131.テンプレ的に、石鹸で世間を席巻する俺。
ちょっとだけ早くなりました。(ヲイ)
済まんこってす……orz
「ふうむ、これは素晴らしい酒ですな……」
同席していたフレディにもオール・ドッパーンを振舞うと、感心した声を出した。
「さすがは使徒様、これなら国王への献上品にしても問題ありませんな」
フレディも手放しで褒めている。まあ、フレディが敬愛する創造神が名付け親の銘酒だ。そう思うのは信徒として正しい姿なのだろう。シンジは決して口にしないが。
「でも、正直それだけだと足りないよね」
酒で有名になる領地。それはそれで魅力的だが、どうせならいろいろ詰め込んで、唯一無二な領地にしたい。
「そう言えば使徒様、石鹸の材料も集まりましたぞ」
フレディが、思い出したようにシンジに言った。
「あ、そっか、それもあったね。 ……ん?」
その時、シンジの脳裏に閃きが生まれた。
浮かんだ映像は、巨大な浴槽に浸かり、マッサージまで満喫した後で、ガウンを着てウイスキーを傾ける己の姿。
「あ、そっか、そうだそうだ。これこそテンプレだ。大事なこと忘れてたッ!」
いきなりポンと手を打つシンジ。
「どうされたのですか?」
「うん! 温泉とマッサージと美容とお酒だよッ!! このセットが、チョー利益が出るんだよッ!!」
セバスの問いかけに、シンジは興奮しながら熱く語る。
「まずはきちんと石鹸が造れるようにしないといけないよね! フレディさん、準備できる?」
「お任せください」
◇
机の前に立つシンジは、ひととおり石鹸を作ると、取り囲むように見つめる神官や修道女をくるりと見渡した。
全員が真剣な顔で、一心不乱にメモを取っている。
「これが石鹸の作り方ねー。今回は、時間短縮のため魔術使ったけど、手作業だと時間かかるからね。魔術使える人は使った方が良いよー。海藻の灰とか混ぜたときに、熱に気を付けてねー。質問ある人―」
一斉に手が上がる。
「うわすげーな。はい、そこのシスターさん」
「これは、そんな油でも出来るのでしょうか?」
「うん、いい質問。基本的には出来るよ。ただ、油の種類によっては、汚れや泡立ちが変わってくるかな。あと、使った油とかだとニオイがちょっと問題かな」
「一番いいのは牛の脂ですか?」
「うん、動物脂だとね。でも、高級なのには植物の油を使うと良いよ」
皆の質問に、徹底して答えるシンジ。
「じゃあみんな、やってみようかー」
全員が一斉に取り掛かる。その様子を、感心した様子で見守るフレディ。
「ほお……皆、手順通りに進められているようですな」
「うん、鷹山さんと五十六さんは正しかったって事だよね」
「ようざ……? いそ……? 誰ですかな?」
「まあ気にしないで。それより、石鹸の量産はお願いしちゃっていいのかな?」
「もちろんお任せください。それと、近い将来最高級のモノを売ってくださいとかおっしゃってましたな」
シンジは、温泉を掘ったら使う気満々である。
「うん、設備が出来てからでいいからね」
「使徒、いやシンジ様なら、無償で差し上げますぞ?」
「それはだめ。結構数を消費するからね。何より経済は廻さないと」
シンジ、変なところで真面目である。
「しかし、ご存じの通りシンジ様のお名前で発明者専売条例が登録されていますので、その分のお金が発生しますぞ」
「あ、そう言えばそうだったね。忘れてた」
シンジはそのフレディの言葉に、ポンと両手を打った。
「じゃあさ、その分の中から、必要な石鹸を現物支給で良いよ。それなら問題ないよね?」
「承知いたしました」
フレディが深々と頭を下げた。
「しかし、これで幻の石鹸が量産できるのですな……。この手でそれが出来るというのは、感無量ですな」
顔を上げたフレディが、感慨深げに言う。確かに、一度は忘れ去られた技術だ。ただし、世間ではソープベリーが主流なのだ。広く受け入れられるのには、価格と時間が必要だろう。
「まあ、まずは高級品から始めて、上層に受け入れられるようにした方が良いよね。一般に売れるようにするには、量産出来るようになってから出ないと、追いつかないだろうし」
少なくとも、ここで学んだ者たちが、他の神殿へ指導に行けるようになってからでないと、飢餓状態になる可能性があるだろう。
「ただ、欲深い貴族とかが居て、その神官たちを拉致する可能性があるよね? そこんとこどーなの?」
「ご心配には及びません。……神殿組織は、そんなに甘くないですぞ。神殿の権威を犯す者は……」
そう言って、ニヤリと嗤うフレディ。そのままゆっくりと腕を肩まで上げると、親指を立てて首を横一文字に引く。
そう。マフィアのボスが、無言の指令を出すように。
「何より、使徒様の足を引っ張ろうと言うのですから、天罰覿面かと」
《そうじゃぞー。儂自ら『成敗ッ!!』と言ってやろう!》
「お前はどこの将軍様だッ!!?」
シンジは、天の声に思いっきり突っ込んだ。
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