135.テンプレ的に、アハーンでイヤーンな俺。
シンジ君の叡智あふれる回。たぶんきっとめいびー。
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間が空きまくってしまいました。3・4月は忙しくて……。
しんじは、こんらんしていた。
目の前には、マッパの女の子が、ぺたりと女の子座りのまま、シンジの顔を覗き込んでいた。
……しんじは、こんらんしていた。
「……あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! なんか、妙に抱き枕があったかくて、すべすべしていて、撫でたらふにゅんってしていて、何故かぴくっと動いて楽しいから、もっと撫でまくって。目が覚めたら、裸のおにゃの子がいました」
……しんじは、こんらんしていた。
「見た感じは、髪は白くてふわふわな天然パーマっぽい感じ。目は黒くてクリッとしている。肌が白くて、胸がちょっと膨らんで、ちょっととがっていて、桜色で、お腹が白くって、その下は……。ベッドにぺたって女の子座りしているからね。見てないよ、うん。え、えと、見た感じ12、3歳くらいかな。たぶんきっとめいびー」
……しんじは、こんらん、していた。
「……っていうか、すごくね? 俺。妄想で美少女を生み出しちゃったよ。まるで生身みたい。しかもだ、赤い首輪までしちゃってるんだぜ? 俺、そんな趣味あったんだ。マッパな中1の女の子に赤い首輪。どこから見ても事案発生、犯罪者です。本当にありがとうございました」
シンジは、無意識に女の子の頭を撫でていた。感触がある。イコール夢ではない。
「何を言っているか分からねーと思うが、おれも何をしちまったのかわからない……。頭がどうにかなりそうですまる」
……しんじは、こんらん、して、いた。が、こんな時にもネタを忘れないのは、創造神の訓練の賜物だろうか。
「ご主人様?」
女の子が、首をかしげながらじっとシンジを見ている。
「しかも、ご主人様呼びですよ、奥さん。終わっているな、人として。おまわりさん、俺です。すみません、生きていてすみません」
「え? 紐で首に輪っか? お揃いだゾ? え? ちょっ!? なんでひもを天井の梁に!?」
◇
シンジの奇行は、無事に女の子に止められた。その時に、ちょっと見えちゃったり、さわっちゃったりしたようだ。
「うん、やーらかかった。いや、げふんげふん」
不可抗力と言いつつも、しっかりとアレ度が上がっている。
「……おーけいおーけい。ちょっと落ち着こう。びーくーるびーくーる」
シンジは自分に言い聞かせ、昨日を振り返ってみた。
「確か、街で買い物をして屋敷に帰ってきて、セバス=チャンに、リルと一緒に寝られるよう許可をもらい、一緒に寝たよね」
子犬は体温高くてモフモフしているから、抱き枕にして寝るにはちょうどいい。
「ちょっと朝晩冷えるしね。さすが欧州っぽい地域。疲れていたのか、すぐに意識が飛んだ。……で、現在に至るわけだ」
そこでシンジは首を傾げる。
「あれ? 女の子とか攫って来てないじゃん。おまわりさん、俺、無実です。じゃあ、この娘はどこの子?」
思わず少女の事をまじまじと見る。そこには、白すぎる髪と肌。げふんげふん。そして目立つ首輪。カオスである。
「え? 赤い首輪って、これリルのじゃん。昨日買ったヤツ。……って、まさか、そんなテンプレな?! も、もしかして、お前リルか?!」
「そうだゾっ! 成長したから、人型にも成れるんだゾっ!」
幻影のしっぽがブルンブルン振られているのが見える。
「うん、わかったからまずはシーツかぶってね。丸見えだから。俺、自分の理性信用してないから」
「あ、ご主人様! ご主人様にも尻尾があるんだゾ! 知らなかった! でも、尻尾なのに前に付いてる。不思議?」
シンジのシンジくんが元気ハツラツであった。
「それ尻尾チガウ! いーからシーツ体に巻けッ!!」
というわけで、理性の崩壊と極悪犯罪者のレッテルから、間一髪生還を果たしたシンジであった。まる。
◇
「ぶかぶかだー」
リルがシンジのシャツを着ている。が、ちょっと大きいため、色々と煽情的である。
「うーん……。見た目には『はだY』だよね。はだYに赤い首輪……ヤベえ……げふんげふんッ! いや、マッパよりマシだし!?」
首輪の女の子に半裸の格好をさせる外道男。傍目には倒錯性が高まったようにしか見えない。
「ご主人様、ボク成長したんだゾ! これでもっと戦えるゾ! 喜んで♪」
「ご主人様はやめましょう。レッテル野郎に逆戻りです」
「? ご主人様はご主人様だゾ?」
首をかしげるリル。犬の時と同じ仕草だ。
犬じゃないゾ! と怒るリルの口をふさぐ。自分の屋敷と言っても、セバスたちもいる。
声を聞きつけたのか、ノックの音が響いた。
「シンジ様? 何かありましたか?」
セバスの声だ。
「はー」
返事をするリルの口をシンジが塞いだ。
(ば、莫迦ッ!? 何返事しているんだッ!?)
むー、むー、という不満な呻きを出すリルに、声を出さずに怒鳴るという器用な真似をするシンジ。
「い、いや、なんでもないよ?」
「そうですか、それではお支度を整えますので」
ガチャリと扉が開く。
「「あ」」
セバスの視点から見えるのは、シャツ1枚で首輪をつけた少女に、シンジが後ろから羽交い絞めにして口を塞いでいる絵面。間違いなく凶悪犯罪者の図である。
「あああ……なんという事だァ!」
セバスが叫ぶと、そのまま見事なorzになった。
「あ、あの? セバス=チャンさん……? 何か、誤解していませんか……?」
セバスは悶えるように体を倒置しながら、苦悶の言葉を吐き出した。
「あああ……まさか仕えた主が、年端も行かぬ少女に首輪をして抑えつけて楽しむ倒錯者だったなんてェ……!!」
「イヤあのセバスさん?」
「あああ……白い髪に赤い首輪とか! ちょっと膨らみかけが良いとか! 男物のシャツだけ着せて楽しむとか! どれだけ高尚な上級者の楽しみ方をしているのだァ……!!」
「オイちょっと待て」
「あああ……少女の小さくて細い身体に、そんな、そんな……! ゆうべはおたのしみでしたねェ!!」
「何でそのネタ知ってんだッ!!?」
一応、頑張って誤解は何とか解いたらしい。どっとはらい。