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134/135

134.テンプレ的に、湯と首輪を試す俺。

シンジ君、温泉を調べるの巻。


……ちょっとだけ早く仕上がった。

 シンジは、湯を詳しく鑑定しながら、地球のものとは違う成分にも気付いた。


 「ほむ、温泉には、結構魔素が溶け込んでいるんだねえ」


 そう、この温泉には、肌にいい成分だけではなく、魔素も豊富に含まれていた。そこで、円筒のお湯を氷魔術で少しだけ冷やし適温にすると、ちょっとだけ腕を入れてみた。


 「ん? んんー? 腕が、暖かい」


 それはそうだろう。


 「何か、ぬるっとした感じ? ぬるくちゅ気持ちイイ?」


 なんとなく卑猥である。


 シンジは、湯から腕を出す。そのままアイテムボックスからタオルを取り出すと、軽くお湯を拭きとった。すると、腕がつるつるのウルウルになっているのに気づいた。


 「おー、何かお肌つるつる」


 どうも、肌にいい成分が、魔素の影響を受けてより効果を発揮しているように見える。これなら、『美人の湯』として売り出すことは可能だろう。


 「問題は、魔の森の近くという事で、湯治に来る客がどれだけいるかって事だけど」


 それについては、目に見える形で防御力を示すのが良いだろう。


 「魔の森が遠くに見える位置にあるんだから、領地と魔の森を城壁で囲って、結界作ればいい感じ?」


 確かにそれなら多少は安心感が上がるだろう。


 「それに、街自体も城壁で囲えば安心かな? かな?」


 結界は目に見えないから、安全は目に見える城壁の形で示せば良い。道理である。


 「露天風呂で借景が出来ないのが残念かな? あ、でも高級温泉旅館は高い建物にすればいいか。そしたら森の城壁も見えるし」


 だんだんシンジの中で構想が固まってきたようである。


 「ほむ。そうしたら、もうちょい地形を精査して、余った時間でこのあたり一帯を整地しちゃうか」


 整地さえしてしまえば、何時からでも建築作業が始められるのだが。


 「ただ、整地が終わったら、下水道の計画を立てないとねえ」


 この辺は地下水が豊富なので、下手に下水道を通すと地下水が汚染される。その辺は、専門家を連れてきた方が良いだろう。


 シンジは、いったん温泉を溢れないように埋め戻し、岩盤も復元してお湯漏れを防ぐ。


 「じゃあ、整地を始めよっか。そんなに時間は掛からないだろうし。……でも、ひとりになると独り言が増えるなあ。やっぱり後遺症?」


 間違いなくちゅうとりある(100年ボッチ)の後遺症だろう。泣ける。




 ◇




 「さて、こんなもんかな? かな?」


 シンジの眼下には、なだらかな丘が続く大地が、まっ平な台地に整えられて広がっていた。


 余剰の土は、石状に固められて端の方にうず高く積み上げられている。これは、後日壁や道を造る時に使う予定だ。


 「畑エリアは、今度整えようかな。果樹エリアは森の方だよね、やっぱり」


 魔素の量を考えれば、果樹畑は森の端に作った方が良いだろう。森から街までの間を畑にするつもりだ。


 「まあ、最終的に森の中まで城壁を延ばしちゃえば問題ないない♪」


 温泉と酒造りの街。それがシンジの目指す街づくりだ。


 シンジの理想が叶えば、楽しい街になるだろう。


 「ただ、そのためには酒造りの人員や、兵士も農民も必要なんだよねえ」


 こればかりは、地道に集めるしかないだろう。


 「ま、いい時間だし、そろそろリルを迎えに行って帰るか」


 シンジは魔の森のポイントへ跳び、最初の木テントの場所へ戻った。そして、リルが入った穴を覗き込む。そこでは、リルが丸まったまま寝ていた。


 「お、リルさんや。……まだ寝てるね」


 起こすのも忍びないが、そろそろ帰らなければならない。シンジは穴に手を伸ばし、リルの身体を持ち上げる。そこでやっとリルが目覚める。が、見るからに寝起きのぼーっとした状態だ。野生のかけらもない。


 「リルさん、野生残ってないね。……って、何か大きくなってない?」 


 シンジが抱えると、確実にリルは大きく重くなっていた。


 「ん? 当社比1.5倍くらい? 寝る子は育つ?」


 半日寝ただけでサイズが1.5倍になる生き物はイヤすぎる。そんなの知らんとばかりに、リルは大あくびをして、シンジの腕の中でまた眠った。


 「うーん、不思議不思議。……だけどまあ、フェンリルだし? 不思議生物だし?」 


 とりあえず、深く考えないことにした。それでいいのか。


 「うん、このサイズになったら、街中で飼うのに首輪が必要だよね。セバス=チャンに用意してもらおうか」


 シンジは、大きくなったリルを抱えながら、魔術で領都(チェスタニア)まで一気に戻った。




 ◇




 「セバス=チャーン! 悪いけど、首輪買って来てくれない?」


 屋敷に着いたシンジは、早速セバスにリルの首輪をお願いした。


 「……首輪はともかく、朝よりも随分リルの体が大きくなっているように思いますが?」


 セバスも違和感を覚えているようだ。まあ、仕方あるまい。だいたい2倍サイズになっているのだから。


 「うーん、魔の森に行ってきたんだけど、そこで寝始めたら大きくなった?」


 「……何ですかそれは?」


 さすがにセバスも驚くより呆れる方が強いようだ。


 「さあ? まあ、魔素吸って大きくなったんだろうねえ。成長期なんじゃないかな? かな?」


 「……そんな事ってあり得るんでしょうか?」


 普通、イヌはそんな事で急成長することはない。当たり前である。


 「まあ、フェンリルだからねえ」


 「なるほど、フェンリルなら……は?」


 セバスの動きが止まった。


 「良いノリツッコミでした。花まるあげる。……ん? どったの?」


 シンジが不思議そうに首を傾げる。


 「フェン……リル?」


 「あ、言ってなかったっけ? リルはフェンリルだよ?」


 セバスの動きが完全に止まった。


 「あ、セバス=チャン止まった? 処理落ち? 砂時計か虹がぐーぐる?」


 意味が違う。

 

 しばらくシンジが待っていると、セバスが絶望的なまでに深い、深ぁーいため息をついた。


 どうやらセバスはため息ひとつで気を取り直したらしい。そうだろう、こんな主人(シンジ)に付き合っていくなら、その位乗り越えなければならない。ヒドイ話である。


 「首輪、するんですか?」


 「あ、うん、このサイズになったら、さすがに首輪は必要かなって」


 「……かしこまりました。色や形などご希望はありますか?」


 「そだね。モフモフだから良く見えるようにしっかりしたヤツで、目立つから赤系?」


 決して女の子だからというアンコンシャスバイアスではない。たぶんきっと。


 セバスが一礼して出ていくが、リルは寝たまま気付かない。大物である。


 しばらくして、セバスが右手に赤い首輪を持って戻ってきたときも、リルは眠ったままだった。


 「シンジ様、さすがにリルは寝過ぎでは? 病気とかではないのですか?」


 「ううん? 鑑定したけど、普通に寝ているだけだね」


 結局、買ってきてもらった首輪は、寝たまま装着した。目覚めると首輪付きの待遇に落とされるリル、という話だ。


 「うん、相手が人間だったらヒドイ話だよね」


 それ以前に、フェンリルに鎖ならぬ首輪を着けるのは良いのかという意見もある。


 「シンジ様、リルはシンジ様のベッドに寝ているのですが、今日は客間を使われますか?」


 「ん? リルと一緒に寝るよ? モフモフ天国だよ? それをすてるなんてとんでもない!」


 「……フェンリルと一緒に寝るとか。まあシンジ様ですからね。良いです。ごゆっくりどうぞ」


 セバスは処置なしだと額に手を当てて首を振りつつ、部屋を出て行った。……大丈夫。見た目だけなら愛犬家の鏡だ。


 「あ、風呂入ってないや。ま、今日は清浄(クリーン)でいいや」


 シンジは魔術で体を奇麗にし、素早くパジャマに着替える。これもシンジが大魔蚕の糸から作り出した、マギシルクのパジャマである。もちろん作った布地の半分は幼女に上納(ごうだつ)されているのだが。


 シンジは、ひとつあくびをすると、ごそごそとベッドに潜り込み、眠り続けるリルを抱え込んでぐっすり寝た。 シンジは、湯を詳しく鑑定しながら、地球のものとは違う成分にも気付いた。


 「ほむ、温泉には、結構魔素が溶け込んでいるんだねえ」


 そう、この温泉には、肌にいい成分だけではなく、魔素も豊富に含まれていた。そこで、円筒のお湯を氷魔術で少しだけ冷やし適温にすると、ちょっとだけ腕を入れてみた。


 「ん? んんー? 腕が、暖かい」


 それはそうだろう。


 「何か、ぬるっとした感じ? ぬるくちゅ気持ちイイ?」


 なんとなく卑猥である。


 シンジは、湯から腕を出す。そのままアイテムボックスからタオルを取り出すと、軽くお湯を拭きとった。すると、腕がつるつるのウルウルになっているのに気づいた。


 「おー、何かお肌つるつる」


 どうも、肌にいい成分が、魔素の影響を受けてより効果を発揮しているように見える。これなら、『美人の湯』として売り出すことは可能だろう。


 「問題は、魔の森の近くという事で、湯治に来る客がどれだけいるかって事だけど」


 それについては、目に見える形で防御力を示すのが良いだろう。


 「魔の森が遠くに見える位置にあるんだから、領地と魔の森を城壁で囲って、結界作ればいい感じ?」


 確かにそれなら多少は安心感が上がるだろう。


 「それに、街自体も城壁で囲えば安心かな? かな?」


 結界は目に見えないから、安全は目に見える城壁の形で示せば良い。道理である。


 「露天風呂で借景が出来ないのが残念かな? あ、でも高級温泉旅館は高い建物にすればいいか。そしたら森の城壁も見えるし」


 だんだんシンジの中で構想が固まってきたようである。


 「ほむ。そうしたら、もうちょい地形を精査して、余った時間でこのあたり一帯を整地しちゃうか」


 整地さえしてしまえば、何時からでも建築作業が始められるのだが。


 「ただ、整地が終わったら、下水道の計画を立てないとねえ」


 この辺は地下水が豊富なので、下手に下水道を通すと地下水が汚染される。その辺は、専門家を連れてきた方が良いだろう。


 シンジは、いったん温泉を溢れないように埋め戻し、岩盤も復元してお湯漏れを防ぐ。


 「じゃあ、整地を始めよっか。そんなに時間は掛からないだろうし。……でも、ひとりになると独り言が増えるなあ。やっぱり後遺症?」


 間違いなくちゅうとりある(100年ボッチ)の後遺症だろう。泣ける。




 ◇




 「さて、こんなもんかな? かな?」


 シンジの眼下には、なだらかな丘が続く大地が、まっ平な台地に整えられて広がっていた。


 余剰の土は、石状に固められて端の方にうず高く積み上げられている。これは、後日壁や道を造る時に使う予定だ。


 「畑エリアは、今度整えようかな。果樹エリアは森の方だよね、やっぱり」


 魔素の量を考えれば、果樹畑は森の端に作った方が良いだろう。森から街までの間を畑にするつもりだ。


 「まあ、最終的に森の中まで城壁を延ばしちゃえば問題ないない♪」


 温泉と酒造りの街。それがシンジの目指す街づくりだ。


 シンジの理想が叶えば、楽しい街になるだろう。


 「ただ、そのためには酒造りの人員や、兵士も農民も必要なんだよねえ」


 こればかりは、地道に集めるしかないだろう。


 「ま、いい時間だし、そろそろリルを迎えに行って帰るか」


 シンジは魔の森のポイントへ跳び、最初の木テントの場所へ戻った。そして、リルが入った穴を覗き込む。そこでは、リルが丸まったまま寝ていた。


 「お、リルさんや。……まだ寝てるね」


 起こすのも忍びないが、そろそろ帰らなければならない。シンジは穴に手を伸ばし、リルの身体を持ち上げる。そこでやっとリルが目覚める。が、見るからに寝起きのぼーっとした状態だ。野生のかけらもない。


 「リルさん、野生残ってないね。……って、何か大きくなってない?」 


 シンジが抱えると、確実にリルは大きく重くなっていた。


 「ん? 当社比1.5倍くらい? 寝る子は育つ?」


 半日寝ただけでサイズが1.5倍になる生き物はイヤすぎる。そんなの知らんとばかりに、リルは大あくびをして、シンジの腕の中でまた眠った。


 「うーん、不思議不思議。……だけどまあ、フェンリルだし? 不思議生物だし?」 


 とりあえず、深く考えないことにした。それでいいのか。


 「うん、このサイズになったら、街中で飼うのに首輪が必要だよね。セバス=チャンに用意してもらおうか」


 シンジは、大きくなったリルを抱えながら、魔術で領都(チェスタニア)まで一気に戻った。




 ◇




 「セバス=チャーン! 悪いけど、首輪買って来てくれない?」


 屋敷に着いたシンジは、早速セバスにリルの首輪をお願いした。


 「……首輪はともかく、朝よりも随分リルの体が大きくなっているように思いますが?」


 セバスも違和感を覚えているようだ。まあ、仕方あるまい。だいたい2倍サイズになっているのだから。


 「うーん、魔の森に行ってきたんだけど、そこで寝始めたら大きくなった?」


 「……何ですかそれは?」


 さすがにセバスも驚くより呆れる方が強いようだ。


 「さあ? まあ、魔素吸って大きくなったんだろうねえ。成長期なんじゃないかな? かな?」


 「……そんな事ってあり得るんでしょうか?」


 普通、イヌはそんな事で急成長することはない。当たり前である。


 「まあ、フェンリルだからねえ」


 「なるほど、フェンリルなら……は?」


 セバスの動きが止まった。


 「良いノリツッコミでした。花まるあげる。……ん? どったの?」


 シンジが不思議そうに首を傾げる。


 「フェン……リル?」


 「あ、言ってなかったっけ? リルはフェンリルだよ?」


 セバスの動きが完全に止まった。


 「あ、セバス=チャン止まった? 処理落ち? 砂時計か虹がぐーぐる?」


 意味が違う。

 

 しばらくシンジが待っていると、セバスが絶望的なまでに深い、深ぁーいため息をついた。


 どうやらセバスはため息ひとつで気を取り直したらしい。そうだろう、こんな主人(シンジ)に付き合っていくなら、その位乗り越えなければならない。ヒドイ話である。


 「首輪、するんですか?」


 「あ、うん、このサイズになったら、さすがに首輪は必要かなって」


 「……かしこまりました。色や形などご希望はありますか?」


 「そだね。モフモフだから良く見えるようにしっかりしたヤツで、目立つから赤系?」


 決して女の子だからというアンコンシャスバイアスではない。たぶんきっと。


 セバスが一礼して出ていくが、リルは寝たまま気付かない。大物である。


 しばらくして、セバスが右手に赤い首輪を持って戻ってきたときも、リルは眠ったままだった。


 「シンジ様、さすがにリルは寝過ぎでは? 病気とかではないのですか?」


 「ううん? 鑑定したけど、普通に寝ているだけだね」


 結局、買ってきてもらった首輪は、寝たまま装着した。目覚めると首輪付きの待遇に落とされるリル、という話だ。


 「うん、相手が人間だったらヒドイ話だよね」


 それ以前に、フェンリルに鎖ならぬ首輪を着けるのは良いのかという意見もある。


 「シンジ様、リルはシンジ様のベッドに寝ているのですが、今日は客間を使われますか?」


 「ん? リルと一緒に寝るよ? モフモフ天国だよ? それをすてるなんてとんでもない!」


 「……フェンリルと一緒に寝るとか。まあシンジ様ですからね。良いです。ごゆっくりどうぞ」


 セバスは処置なしだと額に手を当てて首を振りつつ、部屋を出て行った。……大丈夫。見た目だけなら愛犬家の鏡だ。


 「あ、風呂入ってないや。ま、今日は清浄(クリーン)でいいや」


 シンジは魔術で体を奇麗にし、素早くパジャマに着替える。これもシンジが大魔蚕の糸から作り出した、マギシルクのパジャマである。もちろん作った布地の半分は幼女に上納(ごうだつ)されているのだが。


 シンジは、ひとつあくびをすると、ごそごそとベッドに潜り込み、眠り続けるリルを抱え込んでぐっすり寝た。

俺もモフモフ抱いて寝たい! という方、★とブックマークをお願いいたします。(チガ)

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