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53.テンプレ的に、神殿で深淵を覗いた俺。

シンジ君、深淵を覗いて見返されたの巻。

シンジ君もヤラレることがあるわけです。(意味深)

 光が晴れると、あの神の間に戻っていた。


 「使徒様、お戻りですか」


 すっかり服を着こんで、まじめな顔に戻ったフレディが、シンジの前に膝をついて最敬礼で迎える。


 その姿は、鍛え抜かれた騎士のようで非常に格好良い。……あの狂乱の様を見ていなければ。


 「使徒様、あなた様のおかげで、私は聖痕をいただくことが出来ました。感謝に堪えません」


 その頬は涙と歓喜にぬれ、心の底から清らかに喜んでいると分かる。……あの狂乱の様を見ていなければ。


 人は、自分の価値観でしか物事を見ることはできない。


 だからこそ、自分の価値観を広く高いものにするために勉強が必要なのだ。


 だが、あの狂乱は勉強して良いものなのだろうか?


 「うん、まあ、よかったね」


 とりあえずシンジは右から左に受け流す。自分の精神的健康のために。


 「使徒様、私が聖痕をいただいたことで、神殿では祭りが行われます。是非とも主賓としてご参加いただきたいと」


 「あー、フレディ様」


 「様付けなどとんでもないッ! ぜひ呼び捨てにしていただければ」


 「待って待ってちょっと待って。俺が使徒だって秘密だよ? 呼び捨てとか、主賓とか、バレバレになっちゃうじゃん」


 すると、フレディが頭を抱えてうずくまった。


 「ううう……私は恩人たる使徒様に御礼も言えず、祭りにもご出席いただけぬのか……神のご意思にもかなわず……。うん、死のう」


 「待って待ってちょっと待ってッ!?」


 何とかフレディを説得し、『フレディさん』『シンジ殿』でお互いに妥協した。




 ◇




 「で、今度は何をやらかしました?」


 アンリからの突き刺さるような信頼の視線が痛い。


 「いや、俺は何もしてないよ? ホントだよ?」


 「普通に考えて、神殿長と一緒に別の部屋へ招かれるなど、いくら短時間でも気になりますよ」


 おや、とシンジは思った。体感だと、幼女と30分は話していたような気がするのだが。どうやら、あの天上界? では、時間の進み方が違うようだ。


  「フレディ殿、別室で何かあったんですか? シンジさんと話したり、私を留めたりする事情が」


 シンジが使徒であることは明かさないことになっているので、ここはフレディに任せるしかない。


 「なに、大したことではありません。ひとつは、今回私が聖痕を授かったことを報告しようと思ったのです」


 「えっ!? フレディ殿、それは本当ですかッ!?」


 アンリが非常に驚いている。この世界で聖痕を授かることは、そんな大ごとなのだろうか? ……はっぱ踏み踏みなのに。


 「ええ、それを伯爵様にお伝えいただきたいということと、もうひとつはシンジ殿と一緒に祈った時に授かったので、私も彼には恩義を感じたわけです。ですから、私に出来ることがあれば、彼のお味方をしようと思っていることを承知置きください」


 なかなか上手い言い方だ。聖職者として嘘は何ひとつないから、これであれば神殿としてシンジのバックアップを出来る状況が作れた事になる。


 (まさに、一流の聖職者は一流の政治家でもあるな、うん)


 「しかし、フレディ殿が聖痕を得たということは、枢機卿となってこの街からもっと大きな神殿に移ることになるのでは?」


 「いえ、この神殿を大きくすることになると思います。名目上、枢機卿が配置される司教座聖堂のある大神殿格になる可能性があります」


 「なるほど、それは喜ばしい事ですね。本来なら、大神殿は最低でも辺境伯領以上に設置されるものと思っていましたが」


 そこで、フレディがこちらに向き直った。


 「シンジ殿、あなたはこの街、伯爵領を早々に出るおつもりはありますかな?」


 「いいえ全く」


 せっかく伯爵や男爵など、この街の権力者と顔つなぎが出来ているのに、それをすてるなんてとんでもない!


 伯爵は、この前会った感じでは、所謂悪徳貴族な感じはしなかった。


 仮に伯爵の周辺にがそういう人物がいたとしても、男爵やフレディが盾として使えそうだ。自己防衛大事。


 それに、この領に隣接する魔の森は、シンジにとって素材の宝庫である。下手に栄えている土地に行っても、シンジにとっての面白みはない。


 何より魔の森近くに領地が貰えそうなのだ。冒険者活動は続けるにしても、自由に使える辺境の土地は、テンプレ達成に大いに役立つだろう。


 「ならば、シンジ殿に恩を返そうとする私がこの地に残ることも当然です。これも創造神テプレーナ様の御計らいです」


 「は、はあ。しかし、本神殿の許しは出るのでしょうか?」


 「それは全く問題ありません。総本神殿に居られる総大祭司長様も祭司枢機卿様方も、この国の本神殿総祭司長様も、必ずや賛成いただけます」


 シンジやフレディにしかわからない話だが、シンジは創造神の使徒(おもちゃ)である。その使徒に便宜を図るのは、神殿として当然すぎるほど当然の事なのだ。さらにそれが縁で、聖痕持ちまで増えたのだ。一地方の神殿を大神殿に格上げすることなど、総大祭司長の肯きひとつで終わりである。


 「わかりました。一連の話は、私から父と伯爵様に伝えておきます。シンジさんがこの街に居続けて下さるつもりだと分かったことも、大きな収穫です」


 「まあ、下手な場所に移動して、権力で飼い殺しにされるなんて望んでないからね。伯爵様や男爵様の迷惑にならない範囲で自由にやらせてもらいますよ? フレディさんもよろしくね」


 「シンジさんが自由にやるって、そっちの方が怖いんですけどね」 


 「大丈夫大丈夫、ちょっと珍しいものを採取したり、ちょっと珍しい魔獣を狩るだけだから。あとはなーんにもしないから」


 「だから、それが怖いんですってば」


 アンリが困った顔でシンジに視線を送る。が、シンジは全力で目を反らした。


 「さて、今宵は聖痕を授かった記念の宴が行われます。あくまで神殿の内部的なものになりますが、シンジ殿にはぜひご参加を」


 「えー」


 「シンジさん、これは出ないとまずいですよ? 神殿を敵に回しては……」


 仕方ないので、シンジは出席を約束し、その場からアンリとともに神殿を出た。


 帰りの馬車の中で、アンリが聞いてくる。 


 「シンジさん、フレディ殿が聖痕を授かる場に居合わせたんですよね? どんな状況だったんですか?」


 その問いに、シンジはしばらく沈黙した。そして、重い口を開く。


 「……アンリさん、それを聞いたら後戻りできなくなるよ? ……本当に聞きたい? 本当に?」


 シンジは、深淵を覗いてしまった者だけが見せる、諦観と絶望が混じった(ハイライトの消えた)目をアンリに向けた。


 「え、いや、そこまで言われると、ちょっと……」


 その目を見てしまったアンリは、ちょっと怯んだようにのけ反った。


 「うん、知らないと幸せでいられるんだよ? 世の中にはそういう事が多いんだよ?」


 「そんなにすごいことがあったんですか?」


 「……ひとつだけ言えるのは、『事案発生』で『はっぱ踏み踏み』かな」


 「……まったく意味が分かりません」


 その後は、男爵邸に着くまで沈黙が続いた。


 ちなみに、その夜参加した宴の事については、シンジは生涯語らなかった。と言うより、何があったのかシンジ自身が記憶を残していなかった。


 ただ、疲労困憊で帰ってきたシンジが、夜うなされているのを執事が聞いてしまった、その時聞き取れたのは。


 「筋肉が……筋肉が……」


 という言葉だけだったという。合掌。

シンジ君、ヤラレチャッタノ? と思った方、先生怒らないから、手を挙げて★とブックマークをおしましょう。(マテ)


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多忙のため、11月6日は更新できません。ご了承ください。

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