65.テンプレ的に、門を造り込む俺。
シンジ君、村の門を造り変えるの巻。
魔改造はテンプレの醍醐味ですよねえ。(ヲイ)
シンジたちは、まず街側の出入り門の方に向かった。
「シンジ、どうするんだ?」
ボーブが尋ねてくる。
「うん、今の門が木製だからね。少なくとも金属製にはしたいよね」
安全性を担保するのに、門が脆弱だったら意味が無い。
「お前、金属の門って、ものすごく金がかかるんだぞ?」
「だーいじょぶ。まーかせて」
シンジは自信満々に言ってのけた。
門の前に着くと、シンジは腰のバッグから鉄のインゴットを取り出した。それを積んでいく。積んでいく。
「お、おい、シンジ?」
積んでいく。積んでいく。
「ちょ、ちょっと待て? いくつあるんだ?」
積んでいく。積んでいく。積んでいく。積んでいく。積んでいく……。
「こんなもんかな?」
そこには、シンジの背の高さまでピラミッド状に積み上げられたインゴットの山が出来上がっていた。
ボーブやチャンたちが、口をパカッと開いたまま見ている。
無理もないだろう。これほどのインゴットを取り出せるバッグも異常だし、冒険者がこれほどのインゴットを持っていること自体も異常だ。
「じゃあ始めよっか。まずは、今の門を取り外すね。んしょ」
シンジは、今取り付けられている木の門を少し開き、縁を両手で掴む。そのまま軽い掛け声とともに上に持ち上げ、丁番軸をすっぽ抜いて外した。
ボーブやチャンたちが、口をパカッと開いたままで、今度は目を見開いた。
シンジが静かに扉を下ろし、反対側も軽々と持ち上げて外した。
ボーブやチャンたちが、口をパカッと開いたまま、さらに目を見開いたまま、シンジの動きに合わせて首を動かす。傍から見ていると、とても間抜けな光景である。……シンジの非常識さを除けば。
「待て待て待て待てッ! シンジ! お前今なにしたッ!?」
ボーブがプルリとひとつ震えて我に返り、シンジを怒鳴る。
「え? 何したって、材料取り出して、門を外したんだけど?」
「いやいやいや、おかしいだろッ!? 何でそんなにいっぱいインゴット持ってんだよ!?」
「え? いや普通に採掘して?」
「それに、簡単に門持ち上げてんじゃねーかッ! その怪力おかしいだろッ!?」
「え? いや普通に筋力強化しただけだし?」
「……ああ、筋力強化か。って、いくら筋力強化だって、そこまで出来るかフツーッ!?」
シンジが持ち上げた門は、村人が10人で持ち上げて、やっとはめ込んだモノである。いくら木製とはいえ、守りの要となる門にするのだから、魔の森から切り出した重くて目の細かい頑丈な木が使われている。それをひとりで軽々持ち上げるのは、いくら魔術を使っても違和感ありまくりである。
シンジは良く分かっていないが、普通の筋力強化は魔力で全身を表面的に強化しているだけで、筋力としては2倍程度上昇するものだ。戦士系で魔術が使えなくても、これを使える者は多い。重い武器を振り回せるようになるのだから、戦士系にとっては非常に有益な術である。
だが、シンジの場合は人体構造を理解した上で、骨格や筋繊維一本一本を強化している。漠然と感覚的に筋力強化を行っている者たちとは、効率が比較にならない。だから、異常に見えるほど筋力が上昇するのだ。
チュートリアルでは、それが出来なかったら、強大な魔物たちに対抗できなかったのだから、必死で習得したのだ。
同じように、治癒魔術の効率も人体構造理解と比例する。ボロボロになって習得したシンジに、効率の良い学習だったろうと幼女は高笑いした。……つまり、幼女が悪い。
「じゃあ、門の周りも強化しないとね」
とりあえずボーブたちの事は置いておいて、シンジは作業を続ける。
門廻りの壁を、外側の土を掘り下げながら使って分厚くし、組成を変えつつ圧縮して石状にする。見る間に門廻りが1.5倍の高さとなり。立派な石壁に変わった。
シンジはそのままインゴットのピラミッドに近づくと、手を当てて変形させる。
「あ、せっかく銅像作ったし、これも」
インゴットは形を変え、彫刻が施された扉になっていく。彫刻のモチーフは、もちろんアイリスとノアである。
「な、なんかスゲェ事になってるぜぇ……」
「何と素晴らしいレリーフだ……」
「……美」
暁の鐘のメンバーが、感嘆を漏らす。そこに出現したのは、絵巻のようにオークどもを倒す、ノアとアイリスの姿。
「はいはい、みんな危ないから下がってねー」
シンジは、そう言うと皆を下げ、自分も門扉から離れた。
「じゃ、始めるよー」
そう言うと、手を門扉にかざし、魔術で宙に浮かせる。すると、門扉がだんだん赤味を帯びて、熱を発し始める。
「ああ、門が焼けているッ!? 何してんだシンジッ!!?」
「うん、黒さびを付けないとね。鉄だからすぐ赤さびが付いちゃうんだよー」
だいたい900℃くらいで熱して冷やせば、黒さび化するのである。これなら門も長く持つ。地球では大きな設備の必要なこの方法も、魔術なら簡単に出来る。
「うん、良い感じ」
魔術の力で最適に冷やされて完成した門は、味のある青灰色になった。きれいに黒さびが付いたようだ。そこでシンジは壷を取り出し、中の真っ黒な液体を魔術で水球状にしながら、塗料の様に塗り付けていく。見る見るうちに、鉄瓶やSLのような黒光りをする、重厚な門扉へと生まれ変わった。
「よっしゃ、完成ッ!」
シンジが満足そうに完成を告げながら、門扉を魔術で持ち上げ、はめ込んだ。
そこに誕生したのは、英雄譚が彫り込まれた、見る者を圧倒する素晴らしい芸術作品だった。
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