64.テンプレ的に、マジックバッグを貸し出す俺。
シンジ君、辺境の村設立の事情を知るの巻。
農家の生産事情は、どの国でも大変なのです。
「なッ! なんじゃこりゃあッ!? ……アヘアへ」
JIJY村長が、アイリスの銅像を見て絶叫、そのまま腰を抜かした。やはりアヘアへらしい。
「何って、英雄アイリスさんの銅像?」
シンジが答える。
「またシンジ……お前なあ」
ボーブが頭を抱えている。暁の鐘のメンバーもボー然として銅像を見ていた。
「こ、こ、これは素晴らしいものじゃあッ!! アイリス様のお姿、この村に長く残るじゃろうッ!!」
腰を抜かしたはずのJIJY村長がすっくと立ちあがり吠えると、村人たちがオーッ!! と歓声で答えた。
「お前勝手にこんなモン立てて、領主様に怒られるぞ?」
「大丈夫。この村の領主、アイリスさんになる予定だから」
こそこそとボーブが耳打ちしてくるが、シンジはしれっと切り返した。
「え、そうなのかッ!?」
「そうそう。だから無問題」
驚くボーブに、シンジは返答する。まあ、現時点はまだ伯爵が領主なのだが、知られる前にはアイリスの領地になっているだろう。たぶん。
「まあ、領主になるアイリスさんに、俺からの心ばかりのプレゼント?」
「何で疑問形なんだお前は」
ボーブが突っ込んでくる。どうやら、シンジと付き合っていくうちにボーブのツッコミレベルが上がっているらしい。……無理もないが。
銅像に盛り上がる村長たちを余所に、その横ではチャンとリンシャンが非常に悩んだポーズで頭を抱えていた。
「チャンさん、どうしたんだ?」
ボーブが尋ねると、チャンとリンシャンがこちらに顔を向けた。
「そ、そうアルッ! シンジ殿がいたアルッ!!」
「え? 俺?」
シンジが自分を指差した。
「シンジさんッ! さっきのバッグ貸してほしいアルッ! もちろん賃料は払うネッ!!」
チャンが、バッグと言って来た。マジックバッグの事だろう。あまり大勢に知られるのもまずいと、一応気にして省略したのだろう。
「うん良いよ。いくつ欲しい?」
そこで、チャンがピタリと止まった。
「そんなにいっぱい有るアルか?」
「有るアルよ」
思わず協和語がうつってしまうシンジ。だって、有るアルだし。
「……売れるほど有るアルか?」
「有るアルよ」
たぶん、大小効能取り交ぜたら1000個ではきかない。
「ただし、一般には売らないけどね。そんなことしたら、目立っちゃうし」
多くの商人や貴族、下手すれば国家が押し寄せてくるだろう。力ずくでという輩も出るかもしれない。まあ、国と争っても勝つ自信はあるが。
「でも、チャンさん依頼主だし、ボーブさんと仲良さそうだし、チャンさんだったら売ってあげる」
シンジにとって、ボーブの存在は結構重要だ。普通の冒険者と繋ぎを取ってくれるし、支部長からも信頼厚いし、何より貴重なツッコミ役だし。
そのボーブが信用している商人なら、問題ないだろう。
「おおッ……! ボーブさん、感謝するアルッ!!」
ボーブの手を、握手のようにしっかり握るチャン。ボーブは戸惑っている。
「おいシンジ、どういうつもりだよ?」
「えー? だってボーブさん、貴重なツッコミ役だし」
「そっちかよオイ!」
シンジ、正直である。
「た、ただ、今すぐは無理アル。そこまでの持ち合わせは無いアル。だから、貸してほしいアルね。街に戻ったら、買取金を賃料込みで払うアル。だから……!」
「うん、良いよー。でも、何買うの?」
シンジは不思議に思っていたのだ。マジックバッグを欲しがるという事は、商隊の馬車に載せきれない量があるという事だろう。そんなに量がある物が、この村になるのだろうか。
「麦アルね」
「麦?」
シンジは首を傾げる。商隊が出発して、初めて寄った村で買うのが麦というのが分からない。そんな特別な麦なのだろうか。
「ああ、シンジさんは知らないアルか。このラックブック村は、魔の森に一番近い村アル。だから、ここで出来る麦は、森の影響か、ものすごく品質が良いアル。それこそ、王侯貴族が食すような物アルね」
なるほど、森からの魔力のせいで、育ちが良いのだろう。だから、危険を冒してでもこんな場所に村を作ったのか。シンジは納得した。
「あれ? そんな大事な村なのに、アイリスさんにあげちゃうの? 良いのかな?」
そこで、ボーブがシンジの肩をポンと叩く。
「それだけ、魔物暴走を討伐するってぇのは、すごい功績って事だ」
「ほむ、そうなのかー」
正直、シンジに実感はない。まあ、ただそういう重要な麦を育てている村を守ったのは、非常に価値があるのだろう。
「お前も言ったじゃねーか。だから英雄なんだよ」
図らずも、英雄と言ったのは誇大表現ではなかったらしい。
「アイリス様とシンジ様のおかげで、この村の防備も強化され、麦の備蓄を出しても問題ない状況になったですじゃ。だから、今までより多く売ることが出来るですじゃ」
そこに、JIJY村長も口を挟む。今までは、魔物の襲来で畑が荒らされ、一定以上の出荷は出来なかった。が、今後は壁に守られ、その心配も軽減したという事だろう。
「なるほどー。納得した」
シンジはバックをひょいひょい3つほど取り出した。
「んじゃ、これ使ってね」
「ありがとうアル!」
そこで、シンジがハタと手を打った。
「あ、そういうことなら、もうちょっと防備強くした方が良いよね。さっき見た門だと、そこが心配だし」
シンジがニコニコ笑ってJIJY村長に言う。
「……イヤな予感がしてきた」
それを聞いてしまったボーブは、渋い顔をした。
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……某業務な天然酵母パン、美味しいよね。(ヲイ)




