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48.テンプレ的に、新人としてギルドをパニックに陥れる俺。

シンジ君、ギルドを阿鼻叫喚に陥れるの巻。

いや、これこそテンプレだし。(ヲイ)

 城壁の陰に着いたシンジは、辺りを見回し、人が全くいないことを確認すると、何食わぬ顔で門の方へと向かった。そのまま門前で停泊していた辻馬車に乗り、行きのルートとは真逆の道のりでギルドまで戻ってきた。


 夕方前の、ちょうど人の来ない時間帯だったのか、ギルドの中は閑散としていて、受付嬢たちが黙々と書類と格闘している。


 シンジがスウィングドアを開いた音に、受付嬢たちが一斉に首を上げた。良くあるのだが、少し怖い風景である。


 「あら、シンジさん、お早いお帰りですね。採取は大丈夫でした?」


 シンジが入ってきたことに気付いたのか、ジュリアが声を掛けてきた。もうすっかりジュリアが専属の様である。……不幸なことに。


 「うん、色々採ってきたので、どこか持っていく場所ある?」


 「少量ならこちらのカウンターでも大丈夫ですが?」


 「たぶん無理」


 「では、素材提出所にご案内しますね」


 ジュリアがカウンターから出てきた。ふたり並んで、今度はギルドの酒場とは反対にあるドアをくぐって内廊下を通り、繋がっている隣の建物に進んだ。


 入口の扉を開けると、ゴツいカウンターに、黒いエプロンをしたゴツい親父が座っていて、正面にはゴツいテーブル。そしてカウンターの横には倉庫入口のような横開きの3枚連なったゴツい扉が鎮座している。ここはゴツいものしかないのか。


 どうやら、動物・魔獣用の解体場が、その奥にあるのだろう。ちょっとした血の匂いが漂ってきている。


 「おう、ジュリアどうした? お前がここに来るのは珍しいな?」


 ゴツい親父がジュリアに声を掛けてきた。


 「あ、オリバー所長、新人の素材提出所への案内ですよ。登録1日目にして、異常な実績のシンジさんです」


 ジュリアが、シンジを紹介する。


 「どもです。異常とか言うのどうなの? ジュリアさん」


 「1日で討伐B-が認められるとか、十分異常ですよ。そんな人は、アンリ総隊長以外見たことありません」


 「わっはっは、そりゃ立派に異常だ。お前さんがジャックの言っていたシンジか!」


 所長らしい親父が大笑いする。


 「ジャック?」


 「支部長(マスター)のお名前です」


 シンジの疑問に、すかさずジュリアが答えた。


 「俺はここの責任者のオリバーってもんだ。よろしくな」


 オリバーが手を差し出してきたので、シンジも右手を出して握手する。分厚い手の皮が、相当鍛えていることを伝えてきた。


 「シンジさん、次からは、素材についてはこちらに直接来て提出してくださいね」


 「らじゃりました。んじゃ、早速採ってきた薬草関係を提出しますねー」


 シンジは、マジックボックス内で素材をマジックバッグの中に入れ、それを腰のバッグから取り出せるように入口をアイテムボックスに繋ぎ、マジックボックスからマジックバッグをアイテムボックスに移動して……何か混乱しそうだが、そうしないとマジックボックスがバレてしまう。


 ともかく腰のバッグからマジックバッグを取り出したように見せかけ、そこからまず上薬草の葉を取り出した。


 「お、上薬草だな。良い処理だ。っておい、待て待て。こいつはちょっととんでもねーぞ?」


 オリバーが何やら丸いレンズっぽいものをエプロンのポケットから取り出し、ルーペのように目に当てて上薬草の葉を1枚ずつ見始めた。


 「所長、どうなさいました?」


 それには答えず、オリバーがルーペを目から離すと、シンジの方を見て真顔で言った。


 「シンジって言ったな。おめぇ、こいつをどうやって採取した?」


 「ん? 200本くらいから選抜して良いのだけ採って来たよ」


 「やっぱりそうか。そうだろうな」


 「次の出して良い?」


 そう言ってシンジは、次に布に包まれた根を10個提出した。


 「こっちはジュニパーの根か。よくこれだけ採ってきたな。今の季節だと見つけにくいんだが。処理も良い」


 「まだまだあるよー」


 今度は珍しいのを中心に、5種類くらい。


 「はあ? セラレータの花だと?! こっちはマドゥーサの葉!? どっからこんなもん採ってきた!?」


 「森の中腹くらいなのかな? 普通に生えてましたー」


 ジュリアさんが首をかしげる。


 「後半のは、あまり聞いたことがありませんね?」


 「そうだろうよ! 全部上級回復薬の原料だ! こんなもんどこの森に生えてんだ!?」


 「魔の森っつったっけ。あそこ」


 オリバーが頭を抱えた。


 「奥の方の、普通はあまり人が入らないあたりだねー。魔素だまりが出来ていたから、品質高いと思うよー」


 「し、シンジさん、あの短時間で、魔の森に行ったんですかッ!? どうやってッ?!」


 「それは秘密ー」


 シンジが指を立てて、唇に当てた。


 「でね、これは正直俺も驚いたんだけど」


 いかにも取っておき、という雰囲気でシンジがバッグを探る。


 「ちょ、ちょっと待ってな。呼吸を整えさせてくれ! お前が驚くって、どんだけだよッ!?」


 「いやあ、それがねー? ……もういい?」


 オリバーとジュリアが、ゴクリと喉を鳴らして待ち構えた。


 「よ、よし、やってくれ」


 シンジが、バッグから袋をひとつ取り出した。


 「「ちょっ! おまっ!?」」


 オリバーとジュリアさんが、途中まで絶叫してそのまま絶句した。


 「……仙桃茸見つけちゃった♪」


 シンジがてへぺろをかますと、オリバーとジュリアが床に崩れ落ちた。


 しばしの沈黙の後、オリバーは絞り出すようにジュリアへ言う。 


 「……おいジュリア、悪ぃがすぐジャック呼んで来てくれ。俺の手にゃ追えん」


 「は、はいッ!」


 ジュリアが、慌てて出て行った。

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