41.テンプレ的に、倒したオークを披露する俺。
シンジ君、オークロードを巻き上げられるの巻。
まあ、権力者には媚びを売った方が良いよね。(ヲイ)
「そして、君がシンジか」
オリバーは、じっとシンジを見つめた。オールバックの髪と口ひげで、いかにも上品で眼光が鋭い長身の男だ。
シンジは世界大百科で読んだ礼儀作法に則り左膝を付く。シンジはオリバーの部下ではないので、胸に握り拳ではなく、左手を開いて胸に当てる。これが上級貴族に対し、最上級の礼を尽くした姿勢となる。相手が王族であれば、平民は両膝を付いて両手を開き、胸で交差させる。
「この場は公的なものではない。そこまでの礼を尽くさずとも良い。立ちなさい」
オリバーの許可が出たので、シンジは立ち上がり感謝の黙礼をする。これで儀礼的には問題ないはずだ。
「アイリス、シンジ。まずは領内での魔物暴走の解決、感謝する」
オリバーが軽く頭を下げてきた。アイリスが深々と頭を下げたので、シンジも習って頭を下げる。
「さらにシンジ。ソフィアの救出、本当にありがとう」
今度は立ち上がり、深々と頭を下げてきた。シンジは驚いてしまった。
「伯爵様、頭をお上げください」
「うむ、私の親としての感謝のしるしと受け取って欲しい。貴族のけじめはまた別だ。もちろん報酬は弾むぞ」
「ありがとうございます」
なるほど、親の立場と貴族の立場を明言するあたり、貴族としてはかなりまともな貴族なのだろう。幼女曰く、所謂テンプレ悪徳貴族も存在するらしいし。
こういう貴族がトップにいるなら、この街を拠点にして住むのも良いかもしれない、とシンジは思う。下手な街に行って、欲深い貴族に捕まったら目も当てられない。
何より、ギルドでは支部長との面通しもしているのだ。普通に登録するより有利だろう。そう言えば、街で見かけた神殿にもいかなければならない。幼女に注意されているし。
「では、話はここまでにして、早速鍛錬場に行こう。そこで、オークどもを見たい」
オリバーは、少々せっかちの様である。いや、仕事が忙しくて時間が足りないのかもしれない。
オリバーとシンジたちは、鍛錬場に向かった。
◇
鍛錬場は、ちょうどコの字になった屋敷の裏手に当たる中庭にあった。中庭といっても、庭園になっているところは屋敷側のみで、中央は50m四方位が整地されていて芝のような草が植えられている。転んでもケガをしない様にという事だろう。
20人ほどの兵士たちが、整列して控えていた。
オリバーを先頭に、ランチェスト家一同が続き、最後にシンジが並ぶ。いつの間にか、ノアまでここに連れられていた。
「それでは、まずオークロードから出してくれ」
アイリスが、自分が持つマジックバッグから、オークロードの首と身体を取り出した。3mほどある体躯は、死体とは言え異様な迫力がある。
「おお……これがオークロード」
誰かが声を上げた。
「この首の切り口、異様に滑らかだな。アイリス、其方の持っている剣で斬ったのか?」
「こちらにございます」
アイリスは、魔剣を鞘ごとオリバーに渡す。もちろん、アイリスは鞘の方を持ち、柄をオリバーに向けてだ。
オリバーが鞘から剣を抜く。すると、剣はオリバーの魔力を吸ったのか、アイリスの時とは違い、刀身が淡く黄色く染まった。
「ほう、これはすごい剣だ。魔剣だな。これほどの物はめったにあるまい。アイリス、どこで手に入れた?」
アイリスが、ちらりとシンジに目くばせした。言っても良いのか、という問いだろう。
(隠せるもんでもないよね。しょーがない)
シンジは、うなずいた。
「こちらのシンジ殿から譲り受けました」
「今使っている剣の前に持っていたものです」
嘘はついていない。今メインになっている氷の剣の前に打ったものだ。
「なるほど……。まあ良い、他のオークを出してくれ」
アイリスは、オークジェネラルを出す。ノアがオークを出した時には、オリバーをはじめ兵士たちが驚きの声を上げた。
そしてシンジはオークビショップを出し、オークナイトをまず10体ほど出した。
「ここにこれ以上出すと、さすがに出し切れませんが」
「そうか、報告では1000体あるのだったな。ロードとジェネラル、ビショップはこのまま引き取りたいのだが。晩餐に使おう。もちろん、皆も招待する。もちろん代金は払うぞ。ビショップやジェネラルなど、なかなか食えないからな。ロードは王に献上したい。良いか?」
シンジとアイリスはお互い顔を見合わせ、うなずき合う。
「「然るべく」」
そして、貴族用語で了承と答えたのだった。
「うむ、感謝する。アイリスの爵位を申請するにも、ロードを献上すれば、個爵だけではなく家爵まで通るだろうしな」
そういう事なら、シンジは大賛成である。アイリスは驚いている。
「よ、よろしいのですか?」
「せっかく自分の手で守った村があるのだ。そのまま領地とすれば、村人も安心だろう」
「あ、ありがたく拝領いたします」
「気にすることはない。私もまったく被害なく魔物暴走を解決できたのだ。王の覚えもめでたくなろうというものだ」
オリバーが上機嫌で笑う。これは本音だろう。オーク1000体の魔物暴走なら、普通は村の3つや4つは壊滅する。下手をすれば、領都ですら被害が出ただろう。それを被害なしで乗り切ったのだ。
「さて、騎士や兵士にもオークを食わせたいな。ナイトも10体ほど引き取ろう。喜べ皆! 明日は魔物暴走討伐記念として、宴とする!」
兵士たちの歓声が響いた。
「さて、その他は冒険者ギルドに引き取らせればよかろう。このマジックバッグは高性能だな。ほとんど時間経過が無いようだ」
オリバーが、マジックバッグの性能に目を付けたようだ。
「あー、それは」
再びアイリスがチラリとシンジに目くばせした。シンジは同じようにうなずいた。
「では、マジックバッグをお持ちください。ロードを収納してそのままお持ちになれば良いでしょう」
アイリスは、マジックバッグをひとつ差し出した。
「済まぬな、これも買い取らせてもらおう」
オリバーは笑みを深くした。
その夜、オリバーを交えた晩餐会で食したオークは、大変おいしかった。
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仕事の都合で、10/8更新は飛ばします。ご了承ください。




