61.テンプレ的に、再び村にたどり着く俺。
シンジ君、村へたどり着くの巻。
ラックブック村……。(ヲイ)
「な、なにアルかッ! この壁は……ッ!?」
ラックブック村に続く街道を進むと、突如目の前に現れた、ずーっと連なる土で出来た壁。
当然、前回チャンが来た時には、こんなものはなかった。
「すごいアルね! 村の防備、完璧じゃないアルか?」
リンシャンも興奮気味だ。
「なるほど、これか」
ボーブも、話は聞いていたのだが、実際に見ると感心したようで、しきりに肯いている。他の3人もだ。
前回シンジが街道に沿って開けた壁の穴には、粗末ながらも木の門が取り付けられていた。
「うーん、この木の門だと、ちょっと防備上心配だねえ」
シンジが、正直な感想を述べると、全員がうんうんと肯いた。まあ、堅牢な土壁部分と比較したら、そう思ってしまうのも仕方ないのであるが。
馬車が門のところまで近づくと、土壁の近くは完全に空堀になっており、門に連なるところだけが道となって奥に続いている。シンジが修復したままの状態だ。
門の上には、木製の物見台が見える。そこには、初老の村人がひとり、座ってこちらを見ている。
「商隊の人かぁー!? 全員馬車から降りて、こちらを向いてくれーぇ!!」
村人が声を張り上げた。村の防衛のため、そういうルールが出来たのだろう。いかに盗賊が少ない世界だと言っても、当然の用心だ。魔の森に近いためか、今までそんなことに気を遣う余裕すらなかったのかもしれない。
「分かったアル。全員馬車から降りるアルね」
チャンの判断で、護衛も含めた全員が、馬車の前に立った。
「これで全員アル! 問題ないアルか!?」
チャンが初老の男に問いかけると、男は声を返してきた。
「おお、チャンさんかぁッ! ちょっと待ってくれ! 今開門」
男の声が途切れた。そこで、シンジと男の目が合う。
「シンジ様ッ!? シンジ様じゃないですかッ!!」
「「「「「「シンジ様ぁ!?」」」」」」
商隊全員の声が揃った。
「シンジ様ッ! すぐ開門しますッ!!」
初老の男が、慌てて門の裏に降りたのか、すぐに姿が見えなくなった。
「……シンジさん、村人から『様』付けされるとか、アナタ何やらかしたアル?」
チェンが信じられないものを見るようにシンジを見た。
「あー、この村だったのか。シンジがやらかしたのは……」
ボーブが、右手で顔を覆ってつぶやいた声が静かに響く。
「えー? 俺のせい? 殺ったのはアイリスさんだよ?」
シンジの主張は、ただ風に流されるだけだった。
◇
開かれた門を潜り、荷馬車はコトコト進む。
「村の中は変わっていないアルな」
ぼそりとチェンがつぶやいた。あの魔物暴走からそれほど日数が経っているわけではない。当然だろう。
畑仕事をしていた村の衆が、通り抜ける馬車を見て片づけを始めた。買い物の準備をするのだろうか。シンジは何となく、行商が村に来る時のちょっとはしゃぐような空気を感じた。
畑を抜けると、村の中心部が見えてきた。あの教会と村長の家が並ぶ、広場になっているあたりだ。
「村長さんに挨拶するアル」
馬車を止めると、チャンはすたすたとリンシャンを連れ、村長の家に向かう。シンジが一緒に行かなくて良いのかとボーブを見ると、ここは待っていてよいと、顎で合図された。
いつの間にか、シンジとボーブは無言で会話できる仲になっていたようだ。
「なぁおいシンジ、お前さっきぃ、様付けで呼ばれていたよなぁ? ボーブは何か知っているみたいだったけぉ、何やったんだぁ?」
スナーブから質問が飛んできた。相変わらず特徴的なしゃべり方だ。
「いやあ、言っても良いものかどうか。ボーブさん、どうなんですかね?」
「まあ、ウチの連中なら、口止めしておけば大丈夫だろ。ギルマスも俺から伝わることは分かっているだろうし」
ボーブからOKが出たので、シンジは簡単に説明することにする。
「実は、かくかくしかじかで」
「何だよぉ、かくかくしかじかって?」
「えー、これで理解できるはずなんだけどなあ」
そういうものではない。
「まあ、簡単に言うと、俺とアイリス=ランチェスト騎士が、オークの魔物暴走を止めて、アイリスさんがロードにとどめを刺したって話ですよー」
「ほー、オークロードね。そりゃぁすげぇや。……は?」
3人が動きを止めた。
「そりゃ、そうなるよな。俺だって止まったものな」
うんうんわかるわかると、ボーブが肯いている。
「まあ、シンジの討伐ランクはいきなりシルバーだ。これで察してくれや」
ボーブが仲間たちの肩に手を置いて、慰めるようにポンポンと叩いた。
「ねー、みんなこっち来るアルよー」
そこへ、村長宅から顔を出したリンシャンから呼び出しがかかったので、全員で村長宅に向かうのだった。
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