千切りにして皿に盛る。さらにオーク肉を取り出しては厚めに切り、粉をまぶして卵を割って作った卵液に通すと、パン粉を付ける。その作業をしながら水魔術で寸胴鍋に水魔術で水を張った。
「ここは手抜き♪ 3分しかないからねー」
そう言いながら、いちょう切りにした根菜をどぱどぱ入れて、細切れにしたオーク肉を入れると、一気に熱してマジックボックスへ。100倍時間を経過させ、すぐに取り出す。野菜が煮込まれて、良い感じにダシが出た寸胴鍋に味噌を投入すると、ふたを閉める。香りが辺りに散った。
「こっちも仕上げるかねー♪」
中華鍋に油をなみなみと注ぎ、一気に温度を上げる。菜箸で油温を確かめると、パン粉を付けたオーク肉を投入、揚げては出し、揚げては出し、何十枚か一気に作り上げる。揚げた半分をマジックボックスに戻し、残りをまな板に並べて包丁で切っていく。さくりさくりと、小気味いい音と上質な油の香りが暴力的にたち込める。
ポカーンと口を開けて見ていたボーブの口から、知らず知らずよだれが垂れた。
いつの間にか戻って来ていた暁の鐘メンバーも、チャン親子も、同じ表情でよだれを垂らしている。
「よーし、出来上がりー♪ 後は、炊いておいたご飯を盛ってー♪ みんなご飯だよー」
そこには、見事な豚汁付きカツ定食が鎮座していた。野営飯のはずだったのに。
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ちょっとだけ入院中のため、次回更新厳しいですね。無理そうです。




