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66.テンプレ的に、死に至る病を発症する俺。

シンジ君、持病を発症するの巻。

いや、深い意味はないからね。たぶん。(ヲイ)

 「……アイヤー、良いもの見たアルねー」


 リンシャンが、うんうんと肯きながら門扉を見つめている。


 「よし、こっちオワタから、森側の門もやっちゃおうか」


 シンジがお気楽に歩き始めると、皆がぞろぞろついてくる。傍から見ると、観光ツアーの様である。


 「森側の門扉も同じものにするアルか?」


 そうリンシャンが聞いてきたので、シンジは少し考える。同じデザインやアイデアでは面白くないのだ。主にシンジが。


 アイデアとは、飾り付けたり格好を付けるためのものではない。本質は、問題の解決なのだ。では、この場合の問題解決とは何だろう? シンジは歩きながら考える。


 ちょうど半分の距離を来たのか、村長の家の裏手に出た。そこには、高い櫓と上の方に鐘が付いていた。先ほどの鐘の音は、ここから発せられていたのだろう。


 そこで、シンジの頭に閃きが奔った。


 「そうじゃんッ! 英雄はひとりじゃないじゃんッ!」


 突然叫び声をあげると、走り出すシンジ。皆の視界から、あっという間に遠ざかった。


 慌てて皆も追いかける。


 シンジは、インゴットを取り出しつつ扉の形に変えながら、同時に壁を石に変えていた。


 「魔術の同時進行……ウソだろ? 信じられないよ」


 魔術士であるマリックが、目の前で展開される魔術の妙技に圧倒されている。


 その門扉に刻まれているのは、群像だ。


 鐘楼に登り鐘を鳴らす村長の息子、教会らしき建物の中で農具を振り上げる村の男たち、オークどもを調理している村の女たち。宴で騒ぐアイリスとノア、そして村の衆と子供たち。そして、杖を振り回すJIJY村長。


 そこには、村の者たちの姿が生き生きと、どこかに悲壮感と達成感を漂わせながら描かれていた。


 そう、シンジが見た村の姿が。暴虐にあきらめずに戦おうとした名もなき英雄たちの姿が、余すところなく刻まれていた。


 「こりゃすげぇ……」


 スナーブのつぶやきが、皆の心を象徴していた。


 「良し出来た! 我ながらいい出来だと思うよ」


 シンジが満足したという顔で、胸を張った。


 石門にはめ込まれた門扉は、黒光りしながら今回起きた事件を、余すところなく伝えていた。


 「街に面した扉は、領主を描いたからね。森側のこの門なら、村人を描いても文句は言われないでしょ」


 この村が続く限り、事件は語り継がれるのだろう。この門とともに。


 「だがシンジ、ここにはお前が描かれていないぞ」


 ボーブがたしなめるようにシンジに告げる。言われて皆も気付いたが、確かにシンジの姿がひとつもない。


 「そりゃそーでしょ。俺の視点で描いているんだから、俺の姿があったらホラーだよ」


 「そういう問題じゃない。たぶんアイリス様も同じことを言うと思うぞ」


 ボーブが言いたいのはそういう事ではない。


 村の危機を救ったのは、確かにアイリスだろう。村人たちも恐怖に打ち勝った。それは事実だし、讃えられるべき事だろう。


 だが、それを共にしたシンジが描かれていないことは、間違いなく片手落ちだ。村人たちの反応を見る限り、心苦しく残念に思われてしまうのではないか。ボーブが言いたいのはそういう事だ。


 「んー、その視点はなかったなあ。まあ、目立ちたくないというのはあるんだけどね」 


 シンジは、ちょっと真面目に答えることにした。ボーブの心遣いが嬉しかったので。


 「ボーブさん。今の俺は、異物なんだよ。まだこの()、いやこの国にも慣れていないし、詳しくは言えないけど今ここにいること自体が奇跡みたいなもんでね。自分の立ち位置が分かっていないんだ。変な言い方だけど」


 ボーブは、黙って聞いている。


 「今の俺は見者(ヴォワイアン)なんだろうね。もちろん詩人のような格式高い存在じゃない。ただ力を付けさせられ(・・・・・・)て、送り込まれて見る者。見て、巻き込まれて、バカやって、好きに生きる。そんな存在」


 シンジは、そのまま空を見た。ただ、その目には何も映っていない。


 「意味不明なこと言ってごめんね。まあ、そのうち見ることに飽きたり、やることが分かったら、今度はこの扉に自分を映すことにするよ」 


 「シンジ、俺は頭が良くねーからお前の言う事は良く分かんねーけど、何かあったら頼れよ。俺もたまになら付き合ってやるからさ」


 「うん、ありがとう」


 シンジは、背中を反って伸びをした。


 「じゃ、旅立つ準備するか」


 「そうだね。今夜は野営かな?」


 「ああ、その予定だ」


 「じゃ、料理頑張りますか」


 「おう、楽しみにしてるぞ」


 シンジとボーブは、ニヤリと笑い合った。


 「……ねえねえ、ふたりの言う事、良く分からないアルけど、どういう事アル?」


 いつの間にか着いてきていたリンシャンが突っ込むと、チャンがリンシャンの肩をポンポンと叩く。


 「リンシャン、男には突然意味のない事を語りたくなることが有るアルね。良い女は、暖かく見守るアルよ」


 一般的に、それは突発性中二病と言う。まさに死に至る病だ。社会的に。

俺も意味不明なことを語りたい! という方、★とブックマークをお願いします。(マテ)

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