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47.テンプレ的に、新人として採取に頑張っちゃう俺。

シンジ君、新人活動で採取に行くの巻。

まあ、採取は新人冒険者の基本だよねえ。

 シンジは、都市内を巡回する辻馬車に乗って外の城壁までたどり着いた。ギルドカードを見せて、城門を抜けるときは、ファンタジーの住人になった実感がわいてちょっと感動した。


 そのままシンジは街道を行く……はずがない。


 辺りを見回すと、人影が無い事を確認して、城壁の陰に隠れる。


 「ほむ、ここは死角になって良い感じの場所だね。覚えとこ♪」


 シンジは、その壁に人差し指を当て、魔力を擦り付け(マーキングし)た。これで、この場所には自由に来ることが出来る。


 「じゃ、飛びますかっと!」


 その瞬間、シンジの姿は掻き消える。




 ◇




 「よし到着」


 シンジは、この世界に初めて降り立った、あの森の中にいた。


 「ここなら、色々と採取できそうだよね。図鑑見る限り、チュートリアルの時の薬草とかと、そんなに変わらないみたいだったし」


 実はそうなのだ。図鑑を見たときに載っていたのは、すべてシンジがチュートリアル中に、採取加工した様々な薬草と同じものだったのだ。


 ならば何故わざわざ図鑑を購入したのか?


 理由は簡単である。シンジの経験は、あくまでちゅうとりある(中途現実)であったため、100%完全一致するのか確証が持てなかったことと、一致していた場合でも、色々採取してきたときに、変に疑われないためである。


 「んじゃ、順番に行きましょうかね」


 念のためシンジは、アイテムボックスから図鑑を取り出し、『上薬草』のページを開く。


 「ん、これこれ。探索(サーチ)


 そして、『鑑定』の下級魔術である『探索』を使う。すると、シンジの視界には、RPGやFPSのようなポップアップマークが浮かび上がった。


 「おー、いっぱいあるねー。さすがは『魔の森』。さーてと、イケるかな? 『収納』」


 狙ってひとつのマークを、収納魔術でマジックボックスに収納してみる。チュートリアル中は、必要部位だけ意識すれば、植物の場合はこの方法で問題なく採取が出来た。問題は、本番となるこの場でも行けるかなのだ。行けなかったら非常にめんどくさい。


 「どれどれ……お、イケてるね♪」


 シンジの手には、今収納したばかりの上薬草が、下部の硬い葉のみ乗せられていた。


 上薬草の場合は、硬くなった古い葉のみを茎の付け根の部分で切り落として収穫するのが最上とされている。これは、茎部分を付けたままだと、薬効成分が根元の茎の方へ、斬り落とした瞬間から徐々に抜けていってしまうという性質のためだ。


 薬効成分も、枯れる寸前の葉が最も高く、しかもつぼみを付けてしまうと、そこに流れていってしまう。なので上薬草採取は、最高ランクで行おうとすれば、結構な観察力と葉を丁寧に扱える繊細さが要求される、ちょっとした職人芸となる。


 このように、採取に関しては知識と技能が必要なのだ。


 もちろん、普通はそこまで要求しない。薬効が少々落ちても、ある程度は量で補えるからだ。だが、ランクの高いポーションを作るときに、ベースとなる上薬草は、ランクが上がれば上がるほど量の管理もシビアになる。他の貴重な素材とのバランスをとるためには、葉の量をそこまで増やせないため、葉の質そのものが重要となる。


 シンジは、チュートリアル中に自分でもポーションを作っていたため、そのことをイヤになるほど実感している。ゆえに、収納魔術で理想状態の葉のみを選別して一気に採集(・・)できるこの方法を愛用してた。この方法であれば、同じ株から何度も採取できるから、薬草資源の保護にもなるのだ。


 図鑑にも、このことはきっちりと書かれていた。ということは、これがこの世界でも常識という事だ。ならば、シンジも安心して採取できるというものである。


 「一気に行きますか。『収納』」


 シンジは、マーク中の上薬草へ、一気に魔術を掛けて採集した。


 わざわざ魔術名を言うのは、採集に使う場合、明確に対象と方法を想像しないと失敗しやすいからだ。オークの時は、首と身体を収納するだけだったので、ターゲッティングがあいまいでも問題なかったのだ。


 シンジのマジックボックスには、100枚の上薬草の最高品質葉が収納された。採集完了である。マジックボックスには時間経過が無いエリアを作ることが出来る。そこに、買ってきた収納袋に10枚ずつ分けて保管する。もちろん手作業ではなく、ボックス内で行われる。その方が薬効抜けを最小限に出来るからだ。


 「よし完璧。次行こうか」


 シンジは、図鑑の次のページをめくった。




 ◇




 「これで、結構な種類を採ったかな」


 シンジは、図鑑のページからこの森で豊富に見つかるモノを、順々に難易度を上げつつ採取していった。


 「そろそろ終わりにしようかな……お?」


 シンジの視界の端に、レアものポップが表示された。これは、ターゲッティングとは別に、シンジの記憶にあるレアな採取物があった場合、自動表示されるように設定したものだ。


 「何だろね?」


 そちらの方に向かってみる。そこには、まるでテントの様に互いに支えながら、折れ重なっている木々に隠されたような場所。そのポップは、地面の中を指していた。


 「あー、何となくわかった。そうかぁ、これも実際にあるんだぁ」


 シンジは、つぶやきながら土魔術を発動し、木をどかしていく。


 「間違いないな、この香り。そっか、この木が蓋の役割をしていて、香りが拡散しなかったんだね」


 そして、今度は土魔術を地面に向けて、少しずつ繊細なタッチでどかしていく。


 「あー、やっぱり生えてた。『仙桃茸』。それも、ひいふうみい、12コか。地下に結構な魔素だまりがあるのかな?」


 『仙桃茸』というのは、百年に1度見つかるかもしれないと言われる、幻のキノコ。魔素が地中に長時間停滞する場所に、何らかの要素が加わり生えてくると言われている。


 「こんなに群生するのは珍しいねえ。普通なら2、3コ生えていれば大量なのにねえ」


 桃のような甘い香りが強く、普通なら猪系の魔獣が掘りだして食べてしまうのだが、運よく倒木で蓋がされていて、見つからなかったのだろう。


 いや、もしかしたら、この蓋が地中の魔素の拡散まで防ぎ、魔素が地中とテント状の空中を循環するように廻ったため、群生化したのかもしれない。


 ちなみに、これだけでも切り落とした手足が生えてくるレベルの最上級回復薬が作れる。その上に、飲めば10年若返られるという神酒(ソーマ)の原料のひとつにもなる。


 「これが生えるくらいという事は、知らんうちに結構奥まで来ちゃったんだね」


 夢中になるとハマり込んでしまう。チュートリアルを熟していくうちに爆誕した、シンジの新しい癖である。そうでなければチュートリアルは熟せなかったとも言う。


 「ま、いっか。もしかしたら、また生えて来るかもだから、土は戻して、木も同じ状態にして、ここもマーキングっと♪」


 シンジは、出来るだけ状態を復元したのち、仙桃茸をひとつずつ大事に収納袋へ収め、マジックボックスへ格納した。


 「んじゃ、そろそろ時間も良いころだし、帰りましょうか」


 シンジは、そのまま瞬間移動(テレポート)の魔術を発動し、出発点となった城壁の陰に飛んだのだった。

桃みたいなキノコ、どんな味が……(; ・`д・´)ゴクリ と思った方、★とブックマークをお願いいたします。

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