60.テンプレ的に、護衛任務で早速やらかす俺。
シンジ君、ダーツの妙技を見せるの巻。(チガ)
遠距離、中距離、近距離。シンジ君は汎用人型決戦平気です。(ヲイ)
2台の馬車は、シンジたちを引き連れながら、のどかに進んでいく。
荷馬車はそれほどスピードが出るものではない。せいぜい人の早歩き程度のものだ。道が舗装されているわけでもないし、ゴムタイヤを履いているわけでもないので、当然なのだが。
もちろん、飛ばそうと思えば飛ばせる。だが、馬車が先行しても危険なだけだし、乗せている荷物も破損の可能性が高くなる。さらに馬の消耗も激しくなる。商人は、そんな無駄なことはしないのだ。
「のどかだねぇ~」
シンジは、早歩きのスピードを楽しみつつ、周りの風景を眺めながら街道を進む。
「シンジ、お前ちゃんと警戒をしてんのか?」
ボーブがちょっと咎めるようにシンジへ注意をしてくる。が、シンジは平常運転だ。
「うん、この街道の前後左右1km以上、こっちだと1メイルートだっけ、何もないよ」
ボーブがちょっと目を見開いた。
「お前、1メル先まで分かるのか?」
メイルートは、略してメルと言われることが多い。
「うん、そうでないと生き残れなかったしね」
「……そうか」
何やら深刻な感じで受け止めたらしいが、そういう能力がチュートリアルで鍛えられたのも、そうでなければ容易く殺されたのも事実である。伊達に100回以上死んでない。
「ん? 何やら空から接近? んーと」
シンジは、腰のバックから何やら取り出す。もちろん、実際にはバッグからではなく、アイテムボックスからなのだが。
「どうしたシンジ?」
ボーブは、急に厳しい顔になってごそごそ始めたシンジを見た。
「うん、もうすぐ……うりゃッ!!」
掛け声一閃、シンジが左手を斜め上に振る。きらりと一瞬日を受けて、何かが飛ぶ。シュッと空気を切り裂く音。一呼吸後、クエエェッ! と、鋭い鳴き声が響く。
「な、なんだッ!?」
ボーブが驚くと、ずいぶん先から黒いものが、錐もみしながら空から落ちてくるのが見えた。そのまま、バサッと落ちる音が響く。
「よっしゃ、一撃!」
シンジが満足げにうなずく。
よく見ると、200mほど先に、何か暴れているのが見えた。
「スナーブッ!!」
「あいよぉッ!」
ボーブがスナーブを呼ぶと、一瞬で短剣を抜き、掛け声とともに走り出すスナーブ。速い。
「な、なにアルかッ!?」
チャンが驚きの声を上げて、馬車が止まった。
そこへ、スナーブが何かを右腕で掴み、こちらに駆け寄ってきた。
「キキッ! すげぇぞぉッ! デッドホーク一撃だぜぇッ!」
それは、スナーブの身体と同じくらいの大きさを持つ鳥だった。『空の狙撃手』の異名を持つデッドホーク。その鋭い爪は、急降下してオークの頭蓋骨を掴み割る。美しい羽根を持ち、その風切り羽は、矢羽根としては最上級と言われている。
この商隊の誰かか、もしかしたら馬を狙っていたのかもしれない。それをシンジが未然に防いだことになる。
見ると、デッドホークの首には、ちょうどダーツの矢のように十字になった羽が付けられた、30cmほどの金属の太い針が深々と突き刺さっていた。
「シンジ、さっき投げたのはこれか?」
ボーブが、首から抜いた手矢を持ったまま、シンジに問いかけた。
「うん、そーだよ。一撃で決まると気持ちいいねえ♪」
「イヤ凄いのは凄いんだが……。何で空飛ぶ鳥を正確に打ち抜けるんだ?」
「ね、ちゃんと警戒してたでしょ?」
それを聞いたボーブたちが、呆れたようにシンジを見る。
「す、すごいアルね……。このホークの羽、売ってくれるアルか?」
さすがは商売人、チャンがすかさず交渉を持ちかけてきた。
「これって肉食の鳥だよね。たぶん肉は食えないから、欲しいならあげますよー。魔石は使いたいから貰うけど」
「私、商売人アル。良いものは、ちゃんと金出して買うアルね」
チャンは義理堅い商人のようだ。
「ほむ、それは失礼しました。では、お売りしますね」
シンジは、そこに商売人の倫理を見たので、すぐに謝り、売却を約束した。こういう商人とは、長く付き合いたいと思う。
解体もするため、ちょうどいいのでそこで小休止を取ることになった。
デッドホークの解体は、スナーブがやってくれるというので、シンジはお任せする。そこへ、羽根の代金を持ってきたチャンと話をすることにした。
「チャンさん、ちょっと良いですか?」
「どうしたアルか?」
「一応コースの確認を。この先、街道沿いの村に一泊して、そこから隣の辺境伯領へ行くんですよね」
「そうアル。この先のラックブック村が、魔の森に一番近い村アルね。そこは、この前魔物の群れに襲われたらしいアルが、被害がゼロだったそうネ。縁起が良いし、そんな事があったなら物資も足りないだろうから、そこで一泊しながら軽く商売するアル」
シンジは、村の名前に聞き覚えがあった。
「ん? そこって、この前行った村かな?」
「シンジさん、知っているアルか?」
「んー、たぶんだけど、行ったことがある村だと思います」
やはり、あの魔物暴走に遭った村だろう。数日前に行ったばかりだから、またすぐ顔を出すのも変な感じがする。それに、もうすぐアイリスの領地になるはずだ。
「そうアルか。知り合いはいるネ?」
もしそうなら、村人全員がシンジの事を知っているだろう。ちょっと、どんな反応になるか怖い気もするが。
「んー、それが本当に行ったことがある村なら、村長以下みんなに知られている、かな?」
「それは良いアル。商売は信用第一ネ。私も村長さん知っているアルが、杖を避けるの大変だったアル」
「あー、もしかして村長アヘアへ言ってました?」
「言ってたアル」
それは、間違いなくあの村だろう。
「解体も終わったみたいだし、出発するアル」
商隊は再び出発する。アノ村に向かって。
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