63.テンプレ的に、村で人形芝居を披露する俺。
シンジ君、彫刻家になるの巻。(チガ)
ブロンズ像ってイイですよね。鈍器に。(マテ)
再び巻き起こった狂乱の宴が終わった翌日、酔いも残さずチャンたちは村の広場で荷馬車をほどき、移動式屋台の様にして販売を始める。
売られるのは、村では手に入りにくい布や薬品、ちょっとした装飾品や日常使いの雑貨や食器などだ。
その様子を横目で見ながら、護衛である暁の鐘は、ゆっくりと体を休めている。商売を手伝うことはない。力仕事などは手伝えるが、金銭が絡むことや専門的な知識が必要な商売そのものを手伝うことは難しいのだ。
その中で、シンジは子供たちにオーク退治の話をせがまれていた。
「ねーねーシンジにーちゃん、アイリス様がオークロード退治した時、にーちゃん見てたんだろッ!?」
「うん、見てたよー」
子供たちにとって、シンジはシンジにーちゃんで、アイリスはアイリス様らしい。これは、貴族のオーラが成せるものか、はたまた肉で懐柔されたからか。
「どんな感じだったの? 教えて教えてー」
子供特権のおねだり攻撃である。
「えーとね、まず、アイリスさんはロードの剣を躱して……」
「よくわかんなーい」
子供は素直で正直である。
「しょうがないなあ、良く見てろよ?」
シンジが、説明のために地面へ軽く手を当てて、魔力を流す。すると、土がもこもこと盛り上がり、やがて小さな人型になっていく。
おー、すげー、という子供たちの声が響く。
人型は、アイリスの形とオークロードの形、そしてノアの形を1/5サイズほどで成していった。シンジが、簡易的な土ゴーレムを作り出したのだ。
人型たちは、ゆるゆると動き出した。
「よーし、これで再現するぞー」
それを聞いた子供たちの目がキラキラと輝きだした。
オークロードの土人形が、巨大な剣を振り回す。それをひらりひらりと躱すアイリス人形。
「襲い掛かるオークロードの剣! それをアイリスは、ひらりと躱すのだったッ!!」
パパンッ! と、シンジはいつの間にか取り出した扇子を、手のひらに打ち付けて音を出しつつ、まるで弁士のような調子である。
やんやと囃し立てる子供たち。
「そこへ主人のピンチに、さっそうとノアが後ろ蹴りッ!!」
パパンッ!
「逃げようとするオークロード! そこを逃がすものかと後ろから足を払うアイリス!!」
パパンッ!
「『村人に仇為すオークロードよッ! 正義の刃を受けるが良いッ!!』アイリスの剣が、オークロードの首へと突き刺さったッ!!」
パパンッ! パン、パン、パンパンッ! パパンッ! 激しく扇子が打ち鳴らされた。
すっかりシンジの名調子で、アイリスを格好良く演出する。物語はクライマックスに突入する。
「うぎゃあー! という声とともに、オークロードは、ついに倒されたのだったッ!!」
パパンッ!
オークロード人形の左手が、天を仰いて力なく落ちる。
「これにて、アイリスのロード退治、一巻の終わりであるッ! お粗末ッ!!」
パパンッ! 締めの扇子を打ち鳴らし、シンジが一礼する。
おーッ!! という声と、拍手が辺りに響いた。シンジが頭をあげて見回すと、いつの間にか子供たちの後ろに親たちも立ち、シンジの人形芝居を見入っていたようだ。
「シンジにーちゃん! すごいすごいッ! アイリス様、格好良かったーッ!」
子供たちも大興奮で飛び上がって喜んでいる。
「おー、受けた! あ、どもども。あ、どもども」
シンジがこっそりガッツポーズ。だが、十分お金が取れるレベルの芸である。実際に、一緒に見ていた大人たちからおひねりがひょいひょい投げられたので、シンジはそれをキャッチしながらペコペコ頭を下げている。
「……しかし、このアイリス様の決めポーズ、像にして村の広場に飾りたいくらいだな」
オークロードを狩ったアイリス人形は、剣を高々と上げたポーズで固まっている。それを見ていた村人が、ポツリと漏らした。
「おっちゃんナイスアイデア。それいただき」
何を思ったか、シンジは腰のポーチから、次々と何種類かの金属のインゴットを取り出した。唖然と見守る大人たちと、ワクワクを全身で表現しながら見つめる子供たち。
シンジは、その色の違うインゴットをいくつか並べ、手で触り始める。すると、インゴットは急に溶けたように液状となり混ざり合った。赤味を帯びた銅色の金属が、だんだん黄金色に輝いていく。
「金、を作っているのか? 錬金術、なのか……?」
「うん、おっちゃん良く知っているみたいだけど、ちょーっと違うかな。これは、青銅だよ」
どうやら、銅と錫を混ぜていたらしい。
「で、これを整形していくとね」
金属がスライムの様に動き、中に空洞を作りながら人の形になっていく。
「全部金属だと重くなっちゃうし、量も使っちゃうから、中空になるのは勘弁ね」
そう言いながら、シンジが指をウネウネ動かすと、どんどん先ほどのアイリス人形のポーズに組み上がっていく。
「にーちゃんすっげーッ! アイリス様そっくりーッ!!」
そこには、実物大のアイリス像が、剣を高く掲げて立っていた。
「じゃ、仕上げだねー」
シンジがそう言って、アイリスの足元に手を付く。すると土が盛り上がり、アイリス像を持ち上げていく。
ちょうどアイリス像の頭の高さが3m近くなったところで、台になった土はどんどん圧縮され、石の様な光沢を放つようになった。
「よし完成ッ! なかなかいい出来じゃない?」
そこには、いつの間にか台座に『英雄アイリス像』と刻まれた、輝くブロンズ像が爆誕していた。
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