44.テンプレ的に、実力試験を受ける俺。
シンジ君、実力試験を受けるの巻。
試験、懐かしいですね。現在進行形の方はガンバレ。(ヲイ)
「お、戻ったな。早速試験するか。ジュリア、ボーブを連れて来てくれ」
執務室へ戻ると、支部長は早速腰を浮かしてシンジを促す。同時にジュリアにも誰かを連れて来るように命じた。試験官だろうなとシンジは推測した。
そのままシンジが支部長に連れられてきたのは、地下の訓練場っぽいところだった。
そしてシンジの目の前には、支部長と、ジュリアさんに連れられた、最初に絡もうとしてきた筋肉ゴリラ。
「急に絵面が放送禁止レベルになりました。視聴者様にはお詫びいたしますまる」
「いきなり誰に謝っとるんだお前は」
「偉大なる幼女?」
「誰だそりゃ」
分かるわけがない。この説明で分かるとしたら、それこそ幼女かシンジくらいのものだ。
「まあ、それは置いといて。ここ凄いねえ」
この訓練場、ところどころ柱は立っているが、かなり広い空間だ。どうやって維持しているのだろうか。よく見ると、柱がアーチ状になっていて、天井の荷重を支えているように見える。
「この建物の構造、どうやって作ったんだろう?」
「ああこれか。過去に栄えて滅んだ領地の神殿があってな。それを参考にして作ったと聞いている。冒険者ギルドと建築ギルドの合作らしいぞ」
つまり、過去の転移者が作った遺構を研究して作ったんだろう。幼女はほとんど滅んだと言っていたが、さすがに神殿は守られていたということだろうか。
降りてきた階段の位置から考えて、建物の下ではなく、そこから斜めにずらして、上に影響のない形で地下に掘られているようだ。
考えてみれば、建物の直下に訓練場を作って、もし天井をぶち抜いてしまったら大惨事だ。当然と言えば当然だろう。
「お、来たな。では、これから認定試験を行う。立会人は支部長である俺、試験官は立候補してきたボーブだ」
「この前は上手く躱されたが、今度は逃がさねーぜ」
へらへら笑う筋肉ゴリラ。そう言えば、アノ時のおっさんだな、とシンジは思い出す。
「あー。こう言っているが、ボーブは面倒見がいいんだぞ?」
「え? まさかの新人を心配するガラ悪おっさんパターン!? 変形式テンプレとは予想外ッ! 見抜けなかった! この俺の目をもってしても!」
「意味が分からんが、まあいい。一応、かなりの数のオークを一人で倒している話は聞いている。オークの群れを単独で倒せるなら、実力は討伐C+を超えているはずだ。その実力を見せてほしい」
実際に見なければ、いきなり高いランクは与えられないという事だろう。妥当な話だとシンジも納得する。
「ちなみにボーブが討伐C+だ。それといい勝負が出来たら、いきなりC-でも問題ないだろう」
「ああ、俺に圧倒的に勝てるなら、Bランクでも問題ないぜ?」
にやりとボーブさんが笑う。どう見ても新人をいたぶるチンピラおやじにしか見えないのが残念な存在である。
「りょーかい。じゃ、やりましょうか」
シンジはそう言って、渡された模擬剣を手に取る。
「あ、そだ。ちょっと聞くけど、魔法は有り無し?」
「そう言えば、土魔術を使ったと聞いていたな。魔術の威力は後で見させてもらう。まずは剣のみだ」
マスターが二ヤつきながら言った。
(この親父、楽しんでやがる)
シンジはちょっとイラっとしたが、それは筋肉ゴリラにぶつけることにした。
「ん、りょーかい。いつでもどうぞ」
シンジとボーブさんは、向かい合わせで10mくらい離れて立った。
「よし、両者構え。……始めっ!」
その瞬間、シンジは右足で踏み込んだ。
地面が凹み、砂煙が上がる。5歩動き、おっさんの後ろに回る。そのまま首に模擬剣を当てた。
「終わり?」
マスターもボーブも、完全に凍り付いていた。二人とも、シンジの移動はほとんど見えていなかったのだ。
「いや、まて。……なんでお前がそこにいるんだ? 何をやったんだ? 魔術は禁止だろ?」
「普通に動いて後ろに回ったよ?」
「「はああっ!?」」
マスターとボーブが喚いた。
うるさいなあ、とシンジは思ったが、ふと大事なことに気付いた。
(ハッ……! こ、これは、あの伝説のセリフを言う場面ではなかろうかっ!? い、いくぞッ! せ、せーのッ!!)
「あ、あれー? 俺何かしちゃいましたかー?」
無事テンプレ達成っ!!
「ぃよっしゃっ!!」
シンジは拳を天高く突き上げた。
「待て待て待て待てッ!! 何だったんだ今のはッ!? 魔術じゃないなら縮地か!? 縮地なのかッ!!?」
「いやだから普通に動いて後ろに回っただけだってばよ?」
「ちょっとしか見えなかったぞッ! 引退したとはいえ、俺だってS+ランクだったんだぞ!」
「知らんがな」
マスターがやいのやいの騒ぐが、シンジは軽く受け流す。ボーブはと言えば、凍ったように目を見開いたまま動かない。
しばらくすると、マスターも落ち着いたのか、それとも疲れたのか、ため息をつきながら頭をぐちゃぐちゃに掻いて、自分の中に折り合いをつけた様だ。
「まあ、百歩譲って素早く走ったとしよう。百歩譲ってッ! だが、これでは戦いの腕前を見ることにはならんッ! もう一度だッ!!」
「えー」
「良いから早くしろッ! ボーブも呆けてないで、さっさと構えろッ!」
「あ、ああ」
ボーブがのろのろと剣を構えた。
「シンジ、今度は剣を使えよッ!」
「はーい」
シンジは後ろ向きに歩き、ボーブから3mほど距離を取る。
「はじめッ!」
一瞬の空白の後、ガインッ!という固い金属を打ち合わせたような音が響く。直後、壁の方でガッとぶち当たったような音が響く。
「な……!」
ボーブの手にあった剣は、シンジの件に跳ね飛ばされて、壁に叩きつけられていた。
「うーん、ボーブさん、良い反応。握りをとっさに緩めたんだね」
「あ、あぶねー……」
ボーブの顔は血の気が引いて真っ青になっており、シンジは刀を肩に担いでうんうんと肯いている。
「下手に握っていたら、腕骨折したかもね。さすがC+」
シンジは、剣で剣を打ち払ったのだ。もしボーブがしっかり握ったままだったら、その衝撃で指が折れていただろう。下手をすれば、シンジが言うように腕の骨まで逝ってたかもしれない。
「折れてたら、ポーションで治療するつもりだったから、心配はいらないけど」
「折れたら痛いだろーがッ!!」
「受けるー」
「ちっとも受けないわッ!!」
今度はボーブが騒ぎ、マスターがボー然としていた。
「いや、今のは見えたけど。……シンジ、お前とんでもねーな」
「うーん、まあ、軽く?」
マスターは首を横に2、3度振ってため息をついた。
「まあ、剣の実力はわかった。次は魔術だな」
どうやら、魔術試験もやるらしい。
俺も剣を叩き折りたいッ! という方★とブックマークをお願いいたします。(チガ)




