表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/135

125.テンプレ的に、奴隷商館で本気になる俺。

シンジ君、お医者さんになるの巻。

シリアスです。決してごっこではない。(コラ)


微グロ注意。

 そこには、ベッドに寝かされて、全身包帯を巻かれた人体らしきものが2体。


 「これは……」


 2体には片腕がなく、両膝から下の足もなかった。両者とも片眼は表に出ていたが、ひとりはガラス玉のように何も映してはいないように見え、もうひとりは固く閉じられたまま、涙の後だけがあった。


 その姿は、生きているようにさえ見えなかった。


 「声を掛けても、もう、何も反応しないのです」


 ロバートが悔しそうに言った。


 「確かに法的には借金奴隷として、隷属の魔術を掛けています。が、もし掛けなければ、食事も何もせず、そのまま死んでしまいそうなのです」


 辛うじて、隷属魔術によって食事を取らせ、生かしているという事なのだろう。


 「使徒様、なにとぞ、二人をお救いください……」


 力なく膝をついて祈るロバート。


 セバスの目がショックを受けたようにシンジを見つめた。フレディもシンジを見つめる。


 「やります」


 (……なあ幼女よ。これで出来なきゃ、チートでテンプレじゃねーよな?)


 シンジは、心の中でつぶやきながら腕をめくった。


 「フレディさん、シスターの中で、聖魔術が使えて最も度胸がある人を助手にしたいです。ロバートさん、清潔な布をいっぱいください。セバス、お前も手伝え」


 シンジがフレディとロバート、そしてセバスに指示を飛ばす。


 「は、すぐに連れてまいりますッ! ロバート! 布だッ! 早くしろッ!!」


 「はッ!!」


 3人が動き出した。


 それまでに準備と実験をしておく必要がある。シンジとしても、これから行うことは未経験だ。チュートリアルでも。


 まずシンジは、過去の知識をもとに、部屋全体に洗浄魔術(クリーン)と、念入りに殺菌魔術(ステリライズ)を掛ける。手術室に殺菌処理は絶対だ。


 さらに、空間を操れる空魔術を使い、空気の断層を作って、ふたりが横たわるベッドを包みこむように展開する。


 「うん、これを組み合わせれば、手術室なみの滅菌処理は出来そうだね」


 シンジは、空気のバリアを見ながらひとり肯いた。


 そしてちょうどいい高さの台を寄せると、アイテムボックスから取り出して滅菌した盆を出し、その上にハサミやピンセットを取り出し、洗浄と滅菌を行う。


 こちらは、チュートリアルの時に作ったものだ。


 幼女による鍛冶の課題ではあったが、こうしてみるとあの幼女は、この事態を予測していたのだろうか?


 ……いや、きっと『こんなこともあろうかと』とか言いたかったんだろう。


 そこで、扉が開かれた。見ると、ロバートとセバス、そして職員らしき女2人が、両手いっぱいに布を抱えて入ってきた。


 「かき集めてきましたッ!」


 「うん、これだけあれば足りると思おうよ、ありがとう。この布、使い切っても?」


 「もちろんです。では、私どもは外へ出ています」


 そう言って、すぐに外へ出て行った。


 数分ほどでまた扉が開くと、今度はフレディが入ってきた。


 「使徒様、連れてまいりました」


 「初お目見えします。アメリアと申します」


 フレディが連れてきたのは、初老のシスターだった。


 「アメリア準祭司は、私がいない間に聖魔術で彼女たちを看たシスターで、戦場も経験しています」


 準祭司は、小神殿を統括できる資格を持つ祭司の補助を行う位階だ。教会や孤児院の責任者にもなれる、それなりに高い地位である。


 単に聖魔術が達者なだけではなく、戦場帰りのシスターだからこそ、この負傷を見ても退かなかったのだろう。


 「アタシが治しきれなかったこの子たちを治せるなら、何でもお手伝いいたします」


 アメリアは、力強くシンジを見て、深々と頭を下げた。


 その際に、シンジはアメリアを鑑定する。……聖魔術も水魔術も三段だった。


 「ん、よろしい。フレディさん、後はまかせて」


 フレディも部屋を出て行った。


 「アメリアさん、今から見るものは、たぶん貴女の常識から外れたものです。説明しながら施術しますので、覚えてくださいね。たぶん、これからいろいろな治療に使えると思うので」


 シンジとしては、フレディひとりに頼る治療体制よりも、複数人の治療従事者を段上げ出来た方が良いと考えた。ゆえに、助手を頼むことにしたのだ。


 敬虔なシスター相手だからか、シンジの口調も丁寧である。


 「まずは、ふたりを深い眠りにつかせます」


 シンジは、水魔術と聖魔術でふたりに麻酔を掛ける。ふたりは身じろぎもしなくなる。


 「い、今のは?」


 「脳からの太い神経を一時的に遮断したんだ。これで、痛みも感じないよ」


 脊髄をマヒさせることにより、麻酔の効果を出す。これにより、無意識に痛みを感じても動くことはない。もちろん普通なら危険すぎて出来ないが、今は緊急だ。麻酔もない以上、こうするより他に手がない。


 「これは真似できないと思うので、後で麻酔薬の調合を教えますね」


 「次に、ふたりを空気の膜で包みます。これは空魔術の応用だから、自分で手術やるときは出来る人にやってもらって」


 鑑定の結果、アメリアは空魔術を持っていないので、これは仕方ない。


 「で、空気全体に洗浄と滅菌」


 言いながら再度部屋全体に洗浄魔術(クリーン)殺菌魔術(ステリライズ)を掛ける。


 「空気? それに滅菌というのは?」


 「あ、そこからか」


 シンジは思い至る。今の世界のレベルを考えれば、空気や菌の概念が乏しいのは当たり前だ。


 「空気は、俺たちが息を吸って吐いてますよね? それは、生きていくのに必要な風を取り込んでいるんですよ」


 シンジは単純化して教えることにした。このくらいの説明でないと、理解はされないだろう。


 「菌と言うのは、物を腐らせたりする、空気にも入っている、小さすぎて目に見えない悪魔みたいなものです。これを殺す魔術ですね」


 「そんなものがあるんですか……」


 「戦場で、血とかで不潔にしていると、傷とかが腐ったり、膿が出たりしましたよね? それの原因ですよ」


 「あれは、そういう理由だったんですね……」


 アメリアさんの顔が暗くなった。戦場で、色々見たのだろうとシンジは推測した。


 「安全な手術には、無菌状態が絶対に必要です。この処置が終わったら、この魔術は教えます。今はそういうものと思ってください」


 「わかりました」


 さらに、持ってきてもらった布に洗浄、それから滅菌。これをマスクにしたり、手術服替わりに簡単な加工をする。といっても、1枚布を貫頭衣にしただけだ。


 そして、アイテムボックスから薄い手袋を取り出す。これは、スライムの皮から作ったものだ。これにも洗浄と滅菌を行い、2人とも着用する。


 「では始めます」


 シンジは、ハサミを手にした。

シンジ、大丈夫なのか!? と思う方は、★とブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ