39.テンプレ的に、男爵邸でめちゃくちゃ歓待を受ける俺つー。
シンジ君、マニアに囲まれるの巻。
いやあ、マニア心って大事ですよね?(ヲイ)
「乾杯」
それぞれ自己紹介を終わると、すぐに食事の用意が出来たという。食堂に案内され、そのまま席に座った。
客人という扱いなのか、お誕生日席に座った男爵から見て、右の席にシンジは案内された。シンジの隣はアイリスである。普通なら嫡男が座るのだろうが、一番関連が深いアイリスと話しやすいように配置されたのだろう。
相当気を使われているな、とシンジは思った。
男爵の音頭で皆のグラスが掲げられた。シンジの目の前には、三重のカトラリーと受け皿、手洗い用のボールが置かれている。
貴族の食事らしく、パンは白パンで肉料理中心だが、野菜も結構使われている。スープもある。
地球の中世貴族の料理には、あまり野菜は用いられなかったが、この世界では違うようだ。シンジも肉だらけよりはこちらの方が良い。
人の名前が英国風だから、香辛料バリバリだったり、ウナギのゼリー寄せとか出てきたらどうしようかと思ったが、料理内容はフランスかイタリアに近い。
そこは英国料理あるあるではなかったことにシンジは安心した。
「シンジ殿、マナーなどは気にしなくても大丈夫ですよ」
考え込んで動かなかったシンジの様子を、戸惑と見て取ったのか、アンリがシンジに気を使って言葉を添える。が、シンジも礼作法は世界大百科で学習済みだし、貴族のマナーは一般的な洋食のマナーに近いので問題ない。
カトラリーについても、中世より近世に近く、フォークはちゃんと三又で、中世のような二又で調理器具としての使い方ではない。
まあ、シンジとしてはこちらの方が前世でも慣れているし、よっぽど使いやすい。
「サー・アンリ、ありがとうございます。マナーはそれなりですが、大丈夫です」
シンジが答えて、外側からカトラリーを手に取ると、ナイフとフォークを使って皿に乗った肉を切り、口元へ運ぶ。マナーとしては問題ないはずだ。
(たぶん、栄養価の面とかで幼女が広めたんだろうな。もしくは、転移者や転生者が広めた知識が生き残ったか)
そんなことを思いつつ、だが。
◇
食事がある程度進むと、デザートと茶が出てくる。ここからは、普通に話が出来る時間だ。
「シンジ殿は、ずいぶんマナーにも通暁しておるようだが?」
男爵、アーサー=ランチェストは、シンジのマナーを見て驚いたようだ。
「このような場が無いとも限りませんでしたので、本で学習して、練習をしてまいりました。ですので、お恥ずかしい限りです」
嘘ではない。世界大百科で読み、チュートリアルでこなしたのだ。
「なるほど、マナーに全く問題はなかった。勉強家ですな」
どうも、試されたような気がするな、とシンジは思った。
「さてシンジ殿、今回の魔物暴走終結、ご苦労でした。アイリスの事も救っていただき、本当に感謝しています」
「いえ、行きがかり上でしたし、何よりもお嬢様の剣技も馬も素晴らしいものでしたので」
特にノアの活躍はすごかったと言って良いだろう。UMAだけに。あれで雑魚退治が非常に楽になった。
「何より姫様の危急を救っていただいたこと、臣として感謝しております」
アーサーが深々と頭を下げた。
「頭をお上げください。男爵様が平民にそう畏まられては、お家に差し障りがありましょう」
シンジも、そう畏まられても困ってしまうのだ。原因が幼女だと思うだけに。何しろ、あのタイミングでシンジが駆けつけられたのだ。幼女が因果律をいじっていたとしても不思議ではない。
そう、神は言ったのだ。まだ死すべき定めではないと。たぶんきっとめいびー。そしてぱはーぷす。
「伯爵様もいたく感謝されていまして、ぜひお招きしたいと」
ああなるほど、それで自分のマナーを見たのか、とシンジは納得した。
「併せて、魔物暴走を引き起こしたオークどもを引き取りたいとも」
確かに、いつまでもアイテムバッグに入れておくわけにはいかないだろうし、一般人が持っているものなら、安物なので時間が経過するとも考えているだろう。
(ところがどっこい、渡したアイテムバッグは、時間停止の付与が掛かっているから、実は全く問題ないんだけどね)
まあ、馬鹿正直にそんなことを言うつもりはないし、第一、5枚もの時間停止アイテムバッグなど、一般人が持っていたらすぐに襲われるレベルのシロモノだ。……まあ、シンジは逸般人だから仕方がない。
(ノアさんに持たせたのは、もっと大容量だったしね)
「なるほど。いつお伺いすれば良いでしょうか?」
「明日早速行くことになろう」
ずいぶん性急なことだ。まあ、伯爵も魔物暴走が領内で起こったわけだから、その退治の確証をいち早く掴みたいというのは分かるが。
「あー、それでは、冒険者ギルドに明日行く予定だったのですけど、キャンセルですね」
「約束していたのか。では、私から使いを出しておこう。ジャック支部長とは知らない仲じゃない。問題ないだろう」
「ジャック? あ、ギルドマスターの名前か」
そう言えば、一緒にパーティを組んでいたと聞いたのを思い出す。
「男爵様も冒険者だったんですね。先ほどマスターにお聞きしました」
「ああ、ジャックとは組んでいたな。あいつが前衛で、私は後衛として魔術を使っていた」
なるほど、細身で冒険者らしくないと思っていたが、魔術士だったのか。
「伯爵様には、アイリスがロードを倒したこと、君がその手助けをしたことは伝えている。姫様を救ったこともだ。申請すれば士位は確実で、もしかしたら爵位まで届くかもしれぬのに、本当に良いのだね?」
士位というのは,爵位が無い騎士と法士のことだ。無爵の下級貴族という事になる。
「ええ、まだこの地で何も知らない状況ですし、貴族位をいただいても何も出来ませんから。この地に馴染んで、生活の基盤が出来てから考えるべき事かな、と。しばらくは冒険者として自由に動きたいですし」
「まあ、冒険者が自由で楽しいことは認めよう。私も若いころはそうだったしな。だが、こんな機会がそうそうあるとは思えないが」
それについては、機会はこれからいくらでも訪れるだろうとシンジは思っている。主に幼女のせいで。
「機会ですか。平々凡々と暮らせれば、それで良いんですけどね。いろいろ巻き込まれそうな嫌な予感しかしませんし」
シンジは肩をすくめた。
「おやおや、これは大物だ」
アーサーが笑い出した。家族も笑う。
「何にせよ、これでアイリスも騎士爵に叙されることは間違いない。アルフィーが男爵位を継ぎ、アンリもアイリスも爵位を得た。我が子は全員爵位持ちだ。これほどの栄誉はあるまい。シンジ殿、感謝する」
「いえいえ、頭をお上げください。たまたまですよ、たまたま」
「欲が無いな。まあ、褒章については良く申請しておこう」
「ありがとうございます」
「ところで、だ。シンジ殿」
急にアーサーがソワソワしだした。
「ど、どうしました? 男爵様?」
急変したアーサーの様子に、シンジが少しビビッてのけぞった。
「アイリスに渡したような魔剣は、まだ持っているのかね!? ぜひ見せてほしいのだがッ!! 是非是非ッ!! ハリィハリィッ!!」
「へッ?!」
そこで、アイリスが言いづらそうに、ぽそりと口を挟んだ。
「シンジ殿、父上は魔剣マニアでして……」
「まさかのマニア遺伝ッ!?」
やはり、アンリの父親だった。
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