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121.テンプレ的に、家臣を探す俺。

シンジ君、家臣探しを迫られるの巻。そりゃ、貴族になったらねえ。


ついにこの改訂版を書き出して1年が過ぎてしまった。

ペースが悪い。(土下座)

 「今度は3日か……」


 再び、オリバーが頭を抱えている。


 「早すぎますね……」


 隣で、アルフレッドも頭を抱えている。


 「今度は、魔術団員がやたらと暑苦しくなったんですよ」


 その隣では、アンリが頭を抱えている。


 そして、そのまた隣では、アイリスとアーサーが腹を抱えて笑っている。


 ひと言で言って、カオスである。


 「父上、アイリスッ! 笑い事ではないぞッ!?」


 「ははは、アルフィー。だからお前は固いと言われるのだ。これを笑えるようになったら一人前だ」


 アーサーが笑いながらアルフレッドをなだめる。が、前回はオリバーと一緒に頭を抱えていたのはアーサーである。


 だが、そんなことはこの場ではおくびにも出さない。中々の狸である。


 「閣下。クロス卿の事で悩んでもどーにもなりません。ここは右から左へ受け流すのが吉というモノ。速く完成して良かったね、というべきです」


 要するに開き直ったのであった。


 「ああ、そうだな。そうでないとやってられんな」


 「何か、さっきから酷い言われ様だねえ」


 シンジが唇を尖らせて不満げに言う。


 「いや、感謝してるぞ、ホントに。ただ、私の常識が邪魔しているだけだ」


 オリバーがガバリと起き上がって、右手をフルフルと振る。シンジに機嫌を損ねられるのは避けたいようだ。


 「感謝の気持ちという訳ではないが、屋敷をひとつ進呈しよう」


 「ほへ? 屋敷ですか?」


 「うむ、さすがに男爵家とするには規模が小さいが、新しい貴族街が出来るまでの繋ぎにはなるだろう」


 どうやら、色々な褒章のひとつとして、屋敷がもらえるらしい。


 「いや、それはありがたいんですが、住むの俺とリルしかいないんですけど?」


 シンジとしては嬉しいのだが、屋敷だけもらっても生活環境が整わないのでは困る。


 「しばらくは、こちらから派遣しよう。だが、男爵家となったからには、自分の家臣を持つことも必要だぞ?」


 「でも、根無し草の俺に、家臣用意できるわけないですよね?」


 「それなんだよなあ……」


 オリバーが額に手をやる。


 正直に言えば、チェスター家に所属する家臣をシンジに付けるのは簡単だ。だが、家臣からすれば直属の家臣から家臣の家臣に繰り下がることになる。表面上は出さないだろうが、いい気分はしないだろう。


 もちろん、家臣の次男三男あたりを付けることは可能だ。全員をチェスター家で雇えるわけではないので、嫡子でもない限りは野に下って自分で生活を立てるのだから。


 しかし、である。


 同時にアンリとアイリスも男・女爵家を立てるのだ。当然顔見知りであるそちらを希望するものが多いだろう。


 それに、なんと言ってもシンジは秘密が多い。いや、秘密しかない(・・・・)


 家臣であるからには、家の、特に当主の秘密は守るものだ。が、今まで付き合いのない当主に対し、どこまで秘密を守れるものだろうか?


 当然自分の親兄弟から探りが来るだろう。貴族は情報が命なのだから。


 そこを考えると、下手な家の次男三男を付けるのは躊躇(ためら)われる。


 「シンジさん、本当に知り合いか誰かいなんですか? この前、護衛依頼で一緒に移動していた商人とか」


 「商人? ……あ、チャンさんか。冒険者なら『暁の鐘』だったら信用できるかな?」


 「なら、知り合いを御用商人にとか、お抱え騎士に冒険者をと言うのは、結構定番ですよ」


 アンリに言われ、ハタと気付くシンジ。


 「そっか、俺だけじゃなくて、冒険者成り上がり(テンプレ)は周りも巻き込んだらいいのか。うん、いいこと聞いた♪」


 「……もしかして、まずいことを言ったかな?」


 アンリの頬に冷や汗が垂れる。アンリ、見事なファインプレー(ファンブル)であった。


 「んじゃ、後でチャンさんとこに行って、冒険者ギルドで『暁の鐘』を探してみるねー」


 「ま、まあ、騎士としての振舞とかの修行は、ウチの騎士隊でお世話しますので、『暁の鐘』にはよろしくと」


 アンリは開き直ったのか、そんなことをのたまった。


 「ん、シンジ、チャンさんと言うのは、この街で手広く商売をやっているチャン殿か?」


 そこへオリバーが、何かに気付いたようにシンジに問いかけてきた。


 「んー、この街でお店持っていて、ラックブック村で麦を仕入れて王都に運んでいる商人だったら、その通りですです。それが何か?」


 「いや、実はそのチャン殿の腹違いの弟なのだがな、商売ではなく、このチェスター家の従僕をしていてな」


 「へー。そうなんですか」


 「そうだな、彼を付けるのはアリか。後ほど紹介しよう」


 ひとつ難題の解決が見えたからか、オリバーの顔に多少の安堵が浮かぶ。


 「その人の立ち位置はどうしたら良いですか?」


 「そうだな、シンジが気に入れば、クロス男爵家の執事(バトラー)にすれば良い」


 「なるほど、考えることにしますね。でも、チャンさんの一族なのに商人じゃないんですね」


 以前チャンと娘に聞いたところだと、兄である料理人も含め、一族全員商売人になっていると思っていたが、違ったらしい。


 「ああ、彼は出自が正当なチャン殿の一族と異なり、この国の娘と結婚して産まれたらしいからな。だから名前もこちら風だ。ファミリーネームはチャンだが」


 「ほむ、で、その人の名前は?」


 シンジがふと名前を聞いてなかったのに気づき、オリバーに尋ねた。


 「ああ、セバスと言う。血のせいか経理にも明るくてな、ウチでもそちらの仕事を中心にやってもらっている」


 「待って待ってちょっと待って!? ということは、フルネーム『セバス=チャン』ッ!!?」


 「ああ、そうだが?」


 「チャンさんの家って、一族でネタ人生やっているのッ!!?」


 「……シンジ、君が何を言っているか分からない」


 シンジ以外に分かるとしたら、幼女だけだろう。たぶん。

俺も家臣が欲しい! と言う方、よろしければ、★とブックマークをお願いいたします。

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