62.テンプレ的に、再び村で宴会する俺。
シンジ君、再び飲み会するの巻。
忘年会の季節ですね。(ヲイ)
シンジと暁の鐘が村長宅に入ると、村長一家が勢ぞろいしていた。
「おおッ! シンジ様もご一緒でしたかッ!!」
村長がぶんぶんと杖を振り回す。家族が必死に避ける。まるで、どこかの新喜劇の様である。
「村長さん数日ぶりー。元気そうだねー」
「おかげさまで、村の衆は全員元気ですぞい」
村長がぶんぶんと杖を振り回す。息子に当たって、ぎゃぴ、という声が漏れた。痛そうである。
「今日はチャン殿も久しぶりに来られたし、宴会ですじゃッ!!」
おおーッ! という村長一家と村人たち。
「あ、それなら、オークとお酒、要る?」
おおおーッ!! 先ほどより盛り上がる村長一家たち。
「ありがたいありがたい。 ワシは、末期の水はあの酒で、と決めておりますのじゃあッ!!」
一番盛り上がるのは村長だった。いや、絶対あと20年以上必要ないよね、とシンジは思った。
その様子に、ポカーンとするチャンと仲間たち。
「チャン殿ッ! よくぞ、よくぞシンジ様を連れて来られたッ!! さささ、今宵は飲みましょうぞッ!!」
「は、はあ」
ポカーンとしたままのチャン。村人たちの勢いに圧されるまま、全員が広場へと連れ出された。
「村長さん、オークは前回と同じくらいで良い?」
「大丈夫ですぞ!」
シンジは、腰のバッグからマジックバッグを取り出すと、そこからオークナイトの死体を10匹取り出した。
「な、ま、マジックバッグアルかッ!?」
チャンが絶叫する。それも仕方がない。一介の初心者護衛が、オーク10匹も入るマジックバッグを持っていたのだから。
何しろオーク10匹の容量は、荷馬車3台分に相当する。それが余裕で入って、しかも時間経過のないバッグは、本来金貨100枚もの価値がある軍事物資だ。ちなみにこれは、まだ解体していない分である。いくつかはバッグごとギルドに預けてある。
ただしシンジは、これが大したものだとはわかっていない。材料さえあれば、今のシンジでも余裕で作れる程度のものだからだ。この価値観のずれは、後にシンジ以外のメンバーの頭痛の種にもなる。
◇
ボー然としたままのチャンたちを余所に、宴の準備は進んでいく。
オークナイト肉の焼ける臭いが、たまらなく空腹を刺激する。岩塩とシンジ特製の香辛料ブレンドが織りなす、スパイシーで甘いような香りが、辺りにたち込める。
「チャンさん、ボーブさん、皿は持った? いい感じに焼けているよー」
「わ、わかったアルね。貰うアル」
「これ、すっごくおいしいアル! オーク肉なのに、しつこさが全くないアル!」
ひと口先に食べ始めたリンシャンが、驚きの声を上げた。それに釣られたか、チャンたちも肉に手を出した。
「こ、これ、普通のオーク肉じゃないアル。上位種アルね!?」
チャンが驚きの声をあげた。オークナイトなので、味も滑らかさも数段上なのだ。
「うん。オークナイトだよー」
あっさりと言うシンジに、絶句するチャンたち。オークの4倍以上の値が付く肉だ。無理もあるまい。本来、農村でほいほいBBQに使う肉ではない。高級料理店で消費される肉なのだ。
「ほらほら、ボーブさんも。お酒はどう? 感想聞かせてね」
シンジは自信作のブレンデッドウイスキーをボーブたちに渡す。その場で作ったカップに、トワイスアップで飲ませる。この辺がシンジのこだわりだ。
「うわ、なんだこれッ! ドワーフの火酒かッ!?」
酒精の強さに、ボーブが驚きの声を上げた。やはり蒸留酒はこの世界にほとんど出回っていないらしい。
「香り……素晴らしい。これは良い。生きててよかった。もう一杯」
アンダーソンがはっきりしゃべった。他の暁の鐘メンバーが目を剥いて驚いている。
「うまい酒は、生きているのを実感するよね」
シンジが、肯きながらそれを肯定する。
「チャンさんにはこっちが合うかな?」
シンジが、赤味がかった酒を、小さなグラスでチャンに渡した。チャンが恐る恐る口を付ける。
「旨いアル! なにアルかこの酒はッ!!?」
チャンが絶叫する。
「紹興酒って言うんだけど、チャンさん知らない?」
どうやら初めて飲んだらしい。そうなると、チャンの故郷では作っていないのかもしれない。
「この辺のお酒、売れるかな? かな?」
チャンの目が光った。
「シンジさん、売るほど持っているアルか?」
完全に商売人の目になっている。
「売るほどはあるよ。でも、無限には無いから、その辺は明日以降に相談しましょ♪」
シンジは良い笑顔で答えた。
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