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126.テンプレ的に、全力治療する俺。



シンジ君、お医者さんになるの巻。

シリアスです。決してごっこではない。(コラ)


微グロ注意。


 シンジは、手にしたハサミをアメリアに渡す。


 「アメリアさん、まず腕の包帯を取り除いてください」


 ハサミで癒着した包帯を切り外す。腕は、肘上から切り落とされており、二の腕にはケロイドが残っていた。


 「ずさんだな……アメリアさん、ここ治療できる状態だった?」


 「いえ、肘の状態は、時間が経ちすぎていて、私にはどうすることも出来ず。辛うじて火傷の皮膚を少しずつ治療するしか」


 アメリアが力なく首を振る。


 「……ちょっとおかしいよね。掛かった医者は水魔術士だったはずなのに、応急処置の水掛けすらやっていない感じだもの」


 普通なら火傷の応急処置は、とにかく熱を下げるため水を掛けることだ。薬品火傷でない限り、そうしなければ熱が真皮より下の組織を壊死させてしまう。所謂Ⅲ度火傷だ。たぶん手足はそのために斬り落とされた。


 だが、そこから上の部分は、どう見ても処置が遅れたためのケロイドに見える。


 (まあ、今は良い。それどころじゃないし)


 とにかく、処置が大事だ。


 シンジは、手のひらで腕を包み込むように持ち、目をつぶる。DNAを意識し、遺伝子情報をイメージしながら、聖魔術を掛けていく。


 そのイメージに答え、細胞は分化を始め、腕が修復されていく。


 そうやって、ふたりの手足を再生していく。


 「これは……」


 アメリアから、つぶやきが漏れた。


 「人間の体は、細胞という多くの生きた粒が集まって、色々な働きをする形で成り立ちます。その粒がどのような形と働きをするか、それを決めるのが、遺伝子と呼ばれる設計図が、細胞ひとつずつに書かれているんですよ」


 チュートリアルで学んだシンジは、もっと詳細に説明が出来る。が、この世界の住人に、地球の医学専門用語を並べても仕方がない。理解しやすい言葉にするだけだ。


 「だから、その設計図を意識して魔術を掛けると、欠損部分の修復が早くきれいに出来るようになります。覚えておいてくださいね」


 フワッとした知識でも、魔術を介せば治療が効率化できる。少なくとも、この世界の人間もDNAは持っている。この発想で治療できている訳だから。


 実際、イメージを持ってもらえるだけで、後は魔力のゴリ押しでも、ある程度は何とかなるはずだ。


 ただ、iPS細胞とかの知識になると、原理が複雑すぎて説明できない。


 瞬く間にふたりの手足は完全に再生した。後は全身の火傷跡の除去だ。


 「アメリアさん、全身の包帯、少しずつ取ってくれる?」


 全身の包帯を、アメリアに外していってもらう。アメリアは、癒着してしまっているところも、水魔術と聖魔術を使って、きれいに剥がしていく。


 「やっぱり、治療の跡がおかしいね」


 治っているところと治っていないところがまだらになっていた。これは、間違いなく火傷の深度に関係しているだろう。


 「深達性Ⅱ度やⅢ度になったところが、跡になって残っているのかな」


 シンジは、皮下脂肪や真皮から完全に治した方が良いと判断した。


 身体中の火傷跡を見ながら、皮下脂肪をイメージしながら再生魔術を掛けていく。布を染め上げるように元の姿を取り戻していく皮膚。


 「元に戻っていく……」


 再びアメリアの目が見開かれ、つぶやきが漏れる。


 「アメリアさんもリルもやってみてください」


 面積が広くて、シンジひとりだけでは時間が掛かる。魔術を掛けるときのイメージを出来るだけ説明して、アメリアにも手伝ってもらう。


 何度か失敗しながらも、アメリアは皮膚再生が出来るようになった。


 シンジたちは、油断なく、ひとかけらの跡も残さないように、全身くまなく治療した。




 ◇




 「終わった……」


 気がつくと、空は夕暮れになっていた。


 「4時間くらいぶっ続けでやってたってことかな? さすがに疲れたねえ。アメリアさんは大丈夫?」


 「な、何とか大丈夫です……」


 アメリアも疲労困憊のためか、足が小刻みに震えているように見える。魔力不足もあるのだろう。


 横たわるふたりの包帯はすべて外され、首からは布を掛けているので全身は見えないが、元通りのはずだ。


 手足や皮膚の再生より、目の再生が一番大変だった。さすがにここだけは、シンジでないと難しかっただろう。目の構造を理解し、視神経を再生したり、水晶体を再構築するなどといった技術は、多少なりとも知識を持っていないとイメージが難しいのだ。


 髪もすべて焼け落ちてしまっていたので、頭皮は治ったけど再生するまで時間が掛かるだろう。カツラとか帽子とかで、しばらく隠すしかない。


 途中、水魔術が使いやすくなったと感じた。鑑定したら、案の定段位が上がっていた。


 「アメリアさん、お疲れ様でした」


 そうアメリアに声を掛けると、アメリアさんが静かに涙を流し、シンジに跪いた。


 「使徒様、本当の奇跡を見せていただきました。何と申し上げてよいやら」


 「いや、アメリアさん。今度からは、アメリアさんがやるんですからね」


 シンジは、アメリアに鑑定を掛けてみる。アメリアの水魔術と聖魔術は四段にまで達していた。フレディと同水準である。


 恐らく、ここから先は人体の解剖学を一定レベルで学ばないと難しいだろう。なお、シンジは八段(人外)である。


 「はい、今回のことで、治療に自信が付きました。頑張っていきます」


 「お願いしますね。幼……神も見守ってくれるでしょう」


 シンジは、危なく幼女と言いそうになった。


 あの幼女なら、絶対見ているだろう。


 (きさまッ! 見ているなッ!?)


 ふと、シンジは念を飛ばしてみた。


 <見ておるぞー>


 声が返ってきた。


 「ちょッ、幼女!?」


 「ああっ! アタシにも、神の、声がッ!!」


 アメリアが、感動の声を上げた。


 「え!? アメリアさんにも同時通話ッ!!?」


 アメリアも、ナニカに目覚めてしまったらしい。


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