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130.テンプレ的に、開拓手段を模索する俺。

シンジ君、開拓に乗り出すの巻。

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イベント等で忙しく、1か月が過ぎてしまいました……。

次回はもうちょっと早く。

 「屋敷の運営はそれで良いとして、本当は作業場と領地の事も考えなきゃね」


 「作業場と領地、ですか?」


 セバスが首を傾げた。


 「作業場はね、錬金調合と鍛冶が出来るスペースが欲しいんだよねえ」


 シンジは錬金も鍛冶も出来る。だから、自宅ともいえる場所にそういう設備が欲しいのだ。


 「ですがシンジ様、貴族街のお屋敷に、周辺への影響が出そうな設備は置けません」


 確かに、隣の屋敷から鍛冶の音がしたり、薬品臭がしたり、ましてや爆発などしたら、大問題では済まない。


 「んー、それじゃ面白くないよねえ。領地に作るしかないかなあ」


 「その方が無難かと」


 セバスがほっとした顔をする。まあ、辺境伯に迷惑をかける訳にはいかないだろう。 


 「でも領地は……今はなーんにも無いんだよねえ」


 シンジの領地は、魔の森とそれに接する草原地帯だ。当然村どころか、ひとりの領民もいない。実験場には良いのかもしれないが。


 「まあ、そろそろ手を付けようとは思っていたんだよねえ。ドラゴン倒したし? 冒険者編はいちおクリアって事で?」


 ドラゴン倒して一区切りは正しいだろう。テンプレ的に。


 「でもねえ」


 そこでシンジは深いため息をつく。


 「何か問題でも?」


 「うん、新しい領地で、麦だけ作るって訳にはいかないかなと。ラックブック村があるしね」


 龍脈の上にある事で特異性を持つラックブック村の麦に対抗するには、同じく龍脈の上に村を造ればいい。だが、それでは競合してしまい、ラックブック村の領主となったアイリスに迷惑が掛かってしまう。


 ならば、普通の場所に村を造れば良いのかというと、それでは領民が報われない。普通に麦を作っても、他の村と変わらないからだ。それでは辺境の一寒村に過ぎなくなってしまう。


 「ですがシンジ様、村の開拓は、大体そのようなものですよ?」


 普通、辺境の開拓というのは、何らかの理由で食い詰め、村を捨てざるを得なかった農民や、村に新たな畑を造ることが出来ない次男三男が、開拓団に応募して行われるものだ。


 「うーん、それはつまらないよね。テンプレじゃないし」


 そう、シンジが目指すのは、普通の村ではない。もっと楽しいチートテンプレ辺境生活である。


 創造神(ようじょ)も言っている。かくあれかしと。


 第一、普通に村を造っても、豊かな生活にはならないだろう。領民になってくれた人たちにそんな苦労をさせるつもりはない。


 それに、どうせならラックブック村との共存共栄を目指せるような手はないだろうか。


 「一応、やろうとしていることはあるんだよね」


 「とおっしゃいますと?」


 「うん、まずはお酒かな?」


 セバスが首を傾げた。


 「お言葉ですが、エールならそれほどの利益は出ないでしょうし、ワインも葡萄を育てるのに時間が掛かると思いますが?」


 シンジは、それを聞いてポン、と手を打った。


 「そっかそっか、セバス=チャンには飲ませてなかったね」


 そう言って、アイテムボックスからひとつ瓶を取り出した。


 「こ、これは?」


 その琥珀色の丸みを帯びた瓶には、深い網目模様が施され、黒いキャップが施されていた。


 「お酒だよ。名前は『オール・ドッパーン』」


 ……或るやんごとなき創造神(ようじょ)は言った。


 口に含むと、ふくよかなバニラのような香りや複雑な味わいなど、色々なものが波のように押し寄せるようだと。


 そして名付けられたのが、オール・ドッパーン。


 それを聞いて、激しく突っ込みつつ瓶のデザインを変えたシンジもたち(・・)が悪い。


 これも、祝福を受けた酒、という事になるらしい。たぶんきっと。


 ……もちろん種別はウイスキーである。


 どこかで聞いたことがあるとか言ってはいけない。トーマス君とも関係はない。いいね?


 「美味しいよ?」


 シンジは言いながら、グラスを取り出し、魔術で丸い氷を出すと、静かにグラスへ落とし込む。


 そして、瓶の封を開けて注いだ。


 コッコッコ、という音を立てて、瓶を映したような琥珀色の液体がグラスに注がれる。


 瓶とグラスから漏れ出してくる、甘いようで少しだけスモーキーな香りに、セバスは目を見開いた。


 「さ、軽く飲んでみて。強いお酒だから、含むようにね」


 セバスはシンジに言われるままにグラスを手に取り、口元に傾ける。芳醇な液体を口に含んだセバスの目が、驚きに見開かれた。


 「こ、これはッ! 一度だけ飲んだことのある、ドワーフの火酒のような強さなのに、刺すような鋭さもなく、何とも……旨い」


 「うん、これをね、造りたいんだけど。協力してくれる?」


 シンジがニッコリと笑った。

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